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Knight and Mist第八章-10 モンロー家

キラキラ軍団に護衛されながら、イーディスとハルカ、そしてキラキラマントに派手な羽飾りのクール・シトラスとさらに派手な羽飾りのモンドで馬車に乗り、羽で窒息しそうになりながらゴトゴト数十分。そのお屋敷は現れた。

ピンクの外壁に、精巧な彫刻。鉄柵の向こうに前庭があり噴水が真ん中にある。

まさに宮殿。砦とは違う、貴族が住まうためだけの、豪華絢爛な、いわゆるお城だ。

でかい扉の前には身なりの良い男が見張りとして立っており、ハルバードを捧げ持っている。

これも機能としての見張りというより、見栄えとしての見張りである。

あたりは静かで、偉い人が住まう場所独特の張り詰めた空気に、ピヨピヨという空を飛ぶ鳥の声と噴水の水音が混ざる場所であった。

皆で馬車を降り、宮殿へと足を踏み入れたときだった。

バチーン!!

すごい音が響いた。

見ればーーーー

モンドが数メートル吹っ飛ばされて階段の下まで転げ落ちていた。

「兄上!!!!!!!」

「アンディ!」

キンキンに響いたのは美女の声。それに応ずる弱々しいモンドの声。先ほどまで見せていたキラキラオーラはどこかへいっている。

「な、なんで僕を殴るんだい、愛しき妹よ……」

イーディスとハルカは呆気に取られてモンドと美女二人の顔をキョロキョロ見比べた。

モンドがぼうっとした顔なら、妹は絶世の美女だった。

赤みがかったカールした黒髪を綺麗に結い上げ、その髪の色にピッタリなドレスを着ている。フリフリの、レースとサッシュだらけの、ドレープのたっぷりした、美しい本物のドレスだ。

その美女が顔を見るなりモンドをひっぱたいたので、イーディスさえも呆気に取られた次第である。

アンディはキョトンとして自分の手と兄であるモンドを見比べた。

「まあアタシったら。兄上がお外に出ると決まってロクでもないことになるから、つい反射で手が出てしまったわ、オホホ……やあねえ、もう」

「ハハハ、アンディ嬢、恥ずかしがることはないさ。なぜなら俺たちはさっきーー」

クール・シトラスが歯を光らせながら親指で背後を指しーー

「やめろクール・シトラスぅ!!」

モンドの悲鳴が響き、

バチーン

またしてもキラキラした人が吹っ飛んだ。

イーディスとハルカは硬直したままそれを見送る。

「で、何をしたの? この人たちは誰?」

あらためてアンディがハルカたちを見て問いかけた。モンドが後ろめたそうに、

「アンディ、許してくれ。その子たちはーー」

「殿下。お叱りを受けるなら俺に。このクール・シトラスが白状します」

「おおお、すまない。乳兄弟をこんな目に合わせるなど当主として僕はなんて至らないんだ!」

「兄としての威厳の問題じゃね?」

キラキラマントの二人が盛り上がっているところに水を差すイーディス。

「で、今度は何をしでかしましたの、にいさん?」

「うわこわっ! 目が笑ってねえ!」

イーディスが本気で怯えている。

「ひいいい!」

震え上がるキラキラマントたち。

ちなみにこの間ハルバートを持っている見張りはビクともしない。どうやら日常茶飯事のようである。

「えー、ゴホン。そこの御令嬢方はイーディスとハルカと申す者。イスカゼーレの陰謀を阻止すべく、救出して参りました」

クール・シトラスが膝立ちで礼を取りながら言った。

するとーー

「クックックッ……」

「な、なにアンディちゃん。笑うほど怒ってる? ねえ怒ってる?」

モンドが怯えて尋ねる。

「オーッホッホッホッ!!」

「絵に描いたような高笑いだわ」

ハルカが言った。

「笑わせてくれるわね! 役立たず・=デ=ラ=モンロー!!」

「こいつすげえ性格悪いぞ!」

イーディスが言った。

しかし言われた当人はまったく堪えてないもよう。

「お、怒ってるの?」

「怒ってる? いいえ反対よ! ついに! ついに掴んだわよ! イスカゼーレめ、覚悟してなさい!」

拳を固くかためて、言うだけ言って絶世の美女は奥へ下がってーー

「で、この方たちは何?」

戻ってきて問いかけた。

ハルカとイーディスは顔を合わせて、お互いに首を振ったのだった。


つづき
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。

1/4〜1/7までは毎日更新します!


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