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干し柿2022 | 暮らしの神事
庭の渋柿が採らずに熟れて落ちて無駄になってしまうのはもったいないから、採って干して、干し柿にする。
自然が育ててくれた物を無駄にしないで、人が生きるために活かしきろうとする干し柿づくりが、わたしは好きだ。
今から25年以上前のこと。
父方の祖母は、福島の元農家で稲作をやめた後も安達太良山を観(のぞむ)よく風の通る田畑に自家用の野菜を植えていた。
そこで育った芋や白菜と一緒にダンボールの隅の方に新聞紙に包まれていたのが、祖母の干し柿だった。
吊るしたロープのまま入れられ、まだ背の低い私は必死に背伸びしながら、その干し柿をロープごと取り出していた記憶が今もある。
その頃から干し柿は甘くて特別な冬のごほうびだった。
干し柿を学びに
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手仕事にはほとんどの工程に意味がある。
だから、ちゃんと干し柿を学びたいと思い、昨年の秋、23歳の頃からお世話になっている山形のおねえさんを訪ねた。
そのときは、柿を採るところからやらせてもらって、何百個だったか数えきれないほどの柿をむいた。
たった3日間のことだったのだけど、柿の熟す頃合い、お天気との競争で、「忙しいから、疲れたから、また明日」なんて言っていられない。今処理しておかないとという場面がいくつもあって、何かを成すエネルギーを柿や天気からもらっているかのようだった。
自分一人ではどうしようもないことも、柿を目の前にするとむくむくと力が湧いてくる。
人はひとりでは生きていけないと言うけれど、生きるために必要な「もうひとり」は人であったり、野菜であったり、柿であったりするんだな。そんなふうに思っている。
今年も西条柿(島根県)で
今年も島根県の西条柿をお世話になっているおねえさんから分けてもらった。
ちなみに島根県 石見地方では、干し柿を「つるし柿」とも呼ばれている。
また、柿はそのままで食べすぎると体を冷やすが、干すと平気らしい。
今や冷凍しておけば、一年はゆうにもつ保存食となる。
最近は、柿を採る時期と気温が下がる干し時のタイミングがズレてしまっている。東京ではなおさら。加えて、お天気も読めない。晩秋を迎えても急な雨があったりするから、干しあがるまでの2〜3週間は毎日空と相談をしながら、はらはらの日々が続く。
工程
干し柿は柿の皮をむいて、干して待つものと思われがちだが、干した後の「揉む」工程が干し上がりの善し悪しを左右する。
▫️1
手で触れない水っぽい期間は、見守る。
▫️2
手で触れるくらい乾いてきたら、触ってみる。柿の内部の水分量を頭に思い描きながら、水分が均等になるように毎日揉む。
▫️3
柿が具合が悪く顔色が悪くなった!のような人の顔色のようになったら、揉みのピークである。もうすぐで干しあがるよの合図なので、丁寧に揉みならす。
この後から粉が吹き始めるものもある。
▫️4
おいしそう、このくらいで食べたいの姿になったら、その柿から引き上げる。
形を整えてジップロックに入れ冷蔵庫へ。さらに粉をふかす。
▫️5
もういいよ。となったら空気に触れないようにラップで包みジップロックに入れて冷凍庫へ。
食べたい日の朝に冷蔵庫へ戻しゆっくり解凍し食べる。
加えて、
◎むくときには、ヘタの周りもきれいにむく。
全国で干された干し柿をみると一流のものは、これがしっかり成されている。
おいしいには、味覚的美しさに加えて、視覚的な干し上がりの美しさと干されている風景の美しさはセットだ。
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◎ロープは人工的に作られた素材のものを。私が使っているのはナイロン製の縄。
つるし方も全国で様々だが、福島の祖母、山形の置賜地方、島根の石見地方では、何本かのロープがなわれた部分を緩めてヘタを差し込む。
雨の日の取り込みが楽だし、縄の方が強度がある。
見栄えを重視して、麻紐などを使いたくなるが、柿と紐がふれてカビてしまうことがあるそうだから注意。
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また柿の1番下の黒ポッチを残している。
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これは、おねえさんが学んだ山形の百姓おじさんがそうしていたから。これだけは、理由が分からずその百姓が亡くなってしまった今では想像するほかない。
きほんを押さえてから
わたしは、自分の頭で考えて取り組むことは大切だと思っている。
でもその前に先人たちが遺した方法をまずは知りたい。その方法は、その土地によって違ってくるのもとてもおもしろい。
基本を知って、自分の今の暮らしに合うように考えいろんな方法を試してみる。
今その基本の大切さに心寄せる人やきほんを持つ人、それを教える関係性が崩れている気がして、密かに危惧している。
一昔前は、自分のばあさんやおかあさん、近所のじいさんなんかに聞けば大抵のことはわかった。でもこれだけ個や暮らしそのものが孤立化し、情報が溢れ自然環境も変動する中で、本物の情報を深く知ることが難しくなっている。
そんなことも危惧し、なるべくシンプルで本質的な情報を学び、整理整頓してやさしく遺したい。
一年に一度の干し柿。
干し柿は、わたしにとって「死ぬまでにあと何回できるだろうか」と想像するほど大切な「暮らしの神事」のようなもの。
今年は、先月次のステージへ旅立った大学の恩師とそのご家族に食べてもらいたいと思っている。
2022.12.1 夜
干し工程完了
記録
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2022.12.5 昼さがり
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2022.12.8 朝
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2022.12.11 朝
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2022.12.12 2度目の雨宿り
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2022.12.15のよく晴れた朝 2〜3℃
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2022.12.16 夕暮
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2022.12.18 太陽きらきらなよく冷えた朝
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2022.12.20 昼下がり
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2022.12.26 昼下がり
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干し上がったものから引き上げ
冷蔵庫で寝かせ、もう少し粉をふかす
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綺麗に粉が吹いて完成
※最終更新 2023.1.4
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