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hoshikuzu
2023年3月30日 20:18
足元を見ると、つくしがにょきにょき、スギナに囲まれ揺れていた。昔は春になると、どこの空き地にも採りつくせないほどのつくしが伸びていたっけ。食べられる野草摘みというのは、味にかかわらず、宝探しのようだった。ビニール袋いっぱいのつくしを抱えて家路につく。すべてのはかまを取り終える頃、爪先は黒く染まり、つくしの山はずいぶんこじんまりして見えた。母の手によって、さらにぺしゃっとほんのひと握りの
2023年3月13日 02:14
ここ数日、堰をきったように草花が手を伸ばしはじめた。実家の庭先にあるカシワバアジサイも、この季節になるとささやかな愉しみをくれる。今日立ち寄ってみると、しなる枝先に例のモフっとした新芽が現れていた。触りたい衝動に駆られ、ついつい毎年こっそり指先でなぞってしまう。犬猫のああいった毛量感とはまた違う、なんともひかえめな毛並み。新芽の若々しい黄緑に、霜が降りたようなやわらかい色彩。色鮮や
2023年3月2日 02:37
春の雨はゆっくり落ちる。なんとなく、そんな気がする。ときどき、まばらに、大きな雨粒のぽと、という音が混じる。それで今なぜか、中学生の頃、部屋から見ていた雨の庭を思い出した。着ていたのは母のお下がりのワンピース。グリーンのタータンチェックで、ペコペコとしたサッカー生地。袖には細いフリルが付いていた。半袖だったから6月か7月かもしれない。とても、心地いい雨の日だったことを覚えている