山之内清彦

気持ちがほっこりするような小説を書きたいです。 辛いことの多い世の中ですが、少しでも読…

山之内清彦

気持ちがほっこりするような小説を書きたいです。 辛いことの多い世の中ですが、少しでも読んでくれた人を笑顔にできたら嬉しいな〜。 細々と活動していけたらと思ってます。 普段は会社員してます。よろしくお願いいたします🙇

最近の記事

世界図書館(秋ピリカ応募)

 世界図書館。この図書館には世界各国からの書籍が集まってくる。  司書のわたしは、西館の一部を受け持っていた。毎日、毎日、大量に送られてくる本の数々を所定の棚へ選別、陳列する。  この仕事、すごく大変だけど、大好きだからまったく苦ではない。  最近、司書仲間の中である噂が広がっている。夜になると、本がひとりでに動き回るというのだ。  ある日のこと、いつもよりもたくさんの量の本が送られてきてしまい、作業が終わるころには、最終退館者となってしまった。  日中には人の往来も多く

    • 激辛の鏡(毎週ショートショートnote)

       わたしは、アリス。  今日、不思議なことが起こった。いつもはない大きな鏡が家にあったの。  でも、お父さん、お母さんに聞いても、なんでここにあるか分からない。  わたしは、猫のキティと一緒に、鏡のことについて考えた。  そしたら、鏡の向こう側で、暖炉の前のチェス達が意思を持ったように勝手に動いていたのが見えちゃった。  なんてステキな世界!   もしかしたら、この先の世界で、冒険ができるかも。  わたしは勢いよく、鏡にダイブした。  ガンっ 「痛っ……」  思いっ

      • 夜からの手紙(毎週ショートショートnote)

         世界は、昼の世界と夜の世界に真っ二つに分かれていた。簡単に言ってしまえば、世界は平面でできており、コインの裏表のよう。  そんな世界だけど、連絡手段がまったくないわけではない。世界の真ん中には大きな穴が空いていて、そこから行き来できるようになっている。 「いつかは、わたしも夜に行ってみたいな〜」  素晴らしい世界を、もっと知りたい。  ある日のこと、『夜からの手紙』が届いた。送信元は初めて聞く地名。でも宛先はわたしで間違いない。  中を開けてみると、夜へのチケットが入っ

        • インドを編む山荘(毎週ショートショートnote)

           インドまで現地のスパイスを取りに行くところから始めるとは、師匠は変なことに拘りがある。  助手の私は、最高のカレーを作るため、師匠の言うことに絶対的に従っている。 「師匠、そろそろ休みませんか? ずっと山登りし過ぎて疲れちゃいましたよ」 「やれやれ、目的の山荘はまだこの山の先にあるんじゃ、野宿でもしたいんかえ?」 「うげえ……」  こんな異国の地で野宿なんてムリ。私は最後の気力を振り絞って山荘までの道をひたすら歩くのだった。  何時間掛かっただろう。 「着いたー!」

        世界図書館(秋ピリカ応募)

          バンドを組む残像(毎週ショートショートnote)

           小さかった頃からミュージシャンになりたかった。小学生の卒業アルバムにも将来の夢に書くほどに。  でも……。現実は厳しかった。そんなに簡単になれるものではない。  若い頃はフリーターをしながら細々と活動していたけど、鳴かず飛ばず。最後までパッとすることはなかった。  それでも晩年は家族に恵まれ、幸せな一生だった。  今でも夢を叶えたかった。と言う気持ちはある。  消えいく意識の中で、既に他界していったバンドメンバー達との辛くも楽しい日々が蘇る。  僕は、また彼らとのバンドを

          バンドを組む残像(毎週ショートショートnote)

          雨の中の少女

           見つけていただきありがとうございます。  一年くらい前に書いたショートショートです。  地縛霊少女の話です。 ------ 『私のことを見つけてほしい』  いつからだろう、そんな気持ちがあったことさえ、昔のこと。  もう何ヶ月、何年こうしているのか。  目の前を行きかう人たちが私のことを認識してくれることはない。  晴れの日も雨の日も、雪の日も雷の日も。昼も夜も。  ずっとずっとひとりぼっち。  ただただ、目前の風景を眺める日々。  感情の起伏さえ、感じることがなくな

          雨の中の少女

          流れ星

           見つけていただきありがとうございます。  過去に初めて書いた小説(ショートショート)です。  せっかくなので公開します。 ------  僕は、空を見上げた。  星屑の海に、星が流れる。  いくつもいくつも。流れては消えていく。  吐く息が白い。寒々とした冬の夜空に手をかざしてみる。  ああ、もう若々しさなんてとうにない。ほとんどが骨と皮だけになってしまった手の甲を見て、なんとも年期が入ったものだとしみじみ思う。  痩せた指と指の隙間から星々の輝きが見え隠れして、手を