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介護や出産で離職→非正規雇用は日本の損失?大学費無償化は税金の無駄遣い?今こそ日本の働き方改革を

16年間国立校で学んだ女が築いた最長キャリアは「ミスタードーナツのスタッフ」

先日、X(旧Twitter)で気になる投稿を見つけました。

投稿者は遺産問題について言及していますが、私が気になったのはこの一行。
16年間国立校で学んだ女が築いた最長キャリアは「ミスタードーナツのスタッフ」
文章のうまさに思わず笑ってしまいました。
いやいや、笑っている場合ではない!
これって多分、今の日本の課題なのです。


産んで辞めたら最後、正社員には戻れない

花束を渡されて、皆に見送られて、、、
一昔前は主流だった(らしい)寿退社。
1994年の雇用継続給付の一環として育児休業給付金制度が創設されたこともあり、結婚、出産を経ても退職せずに仕事を続ける女性が増えました。
私もそのうちの一人。
二人の子供を出産し、育児休業から復帰後も正社員として勤務を継続しています。
ところがこれは恵まれた話。
産後の体調が悪かったり、子供の発育状況、周囲の子育て支援、夫の転勤等の理由によって、退職を余儀なくされるケースもあります。
(何故夫ではなく妻が退職しなければならないのか!という議論はひとまず置いておくとして、、、)
もっと言えば、子供が小さいうちは子育てに集中したい!と考える女性もいるわけです。
(というか、正社員で戻れる保証があるなら、育児休業期間を現行の2年より延長したいと考える母親は多いと思います。)
そして子供が少し大きくなり、出費も増え、さぁいざ復職!と考えた時、
そこにあるのはほとんどが、パートや派遣社員等の非正規雇用なのです。
職歴の浅い中年女性、ましてや勤務時間が限られている人間を、進んで正社員に迎えてくれる会社は、今のところ日本の主流ではありません。
産んで辞めたら最後、女性たちに正社員として社会復帰する道は、ほとんど残されていないのです。

女性だけじゃない!介護離職の問題

この問題は、女性の出産だけにとどまりません。
例えば介護や看病
親族の介護や看病のために退職した場合、男性でも正社員で職場復帰するには、前職のキャリアが認められない限り、なかなか難しいのが現状です。
非正規雇用の問題点は、雇用の不安定さと低賃金
結婚を諦めざるを得なくなり、親のための人生だった、なんて語る男性も。
高齢化が進む日本で、介護による離職は更に増加していくと思われます。

生活の苦しさだけでは済まない、非正規雇用の真の問題点

先日、お世話になっている方に、こちらの本をお借りしました。

日本の未来は女性が決める!ビル・エモット
日本の未来は女性が決める!(ビル・エモット著・川上純子訳)

私にとって、非正規雇用に対する考えが変わる、目から鱗の内容があったので引用させていただきます。

 商業、教育、文化、政府、いずれの雇用主であれ、数か月や数年単位でしかスタッフを雇わない場合、基礎訓練以上の訓練に金を使うのは意味がないと考える。彼らのスキルを伸ばすために金をかけるのはナンセンスだと考えてしまうのだ。
 今や非正規雇用が労働者全体の四十%―これは一九九〇年代初頭の二倍であり、三〇年近く伸び続けている―を占めており、日本の人的資本に甚大な影響を与えている。男女問わず労働者は高校や大学で学んでおり、国は公共教育に多大な資金を投入している。
~中略~
 そうした男女は多くの場合、能力を生かせない仕事に就いている。そのため、彼らの人的資本は次第に劣化してしまう。
 これは大きな無駄遣い、人間の無駄遣い、人間の能力の無駄遣い、そして彼らの教育に費やされた公的資金の無駄遣いである。
~中略~
 人的資本の軽視は社会的な恥辱であり、経済的な失態である。二五年にわたって急速な高齢化に直面してきた国がとるべき政策のまさに真逆に向かっている。国民や国民のスキル、能力がますます重要かつ希少になりつつある時期に、日本は自らの人的資本を損ない、国民を無駄にしている。

日本の未来は女性が決める!(ビル・エモット著・川上純子訳)

要約するとつまり、非正規雇用は、今までの高等教育費の無駄遣い、ということです。
なんと!!言われてみれば確かに私も、一度は大学時代の教育を活かせる仕事に就いたものの、家庭と両立できる働き方を求めた結果、現在は受けた教育とは殆ど関係のない仕事に就いています。
冒頭のツイート主のお姉様の実情はわかりませんが、もしかするとこれは本人の問題だけではなく、16年間国立校で学んだ女性を「ミスタードーナッツのスタッフ」にしかできなかった「日本」にも、問題があるのでは…?

会社の命令は絶対?

