[短編]星空への誘い④

 様々な時空の「私」の人生を巡り、いよいよ最後の七つ目の光の前に立った。今までとは違って、後ろに立つ男性はこちらを固唾を呑んで窺っている。

 彼が何を考えているのかは分からない。でも、彼は私のこれまでの人生の中全てに登場した。私の魂にとって特別な人物なんだろうとなんとなく悟っていた。そして、この最後の記憶を見ることで、その答えが見つかるだろうということも彼の反応から感じた。

「最後の記憶……見てきますね」

 それまで、一言も交わすことなく黙々と記憶を見ているだけだった。けれども、男性から伝わる緊張感に、声をかけずにはいられなかった。

「そうですね……」

 男性は少しの間をおいて、ゆっくりと絞り出すように呟く。そうかと思えば、急に私の目をまっすぐ見つめて言った。

「良ければ少し、抱きしめさせてもらっても良いですか?」

 想定外の言葉に狼狽えてしまう。私の反応を見て彼は軽く笑った。

「そんなに身構えないでください。例えば、もうすぐ宇宙に旅立ってしまう宇宙飛行士を見送るような、そんなハグですから」

 少し警戒していたものの、彼の柔らかい雰囲気にほだされた私は視線を合わせないまま言った。

「分かりました……」

 恐る恐る近づくと、私よりも背の高い彼の腕に包まれるように抱きしめられた。その途端、ずっと帰っていなかった家に帰ってきたような、そんな安心感が広がる。気づけば私も彼の背に手を回していた。

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