「私の死体を探してください。」 第32話
朝山出版編集部
森林麻美が自殺をほのめかすブログを書いてから一年がたった。三島正隆が山中湖の別荘で自殺をしているのが発見されたのはつい先日のことだった。
別荘から異臭がする。ということで、駆けつけた母親がトイレのドアノブで首をつっている三島正隆を発見したということだった。
「結局、森林麻美の死体は見つからなかったな。プロットの行方も謎のままだ」
朝山出版文芸部、編集長の神永進はそう呟いて、編集部のデスクの椅子に座った。神永はこの夫婦と面識があった。大学の創作サークルで森林麻美の小説をいつも褒めていたのは、この神永だった。
「神永編集長、ちょっと変わった郵便が来てます」
部下の一人にそう言われて神永はデスクから顔をあげた。
「変わった郵便って、どんな?」
「タイムカプセル郵便です」
「タイムカプセル郵便って何だ?」
「僕も知らなかったんですけど、十年先まで日時を指定して送ることができる郵便みたいです」
神永はハッとした。
「差出人は誰だ?」
「三島麻美さんって、ご存じですか?」
神永は部下に短く礼を言うと、封筒を受け取った。
三島麻美は森林麻美の本名だ。
震える手で封を切った。
中にはクッション材にくるまれたUSBが一本入っていた。
神永は恐る恐る自分のデスクのPCにUSBを差し込んだ。
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