著者のビル・エモット氏は、また、以下のようにも述べています。

 人事政策において最も変わるべき面、変わり始めてはいるが遅々として進まない面とは、大企業の異動・転勤に関する対応だ。企業はひたすら忠実な道具のように社員を扱うのに慣れきっており、大阪から札幌、あるいはジャカルタ、北京、ロンドンへ、突然の転勤を発令する。社員は一にも二にもなく異動を受け入れるものとされている。家族は単身赴任を受け入れるか、一緒に急な引越を受け入れるしかない。
 今日の世界基準では、こうしたやり方は稀だ。
~中略~
 そうした企業では社員の妻が専業主婦であるのが普通であり、夫の異動も転勤も思うままだった。変化が起こったのは九〇年代だ。専門職に就く女性が増え、専門職の共働き夫婦が増えた。となれば、片方の都合で簡単に引っ越すことはできない。結果として、雇用主、特に人事部は社員のニーズや環境への対応に労力を割かねばならなくなった。もはや社員を道具や奴隷のように扱う時代ではない。本音ではそうしたい企業も多いだろう。コストもかからないし、楽だ。しかし、もはや通用しないのだ。

日本の未来は女性が決める!(ビル・エモット著・川上純子訳)

少子化対策人手不足の解消の実現、介護問題対策など、日本が抱える問題に対応すべく変わっていくには、まさに、急な転勤に対してなど、雇用主と従業員相互のコミットメント(了承)が必要となってくるでしょう。
そしてそれはまず、政府から行うべきと私は考えます。
「人財」を活かすという長い目でのコストを考え、国が先導して行い、社会の流れを変えてほしい。
今の日本政府はいつも、国民の顔色をうかがうばかりで、新しいことをするには、影響力のある大企業等、民間の力に頼っている節があると感じます。

このままでは、多子世帯の大学無償化は、ムダ金に終わる?

2023年12月22日の閣議決定に於いて、多子世帯の大学等の授業料等無償化が決定したニュースは、皆さん印象に残っているかと思います。
子供を全員大学に行かせることができるかもしれないとなれば、多子世帯の方々や、三人目の出産を検討しているご家庭にとっては明るいニュースであったとは思います。
しかし、ちょっとまってください
親は子供を何故大学に行かせたいと考えるのでしょうか?
高等教育を受けることにより、専門性の高い職業への就職の幅を広げるため?
収入の高い職業に就職するため?
え、ちょっと待ってください。
日本の労働者の40%は非正規雇用です。
特に女性の大学卒業者の正規雇用の割合は低く、平成29年のデータとなりますが、30代の大卒女性の正規雇用の割合は約50%です。
大卒女性の半分は、大学で学んで内容を活かすどころか、正社員にすらなれない現状なのです。
(最新の総務省の就業構造基本調査の概要では、非正規雇用の割合には触れてすらいません)
大学の授業料を無償化しても、その教育を生かせる未来がない。
教育のために税金を大量に注ぎ込んでも、それを生かす機会がなければ、ただの無駄遣いに過ぎないのです。

(以下、1/9 21時追記)

レールを外れたら終わり、にしない

終身雇用の考えが未だ色濃く残り、正規雇用と非正規雇用の仕事内容や待遇の差が大きな日本。
出産や介護で一度レールを外れたらドロップアウト、育児や介護の期間をヒイヒイ言いながらなんとか耐え、仕事を続けなければ社会人としての未来はない!
そんな今の日本の制度は、負担の大きな生産年齢人口の人々を、とことん追い詰めていると感じます。
私はもっと、多様な働き方の選択のできる社会になれば、みんなが幸せになれると思うのです。
育児、介護などの事由により一旦仕事を辞めても、再びキャリアを築くことができる社会。
仕事と出産を天秤にかけるのではなく、退職しても育児期間が終われば当たり前にまたキャリアを目指せる仕事に再就職ことができる。
そうなれば、女性たちは安心して子供を産むことができますし、男性たちも育児休業に踏み切ることができ、婚姻率や出生率は自然と上がると私は考えます。
その方法が、必ずしも非正規雇用の廃止とは考えていません
むしろ、現行の正規雇用=正社員の廃止のほうが妥当かもしれません。
在籍期間によって給与が上がる年功序列や、定年まで働くことを前提とした終身雇用を廃止し、一定の業務やポジションに求められる条件に合った人間を都度有期契約する、報酬は評価によって変わる、
ブランクがあっても条件にあった人財であれば採用される
そうであれば向上心も搔き立てられ、高等教育を施された人間が能力を発揮できない仕事に甘んじることもなくなるのではないでしょうか。

女性の多い職場で働いていて感じることは、本当に優秀で意欲のある女性が多いことです。
誰でもできるような仕事を、高学歴の女の子がやっているから驚きます。
高等教育を施した人間の無駄遣いは、特に女性において顕著です。
彼女たちを生かすことができれば、日本はもっと、成長することができるはず
です。

以上、今回は気になるツイートをきっかけに、日本の雇用形態について考えてみました。
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
細川まなかでした。

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