見出し画像

就活で失敗しがちな日本語表現

この記事の概要

  • 大手企業2社での人事経験をふまえて、エントリーシートで綺麗な日本語を書くために知っておいた方がよい知識などをまとめた記事です。

  • 記載した内容は、帰納法的に「読みづらい日本語や印象が悪い文章にありがちなこと」を明文化したものです。すなわち、この記事の内容に反する記載をしたから即アウトというわけではありません。

  • 日本語として厳密に正しいかというよりも、エントリーシートを読む人がネガティブに感じないかということを重視しています。したがって、厳密には間違っていない用途もよくない例として紹介します。なお、あえて紹介する場合と、私が無知なだけの場合が混在しています。

  • 細かい具体例は全て記載できないので、あくまでも全体的な考え方を紹介する記事と認識してください。

  • 私もNoteやTwitterではわりと適当な日本語を書いているので、そのあたりへのツッコミはやめてください。

基礎知識

  • 送られてくるエントリーシートのうち綺麗な日本語は2割、及第点が5割、残りの3割くらいは常識を疑うレベルである。

  • エントリーシートはAIで判定した後、人間が短時間で読む。

  • したがって、AIで分析されないような間違った日本語や不明瞭な構文は、採点対象外になったり、誤った解析をされることがある。

  • 人間がスラスラ読みづらい文章も敬遠されやすい。読む側は日本語力で粗探しをしたいわけではないが、時間制限があるので、下手すぎると読みきれずに不合格になる。したがって、読みやすさに影響しないミスであれば多少は問題ない。

  • 日本語が上手という理由だけで合格になることはあまりないが、日本語が下手すぎるという理由だけで不合格になることは大いにある。

  • 日本語が下手という先入観があると、内容についても厳しい目が向けられることがある。

全体共通の注意点

全般

  • 就活で必要な日本語力は、文学のような美しさでも、論文のような厳密さでもない。とにかく伝わりやすいことだけを意識する。

  • 文字数を削減したいのはわかるが、削減しすぎると読みづらくなる。

  • 逆に引き延ばし過ぎても読みづらいし、無理矢理のばしてることがバレて印象が悪い。

  • 結論として、と少し長めに書いてから削減するくらいがちょうどよくなると思う。

  • 「敬体(ですます調)」でも「常体(である調)」でもどちらでもよい。

  • 同じエントリーシート内で敬体と常体が混ざっていても問題ない。

  • ただし、同じ質問内で混ざっているのはNG

  • 圧倒的多数派は敬体である。常体を使うと多少の文字数節約にはなるが、こんなところで目立つ必要は全くないので、どちらかというと敬体をおすすめする。

  • 話し言葉や馴れ馴れしい表現、子供っぽい表現はNG

  • 全国区の企業の場合、できれば標準語を使う。方言はイントネーションの差くらいなら大丈夫だが、単語自体が違うと伝わらないことがある。(面接の場合)

句読点や記号

  • 読点は普段よりも気持ち多めに使ってもよいが、使い過ぎに気を付ける。

  • 例えば、このように、文節ごとに、読点を、打つ人が、たまにいるが、絶対に、NGである。

  • 句読点の代わりにスペースを使うのはNG

  • 読点の代わりにカンマ、句点の代わりにピリオドを使うのはNG

  • 「!」や「?」もよほどの理由がなければ使わない方がよい。

  • 三点リーダもNG

  • 「失敗しました。。。」などのように句点や読点を連続して使うのもNG。これは単なるミスタイプでもやりがちなので注意する。

  • カッコは半角と全角が混ざりがちなので注意する。

  • 数字やカタカナについても同様である。

  • 基本は「 」か( )のみを使う。『 』や【 】は使わない方が無難である。

  • ( )での補足はわかりづらいので、できれば使用しないようにする。

  • 改行は自動削除されることがある。したがって、段落の冒頭にスペースを入れない方がよい。

  • 同じ理由で、接続詞のかわりに段落分けをすることも避けた方がよい。

  • 文字数の関係で最後の文の句点がなくなるのは、読みやすさにはほぼ無関係なので許される。

ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベット

  • 漢字は全体の3割くらいだと読みやすい。

  • 漢字はできるだけ6文字以上連続させない。

  • そのためには、適度に助詞を挟むとよい。例えば、「学園祭実行委員会」は「学園祭の実行委員会」とする。

  • 文字数を減らすために無理に漢字にするのは読みづらくなりやすいので注意する。

  • 一般にひらがなやカタカナが使われることが多い場面では、漢字は使わない方がよい。例えば、「そのうえ」、「なかでも」、「こちら」、「ページ」、「あなた」などである。

