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僕らの金メダル 13話

11月も半ばの日曜日。もうすっかり秋で、早朝の空気は冷たかった。いつも通りに小学校に集合して、何台かの車に乗り合わせて試合会場に向かった。左手に広がる海を横目に見ながら、海岸線をひた走る。もう少しして朝日が昇ってきたら最高に綺麗だろうな…なんて思いながら車に揺られた。
ちょうど1年前にも、同じように試合会場に向かっていた。ワクワクしながら、久々の試合に、9人でやれる試合に胸を躍らせて。結局…1試合しか出来なくて、打ちのめされて、悔しくて…でも、そこから始まった…僕らの小さな快進撃は。そして、1年後の今日…僕らは、どんな試合をするんだろう…。
1試合目…春先の大会の準決勝戦で逆転負けを期したチームだ。序盤はリードされて嫌なムードだ。去年の悪夢も蘇る。それを打ち消したのは、四番のホームランだった。ここぞという時に頼りになるのが彼だった。1つ上の兄も四番バッターだった。あまり顔には出さないが…兄のようにと、兄のようなホームランを打てるようにと、プレッシャーと戦っていたに違いない。人が見ていないところで、よくバットを振っていた。その小さな体から放たれるホームランは力強かった。
2試合目…最近、僕らが負け知らずのチームだったけど、この日は相手チームも昇り調子で苦戦を強いられた。それでも、なんとか小業を使い得点を重ねて勝利した。
準決勝…この日一番の試合だったかもしれない。どちらのピッチャーも出来は良かった。打たれても好守備でピッチャーを盛り上げた。終始、僕らの方が押し気味だったが…結局0対0 で引き分けた。大会ルールに則って、抽選で決めることになった。ここまで来て抽選なんて…9人が、◯✕が書いてあるクジを引く。◯が多い方が勝ち上がる。5対4…やったぁ。僕らの勝ちだ。運も力のうちも思い、気持ちを入れ直して決勝戦に臨んだ。
決勝戦…初戦から楽に勝てた試合は無かった気がする。それでも気がつけば決勝戦。前回1度リベンジを果たしたチームとだ。もう一度勝って、揺るぎないものにしたかった。しかし、相変わらずの苦しい展開だ。それでも終盤に、八番セカンドの好走で1点を入れ、DPのホームランで追加点をあげた。2対1で勝利した。……2度目の優勝だ。去年の屈辱を果たしての優勝だ。僕たちの再出発は、こうして実を結んだんだ。

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