愉快でドタバタなバカンス行き! 映画の思い出

『ワリーワールド行きは諦めたのかい?』

 なんとなく、今は無きTSUTAYAで借りたDVD。
 それが、『お!バカんす家族』だった。

 内容は見ての通りのスラップスティックコメディ。マイナーと思われるので、あらすじを紹介しよう。

 舞台はアメリカ。主人公は4人家族のお父さん。しかし家族仲は冷え切っていて、子供達の仲は最悪、離婚話すら持ち上がりそうな始末。お父さんは頑張るが、空回りするばかり。

 そんな中、再生の一手として「家族全員でアメリカ大陸を横断すること」を思いつく。目的地はお父さんの思い出のテーマパーク、ワリーワールド。そこでお父さんの思い出深いジェットコースターにみんなで乗ろう、そうすればみんな仲良くなれるはず……ということで、長い旅が始まる。


 道中では様々なトラブルに見舞われる。寄り道ではひどい目に遭い、おかしなトラックには追いかけられ、いじわるで間違った道を教えられ、出会った苦難は数え切れない。

 けれど、なんだかんだ乗り越えていく。弟にナメられていたお兄ちゃんは威厳を取り戻し、家族仲はゆっくりと深まっていく。

 ちょっとずつ目的が達成されていくのを見て、いつしか「いいぞ! がんばれ!」と家族を、そしてお父さんを応援していた。

 謎ギミック満載の車に笑ったりしながら、旅は終盤へと近づいていく。あまりにも度重なる不運に、ついにお父さんは心折られ、バカンスを諦めそうになる。

 しかし、この言葉でもう一度立ち上がる。

『旅がつらいからゴールが輝くんだ。ワリーワールド行きを投げ出すな』

 投げ出すな。

 その言葉は、私の心にとても沁みた。


 そしてクライマックス。念願のコースターに乗り、いざ出発、という時。

 お兄ちゃんが歌い出す。

 序盤はお父さんだけがノリノリで、他の家族からは鬱陶しがられた歌。だが、今は違う。

 やがてお母さんが加わり、弟が加わり、最後にお父さんも。

 仲の悪かった子供達が、お父さんを信じ切れなかったお母さんが、次々に歌い出す。

 やがてジェットコースターは動き出す。

 視点はこの時だけ、お父さんの視点に変わる。爽やかに流れていく風景。家族と一緒に楽しむ、スリル満点のジェットコースター。ずっとずっと待ち望んでいた瞬間。お父さんの喜びが、ダイレクトに伝わってくる演出だ。

 見ている側も、さわやかな、やり遂げたような気持ちで、本当に嬉しい気持ちにさせられる。ほんわかしてぎゅっとして、心から良かったなぁ、と感じ入る。

 ……このシーンにはオチがつくのだが、それでも、生まれた絆は変わらない。どれもこれも、あの時投げ出さなかったからだ。


 つらいことがあっても、投げ出さなければ、必ず辿り着く。ハッピーエンドに辿り着く。

 辛いとき、この映画を、この言葉を思い出す。

 「ワリーワールド行きは諦めたのかい?」

 まだまだ諦めない。

 きっと、未来は輝いている。

 愉快でドタバタな旅程と、家族の絆と共に。
 

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