  • 変換ミスや送り仮名の間違いには気を付ける。

  • ひらがな、カタカナ、漢字は単語の区切れ目が分かりやすいように使い分けられるとよい。

  • アルファベットの大文字と小文字は正しく使い分ける。こういうのはAIが固有名詞かを判定するためなどにも使われるので意外と重要である。

文末表現

  • 同じ文末を2回以上続けないほうがよい。

  • 特に、同じ動詞で終わることが2回以上連続すると読みづらい。

  • 例えば、「思いました」が続きがちである。「考えました」、「感じました」、「認識しました」、「理解しました」など状況に応じて使い分ける必要がある。

  • 同様に、「しました」は「行いました」、「取り組みました」、「やり切りました」などを使い分けるとよい。

  • 体言止めを使わない。

  • 倒置法を使わない。

  • 「が」で終わらない。

  • 例えば、「アルバイトをすることにしました。本当は勉強を頑張ったほうがよいと思ったんですが。」みたいな文を書いてくる人がたまにいるが、かなり下手な文章に見えるので注意が必要。

並列表記

  • 「や」は連続させない方がよい。例えば、「りんごやみかんやぶどうやパイナップル」というのはわかりにくい。

  • 「とか」は使わない方がよい。

  • 並列するものの中でカテゴリ分類できる場合は、それを意識した並びにするとよい。例えば、「パンやごはん、キャベツやレタス、りんごやみかん」という感じである。

  • 「または」、「あるいは」、「もしくは」なども使うとよい。全部ひらがながよい。

  • 読点で区切って並べ、最後の直前に「または」を入れるとわかりやすい。例えば、「りんご、みかん、ぶどう、またはパイナップル」などである。

  • 法律などでは、「または」は「もしくは」よりも大分類に使う。具体的には「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」という感じである。エントリーシートではここまで意識しなくてもよいが、人事には法律を読みなれている人が多いのも事実である。

  • 語呂や統一感を意識する。例えば、「チャレンジ精神と柔軟性」よりも、「積極性と柔軟性」のほうが読みやすい。

敬語

  • 謙譲語と尊敬語の使い分けを間違えないようにする。

  • 二重敬語に気を付ける。特に、「仰られる」は「仰る」が正しいので気を付ける。

  • 同様に、「参らせていただく」ではなく「参る」が正しい。

  • 「参考になる」ではなく「勉強になる」を使う。

  • 「了解」ではなく「承知」を使ったほうが無難である。

  • 大学の先生が主語の場合も敬語を使っておいた方が無難である。

  • 書き言葉では「貴社」、話し言葉では「御社」を使う。

  • 相手の敬称は書き言葉では「様」を使った方がよい。話し言葉では相手との関係性によっては「さん」でも許される。

  • 一人称は性別にかかわらず「私(わたし)」を使う。俺、僕、自分、アタシ、ウチなどはNG

  • 家族については、「父」、「祖母」、「妻」などを使う。

その他の文章表現

  • 二重否定や回りくどい表現はできるだけ避ける。

  • 例えば、「少なくない人数」は「多数の人」、「複数の人」、「10人程度の人」などに置き換える。

  • 「十分とは言えない」は思い切って「不十分である」に言い換えられないか検討する。

  • ら抜き言葉、さ入れ言葉に気を付ける。

  • 1つの修飾語で複数の語を修飾させない。

  • 例えば、「5人分のiPhoneとパソコン」だとパソコンが何台なのか分かりづらい。「iPhoneとパソコンをそれぞれ5人分」、「5人分のiPhoneと同数のパソコン」などと書いた方がよい。

