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hoshikuzu
2024年6月15日 03:21
新しい季節はいつも、匂いからやってくる。玄関を出ると、昨日はなかった空気に満ちていて。雨上がりみたいにムッとした草の匂い。誰かが去ったあとの日焼け止めの残り香。早起きした夏休み、足を踏み出した朝の香り。信号待ちで肌が焼けていくのを感じていると、何かが腕に留まった。とっさに振り払ったそれは、ぽいとアスファルトに放り出されたフタホシテントウだった。ざらついたコンクリートの上を、ちいさな