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君に教えてもらったこと

もしもこの世界に
たった一人の足音しか聞こえないなら
私は大声で歌うだろう
耳を傾ける者は一人もいないけれど

もしもこの世界に
何十億の孤独が見えるなら
私は瞳を閉ざすだろう
こちらを見る目は一つもないけれど

肌寒い朝の窓辺で
コーヒーを飲んだあとの
白い吐息を眺めながら
昨日の夢をもう忘れている
私は歌っていたか
目を瞑っていたか

自分が一番
穏やかであれるはずの
あの懐かしい味を
思い出せず
いつしか固く握りこんでいた

いっそ捨ててしまおうか
ぼんやりかんがえていた頃に
君は突然現れ
頑なになっていた指先を
そっとほどいてくれた
あくまで優しく。

ここでは、
一人も大勢も息苦しい
薄すぎても濃すぎてもダメなのだ
そんな繊細な世界だからこそ
君のような優しさを
ほんのひと粒でも落としてやれば
きっと思い出せるだろう

穏やかであれる
自分だけの味と
一つの深呼吸と。

大事なお金は自分のために使ってあげてください。私はいりません。