品詞別の注意事項

接続詞

  • 接続詞は読みやすい文章を書くうえで最重要の品詞である。頻繁に使った方がよい。

  • 使わない場合であっても、前後の文の関係が何であるかを意識して書き、それが相手に伝わるかを考えること。

  • 接続詞のあとに読点を打つかは場合による。迷ったら打って置いたほうが無難である。

  • 同じ接続詞を2回以上連続で使わない方がよい。

  • 特に、「また」を繰り返さない。「また」、「さらに」、「加えて」などを使い分けるとよい。

  • 「しかし」を繰り返すのもよくない。「とはいえ」、「一方で」、「もっとも」などを使う。常体の場合は「だが」も有用。

  • そもそも逆接が2回以上続くこと自体が読みづらいので、文章構成事態を見直した方がよい場合も多い。

  • 「まず」を使ったら、「次に」や「最後に」などもセットで使う。

  • 「なぜなら」で始まる文は「からです」で終わらせる。

  • 理由が長くなる場合は、1文目を「からです」で終わらせ、2文目を「すなわち」、「つまり」などではじめて補足説明をするとよい。

  • 「たしかに〇〇~しかし〇〇」という使い方で、比較やセルフ反論をすると説得力がある。

  • この場合、「しかし」を使わなくても逆接の助詞等でも代用できる。

  • 例えば、「たしかにA社は会社規模で優れているが、貴社は〇〇に関する技術力でA社に勝っている。」などという風に使う。

助詞

  • 「の」を繰り返さない。特に3回以上は避ける。

  • 例えば「3年生の春学期のゼミの成績が悪かった」は、「3年生の春学期はゼミの成績が悪かった」と言い換えるなど工夫が必要である。

  • 順接の「が」は逆接の「が」と瞬時に見分けられないことがあるので、できるだけ使わないほうがよい。

  • 例えば、「りんごが好きですが、みかんも好きです。」よりも、「りんごが好きですし、みかんも好きです。」の方がわかりやすい。

固有名詞・専門用語

  • 必ずしも常に厳密な表記をする必要はない。正しさにこだわりすぎると読み手が単語の意味が気になって本題が頭に入らなかったり、余計な詮索をされたり、懸念を抱かれることがある。

  • 例えば学部名が長すぎる場合、「法律を学んだ」「情報工学を学んだ」などと書き換えたほうが読みやすいこともある。

  • 文系と理系の中間のような学部であっても、どちらかだと断言してよい。

  • 食品衛生法上の飲食店にあたらなくても、「飲食店でアルバイトをしていた」などと言ってよい。

  • 自分が所属していたサークルやバイト先の店の名前なども、一般名詞化した方が読みやすい場合が多い。

  • ただし、ディズニーランドのような特徴的な場所の場合は、「テーマパーク」とするよりも固有名詞を出した方がわかりやすいこともある。

  • 自分では専門用語だと自覚していない場合もあるので、全く関係ない人に一度読んでもらうとよい。

  • 若者言葉や流行語も専門用語の一種であると認識すること。

  • 就職活動に関する用語についても、面接官と学生では持っている常識が違うことがある。例えば、面接官は就活界隈のインフルエンサーについてなどは知らないことが多い。

普通名詞・代名詞

  • 代名詞が何を指しているかわかりやすくする。

  • 「〇〇する時」の「時」は連続しやすいので、「〇〇する際」などを上手く使うとよい。

  • できるだけ、名詞の代わりに「の」を使うことを避ける。例えば、「するのをやめる」ではなく、「することをやめる」を使う。

その他の注意点

語彙力

  • 熟語を使うと語彙力があるように見える。例えば、「良くした」は「改善した」、「探す」は「探求する」などがある。

  • 「頑張った」、「努力した」、「尽力した」、「力を尽くした」など似た意味でも様々な言葉を使い分けるとよい。

  • 語彙の多さはAI分析の対象である。

  • 重要だと考えているキーワードはあえて繰り返すことで、AIに対してアピールできる。逆に、重要でないのに繰り返してしまわないように注意する。

  • 大抵の言葉は言い換えがあるので、検索などを駆使して調べるとよい。

略語

  • 基本的に略語は使わない方が良い。

  • 例えば、「バイト」、「就活」、「ガクチカ」、などは正式な表記をしたほうがよい。

  • 「コンビニ」、「HP」あたりは許されやすい。何が許されるかの境目は曖昧であるが、中高年でも理解できるか、元の文字数が長く略すのもやむを得ないと思われるかなどを総合的に考慮する。

