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あやとり家族34〜突然弟ができた日〜

お母さんは妊娠していなかった

中学生になった。3つの小学校から生徒が集まって4クラスになった。

女子はグループみたいなものを作り上げて、仲良くしなければならないシステムが発動する。不思議だ。

ある女友達は私と2人組を作りたかったらしく、何かにつけて”一緒”にやりたがる。

ある日「一緒にトイレに行こう」って言われたけど行きたくなかったから「行かない、1人で行ってきて」というと泣き出ししまう有り様。

私はそういうのは面倒なので、気になる人間と男女関係なく関わっていくようになっていった。

気質的なものだろう、男友達の方が楽だった。次第に男友達と遊ぶことが大半をしめ、特に仲良くなった池尻くん。彼とはほぼ毎日遊んでいた。

遊んでいると時間が経つのが早くて、帰りは夜中の12時を回っていることもよくあった。みんな寝てるし、怒られることもあまりなかった。

だけど1回だけ23時くらいに帰った日があって、たまたま珍しくお父さんが家にいて「お母さんから聞いてるぞ。遊ぶのはいいけど今日中に帰ってくるようにしなさい」とだけ言われた。

”何時まで”ではなく”今日中”という言葉を使ったお父さんは頭が良いと思った。
”今日中ってことは12時までか”って自分で考えるから。
それからは12時までに帰るようになった。

そんな生活をしていたある日のこと。お父さんが
「今週の日曜日はみんな予定を空けておくように」と私たち兄妹に言ってきた。

「どっか行くの?」早速ワクワクし始める私。

当日になり、なんだか玄関の方から音がするけど無視して部屋にいた。
するとお父さんから「みんなこっちに来なさい」と声がかかり、居間に行った。

そこには知らない女の人と、不細工な赤ちゃんがいた。
「可愛いだろう?」と言うお父さんのセリフにお兄ちゃんもすずちゃんも「うん」と答えている。嘘をつけない私は返事をしなかった。

「じゃあ、これからみんなでラーメンを食べに行こう。車に乗って」
私の大好物ラーメン、うまいこと釣ったのだと後から理解した。

「ももちゃんは真ん中座りなさい」
お父さんの指示で、兄妹は後部席に座らさせられた。
助手席が空いているにも関わらずだ。

その女の人と、不細工な赤ちゃんは別の車で先にラーメン屋に向かっていた。

ラーメン屋に向かう途中、お父さんが車を路肩に止めハザードをつけた。

「いいか、お前たち。あの子はお前たちの弟だ」
「あの子に罪はないから、兄弟仲良くしてあげて欲しい」
「もし嫌なら、今すぐ車から降りなさい」

お兄ちゃんもすずちゃんも「わかった」って二つ返事。
私は疑問だらけ。そして質問攻めだ。

「お母さん妊娠してないよ」
「お母さん知っているの?」
「よくわからない」

「どうするんだ、降りるのか降りないのか?」

こういう時の大人ってずるい。ラーメンが食べたい私の気持ちと、弟の件とは全く別問題。

どうしてもラーメンが食べたかった私は降りなかった。
でもこれはラーメンを食べるために降りなかっただけ。

弟のことはもっときちんと説明して欲しかった。

ラーメンを食べ終わり弟とその母はそのまま帰って行った。
私たちはお父さんと家に帰った。

お兄ちゃんもすずちゃんもいつも通りにしていて、私はお父さんに質問攻め。

だってわからないことだらけで。お父さんも困ってしまって。

結局のところ、お父さんと愛人の間に子供ができてしまった。
一度堕胎したがもうしたくないと。

このことをお父さんはばーちゃんに相談して、産むことになった。

私たちが弟に会った日は、お母さんは高校の同窓会で一泊で県外に行っていないとわかっていた日だった。ばーちゃんもそれを知っていて家にいなかった。

マザコンとの最強タッグ。

お母さんに知らされたのは後のこと。

「ももちゃん知っていたの、弟のこと?私だけ知らなかったの。お義母さんは知っていたんだって」

この愚痴も全部聞かされた、聞いてあげたよ。中学生の私が。
お母さんの怒りを我慢して全部受け止めて。

私は受け止めた怒りを消化する術は持っていなかった。

だから今もわからない、消化の仕方。我慢することだけ形状記憶されちゃって。

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