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Episode 458 寄せると治るは違うのです。

世界中で猛威を奮っている感染症の収まる気配がありません。
感染症対策をする一方で経済活動は止めるな…なんて無理難題を突き付けられる中で、「新しい生活様式」なんて言葉が時の言葉に躍り出て…ですね。
最近の私の生活の中で「社会的に大きく変化したな」…と感じるのは、「マスクの着用」と「リモート○○」の浸透でしょうか。

元々、私は「ひとりごと」のように自分の言葉を書いては、広大な「ネット太平洋」に投げ込む「メッセージボトル」みたいなブログ執筆活動をしていたワケで、ネットで繋がるということに違和感を感じていなかったのですが、それは私のボトルを誰かが拾ってくれる奇跡があって初めて成り立つものだった気がします。
それがここ数か月で一気に現代の通信規格が押し寄せてきてですね、LINEやzoomを使ったオンライン会なんて、それこそ黒船来航ものですよね…。

先日、私もそんなオンライン会をやってみたワケですよ。
zoomを使って2時間近くお話ししたでしょうかね…その中でこんな話が出たのです。

会話の内容を掻い摘んでお話すれば…ASDというマイノリティが定型というマジョリティが作り上げた「定型に都合よくできている社会」で生活するにあたり、ASDがトラブルなく生活するために定型に寄せる作業をするのは普通にあることです。
ただ、その「寄せる作業」は「理解して治る」ということとは違う…という内容です。
実は、この話のベースにはこんなツイートがあるのです。

残念ながら、世の中は定型に都合よくできているのです。
定型の方を右利きとした時、マイノリティである私たちASDは左利きの存在です。
でも…定型のあなたもASDの私も、右利きに合わせた社会しか見たことがないのです。
多くの左利きが、右利き用のハサミでも普通に使えるような話です。
でも、刃の咬み合わせが逆のハサミを使うには「それなりのコツ」がいるのですよ。
どんなに左利きを右に矯正させようとしても、「利き手そのもの」の矯正は出来ません。
右手を使ってハサミを扱うためのポイントを覚えることは出来る、右利き用を左手でもムリなく使えるようになる…でも、左利きは左利きなのですよ。

定型のやり方に(見かけ上)寄せる…という作業は、クローズドで仕事をしている発達障害者が「必ず」やっているライフハックのひとつで、一般的に「擬態」や「外モード」と表現されるものです。
ASDはこれをすることで定型社会で活動できるワケですが…残念ながら、これが「頑張ってやっているもの」なのか「定型の方のようにナチュラルに出来るもの」なのかの判断が、発達障害の当事者にも、それを見ている定型者にもできないのです。
なぜならば、それをすることが発達障害者の普通であり、そうなるのが定型者の普通だから。
このライフハックをすることに相当の負荷を掛けている…ということを認識する必要があるのです。

ツイートで私が「二次障害のトリガーに常に指が掛かっている」と言っている中身は上の過去note記事で説明したとおりです。

軽度の発達障害の最大の問題点は「明らかにオカシイ」がないことだ…と指摘しました。
日々の業務という「一日/一週間」レベルの仕事で問題になるような「明らかに違う」というトラブルは発生しないのです。地震が起きる仕組みを想像してくれたら分かりやすいのだと思います。
海側から押し寄せるプレートが大陸プレートの下に潜り込み、プレートの歪みを作る。
その歪みに耐えられなくなった時、プレートがズレて元の位置に戻ろうとする。
この時に発生する巨大な力が大地を大きく揺らす地震…というのが、誰もが知っている地震発生のメカニズムです。
発達障害と雇用の関係は、当にこの地震が起きるメカニズムそのもの。
定型群という使用者(会社)側の大陸の下に潜り込んだ発達障害プレートが、その摩擦に耐えられなくなるワケですよ。

翻ってASD×定型のカップルで…の場合についても、同じことが起こるワケです。

自認したASDは、自分の特性を自己理解するに従い、定型のパートナーが苦しんできた中身を理解しようと試みます。
ただ…それは「上手くやろうとするペルソナを作る作業」と紙一重であって、外モードを家庭内に持ち込むことになりかねない…。
以前指摘した通り、外モードとは効果が限定されるマジックで、一定の期間が過ぎると解けてしまうのですよ…そうですね、持って半日ってところ
会社でも家庭でも…は絶対に無理なのです。

重要なのは、ASDである私が「私はASDである」と認め、パートナーであるあなたが「あなたはASDである」と認めること。
その上で、無理をしないを大原則にして妥協点を探ること。

糸の両端を私とあなたが持ってピンと張り、切れないように引っ張り込まないように、ジリジリとお互いの指先が触れるところまで手繰っていく…。
お互いにその作業を地道にすることで相手との距離を縮めていくようなイメージでしょうかね。
その作業自体は定型同士のカップルであっても、私たちのようなASD×定型のカップルであっても、同性のカップルであっても変わらないのだろうと思います。
違うのは最初に張った糸の長さが長いか短いか…。
それを感じるのも、それでもめげずに糸を手繰る努力をするのも、その張った糸の両端いるあなたと私なのでしょう。

リモートの雑談会も、なかなか良いものです。

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