  • 「高校」、「パソコン」など略語のほうががむしろ一般的な場合は、正式名称で書く必要はない。

  • ただし、学歴欄においては「高等学校」と記載すること。

  • 資格名もできるだけ正式名称で書いた方がよい。

重複表現

  • 「違和感を感じる」ではなく「違和感がある」

  • 「過半数を超える」ではなく「半数を超える」

  • 「一番最初」ではなく「一番」または「最初」

  • 「まず先に」ではなく「まず」または「先に」

誤字・誤変換・誤使用

  • 「ゆう」ではなく「いう」

  • 「気ずく」ではなく「気づく」もしくは「気付く」

  • 「超える」と「越える」、「以外」と「意外」、「対象」と「対称」、「以上」と「異常」、「解放」と「開放」、「回答」と「解答」、「定員」と「店員」

  • 漢数字の「二」とカタカナの「ニ」、漢字の「力」とカタカナの「カ」

  • 中国語の文字は同じ漢字でもフォントが微妙に違うことがある。

差別表現

  • 無意識に差別用語を使う求職者は結構いる。

  • なかには気にしすぎで息苦しいと思うレベルのものもあるとは思うが、人事は職業柄わりと敏感な人も多いので、そういうゲームだと思って割り切り、使用を避けた方が無難である。

  • 例えば1年くらい前に面接で、応援しているという意味の「推し」を使ったところ、発音することが難しい人を指す「唖」と誤解され、面接官に注意された事件がネットで話題になった。

  • この事例では面接官の語彙力の問題もある気がするが、誤解されて損をするのは自分である。最近生まれた言葉や差別用語と疑われやすい表現は使わない方が無難である。

  • 「自分が差別表現の対象であるが、個人的には許せるからOK」という理屈は通用しない。他の人に対しても使うだろうと思われてしまうからである。

  • 「受付嬢」、「保母」、「ウェイトレス」など性別と職業を強く結びつける表現は避ける。

  • 「サラリーマン」、「OL」は比較的許されやすいが、「会社員」に統一した方が無難である。

  • 「町医者」はもともと「武士のお抱え医師ではないその辺の医者」に由来するのでNG。「個人病院」などに言い換える。

  • 「バーテン」は無職を表す「フーテン」とバーテンダーをかけた言葉なのでNG。そもそも略語であるから二重の意味でNG。「バーテンダー」であればOK

  • 「片手落ち」は障害者差別につながるのでNG。「不十分」などに言い換える。

  • 「足切り」も公式な場では避けた方が無難である。「門前払い」などに言い換える。

  • 「外人」は「外国人」に言い換える。

  • 「ハーフ」はギリギリまだ許されやすいが、「ミックス」などと言い換えた方が無難である。

  • 「ホモ」、「オカマ」などはNG

  • 「子供」と漢字で記載することは問題ない。

  • 「障害者」も問題ないが、企業の障害者採用ホームページの表記に合わせると無難である。

  • 「片親」は「一人親」と言い換える。

あとがき

SNSなどを見ていると、「エントリーシートで使える大人っぽい言い回し」みたいなまとめがたまに流れてきます。
たしかに、この手のまとめに書かれている内容は有益なことが多いです。しかし、実際にエントリーシートを見る立場から言うと、それ以前のレベルの人たちが多すぎるというのが正直な感想です。

そこで、この記事では様々な項目に分けてたくさん書いてみました。最初にも書いた通り、この記事に反することをしたらすぐに不合格というわけではないですが、特に、接続詞の使い方、並列表現、漢字を使うタイミングなどについては、読みやすさに直結する部分です。
改めて自分のエントリーシートや面接での言葉遣いを振り返るきっかけにしていただければ嬉しいです。

ほとんど推敲されることもなくネットに転がっている文章の日本語と、エントリーシートに記載すべき日本語は別物です。ぜひ自分の書いた文章を誰かに見てもらうなどして、わかりやすい日本語の練習をしてみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ほしの


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?