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現役TVディレクターによる『もっと面白くなる!ロケVTRの教科書①撮影編』

 はじめに。
 〜 140文字では収まりそうにないので 〜

 
 ツイッターに書きかけて、やめた内容が幾つかあります。
 私なりの「ロケVTRの演出術」についてです。
 そのまま垂れ流すのはどうかと迷い、1人でも2人でも、熱心に読んでくれる方にだけ伝えたいとnoteに書くことにいたしました。

 私は制作会社に所属するテレビディレクターです。番組によってはプロデューサーを務めることもあります。
 従業員140人ほどの映像制作会社の中堅社員です。
 年齢は41歳。星野源さん、高橋一生さん、嵐の大野さんと同じ松坂世代です。この業界のトップランナーで言うと「水曜日のダウンタウン」の藤井氏と同い年です。
 テレビ局の局員さんと制作会社の人間では、任されている仕事の範囲も背負っている責任も、ついでに給与も違いすぎるのですが、「テレビ画面に映るものを作っている」点においてのみ、似た部分もあると言えるでしょうか。

 私のモットーは「堅実に、面白いVTRを作り続けること」であります。理想を言えば、人とは違う発想で面白いVTRを作りたい! そう思ってこの仕事を続けています。

 少なくともこの10年、つまらないVTRは作っていません(たぶん)。
 
 数年前までのテレビ業界では、プレビューで面白くないものを出すとVTRへのダメ出しにとどまらず、人格否定までされるのが常でした。
 今それをやるとコンプライアンス的に大問題ですが、私がこの業界に入った当時はそれが当たり前。プロデューサーの罵声が響き渡るのです。
 「だからお前はダメなんだ!」
 「○○大学だからこんなもん作るんだ!」
 「○○育ちだから頭が悪いんだ!」
 今なら一発アウトですよね。
 
 そんな「人格否定の暴言」を食らっているディレクターを傍目に見たことはあっても、自分はまずまずの合格点を出してここまで来ました。
 面白いVTRを作り続けられれば、怒られたりしないどころか、新しい仕事も舞い込みます。
 一番光栄だったのは、テレ東の番組を見たフジテレビのプロデューサーからご指名でオファーを頂いたことです。そんなこともあるんですね。

 テレビは「非日常を映す箱」です。
 取材となれば、一般の人が行くことのできない場所に行き、普段なら会えないような人にも会える。
 収録のスタンバイや編集作業は体力的にキツイ時もありますが、刺激的で変化に富む楽しい仕事です。
 だから続けられました。

 ジャンル問わず様々な現場に投げ込まれ、もがきながら約20年。

 楽しいロケの思い出ばかりではありません。

 東日本大震災の直後には被災地の宮城県気仙沼で密着取材。
 救命救急の現場の密着の際には、目の前で人が亡くなりました。
 ゴミ屋敷を片付けるロケでは、体がダニまみれになった上に、古いサッシのトゲが爪の間に入り手術もしました。
 寒い所、暑い所、国内外、専門知識が必要な場所、富士急ハイランドのFUJIYAMAからエルサレムの嘆きの壁まで(この例がいいかよくわかりませんが)、いろいろと巡りました。

 そうした中で、報道でもバラエティーでも、ジャンルがどうあれ通用する「汎用性の高い演出ノウハウ」を幾つも体得してきたつもりです。
 
日テレ以外の全局でお仕事をさせて頂く企画にも恵まれました。このノウハウを、まだ駆け出しただった頃の、20代から30代にかけての自分に教えてやりたい。
 そんなつもりでこのnoteを綴りたいと思います。

 余談ですが、私は中学時代に軟式テニス部に所属していました。たいして上手いわけではなかったのですが、「上手くなるコツ」と「試合に勝つための理論」はなんとなく分かっていました。分かっているけれど、やらないタイプの生徒です。
 私が中3になった時、中1の新入部員たちに、この「星之助ノウハウ」を教えました。テニスコートの中央、ネットのすぐ近くにバックスピンをかけてポトンと落とすと相手は拾えないよ!みたいな「絶対に点が取れる姑息な小手先の技」をいろいろと教えたんですね。
 すると彼らの腕はめきめき上達。ずっと弱小校だったのに、その中1たちはその後、県大会まで勝ち上がってしまったのです。
 ある時、中1と中2が練習試合をしました。結果は中1の圧勝。
 「どうしてそんな卑怯な技を知ってるんだ?」と問いただす中2。
 「星之助先輩から教えてもらいました!」と、中1。
 中2の子たちからギロッと睨まれたものです。

 さらに余談ですが、成功している有名YouTuberを浴びるように見て分析し、私なりの「YouTuber成功法則」も導き出しました。じゃあなんで実践しないの?と思われる方もいるかもしれませんが、現段階ではテレビ番組を作っている方が「自分は幸せ」と判断して今があります。これについても少し後述します。
  
 というわけで!
 決して卑怯なやり方を教えたいわけではないのですが、知っておくと役に立ち、すぐに実践できる「バラエティーでも、情報番組でも、報道番組でも、ドキュメンタリー番組でも、共通して使える演出ノウハウ」をお伝えいたします。

 それは同時に、テレビマンがどのような思考で面白いVTRを作ろうとしているかを伝えるものでもあり、逆に、どうするとつまらなくなるか、なぜつまらないのかを解き明かすものにもなるかと思います。

このnoteは下記の方にオススメです。
▼現役の若手テレビディレクターさん。
(インタビュー取材をより質の高いものにしたい方。タレントさんとの現場をめっちゃ楽しみつつ最高の撮れ高にしたい方。強い音を引き出したい方。参考になると思います。)
▼現役のADさん。
▼若手の放送作家さん
▼若手のテレビカメラマンさん
▼テレビ番組の裏側に興味がある方

 では、まずは第1章「出演者の○○を○○れ!」から。  よくテレビ番組の取材を受ける方、タレントさん、テレビマンと接する機会の多い方なども、お読み頂くと「ああ、こういうつもりだったのか」と発見があるかもしれません。  本稿、「私ごときが」「そうは言っても折角書いたし」と相反する気持ちを抱えつつ、読まれなくても良い前提で有料にいたしました。  
 もし私の後輩やご縁があった方で読みたい人がいたら、メールアドレスをください。PDF版を無償で差し上げます。  
 ちなみに、関わった番組名や固有名詞はできるだけ避けています。暴露話も一切ありません。最後の方で、同業者の目線から「情熱大陸」や「プロフェッショナル」などをどう見ているか書きました。


それでは、まいりましょう。


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