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【日本神話⑪】海の神と黒歴史あり

 海神の国から戻って兄・海幸彦(海佐知毘古=ウミサチヒコ=火照命=ホデリノミコト)を屈服させた弟・山幸彦(山佐知毘古=ヤマサチヒコ=火遠理命=ホオリノミコト)は、現在の宮崎県宮崎市の青島に宮を建てて暮らしたそうです。

山幸彦の宮・青島

海神の国から帰った山幸彦が上陸したといわれる岩場の海岸。「鬼の洗濯板」と呼ばれている(2014年1月1日撮影)

 訪問時の2013年の年越しは宮崎市で車中泊となりました。紅白歌合戦も車のTVで観てました。宮崎県内は北から南まで、日本神話ゆかりの地が多く、夜遅くまで各地を訪ね、日暮れから旅の距離を稼ごうと運転しているうちに、宿探しが面倒になってしまいました。そして2014年を迎えて早朝、山幸彦の宮「青島」にやってきたわけです。朝日が眩しいですね。

山幸彦が宮を建てたといわれる青島(奥)。手前は元旦の寒中行事を行う空手団体(同日撮影)

 なんぼ「日向の国」と呼ばれようと、「南国の宮崎」といわれようと、さすがに真冬の元旦の海は冷たいでしょう。写真の通り、地元の空手団体が寒中行事を行っていました。「心頭滅却すれば火もまた涼し」の逆という感じでしょうか?気合が入っていましたね。

島内の青島神社へ続く参道(同日撮影)

 青島は島全体が青島神社の境内です。島内には亜熱帯植物が繁茂しており、日本ではなく東南アジアのジャングルの様相でした。まさに南国情緒あふれる島です。なんか、別の国にいるみたいな感覚になりました。

青島神社。絵馬が飾られたトンネル(同日撮影)

 境内には絵馬が飾られたトンネル「祈りの古道」があるのですが、ご覧の通りキラキラ。年末年始だけの特別仕様でしょうか?写真映えしますね。クロスフィルター入れて撮ってみました。そこそこいい感じに撮れましたね。

青島神社の本殿(同日撮影)

 そして本殿に到着。お正月だけあって大変な賑わいでした。神社にはヤマサチヒコこと火遠理命、妻の豊玉姫、そしてヤマサチを助けた塩椎神(シオツチノカミ)の3神を祀っています。3神の神話に因み、縁結び、安産、海上交通安全といったご利益が授けられるそうです。

青島神社の元宮(同日撮影)

 島の周囲は約1キロ。現在は陸と弥生橋で繋がっていますので、容易に上陸できます。神話を脇の置いて話すと、元宮の辺りで弥生式土器や獣骨が発掘されているようです。その頃から、すでに祠のようなものがあり、弥生人の祭礼の場だったと考えられています。

豊玉姫の産屋・鵜戸神宮

宮崎県日南市の鵜戸神宮の楼門(同日撮影)

 話は神話に戻って・・・豊玉姫が懐妊したと知ったヤマサチヒコは、鵜の羽で屋根を葺いた産屋を建てることにしました。それが日南市の鵜戸神宮といわれています。いよいよ豊玉姫が出産しようとするとき「私は異郷の者ゆえ、出産時には本来の姿に戻りたい。だから産屋の中は絶対に見ないでほしい」と告げました。

鵜戸神宮本殿のある洞窟へ続く参道。右に亀の大岩(同日撮影)

 「絶対に見てはいけない部屋」「開けてはいけない箱」「振り返ってはいけない道」「食べてはいけない果実」・・・押すなよ!絶対に押すなよ!・・・世界共通の「振り」ですね。これで平穏無事に済んだ試しはありません。人間は民族など関係なく、古今東西でそんなに違わないことの証明でもあります。人はいつでも失敗する・・・。

海に面した崖の洞窟内に造られた鵜戸神宮の本殿。竜宮城のよう(同日撮影)

 ヤマサチヒコが産屋を除くと、巨大な和邇(ワニ、鮫のこと)になって苦しみもだえる豊玉姫の姿を見てしまいました。子は無事に産まれましたが、その姿を見られた豊玉姫は恥じて、故郷である海神の宮へと帰ってしまいました。生まれた男児は鵜茅草葺不合命(ウカヤフキアエズノミコト)と名付けられました。鵜戸神宮の祭神はウカヤフキアエズであり、初代・神武天皇の父親です。

鵜戸神宮の亀の大岩。背中の縄の円内にコインが乗ると願いが叶う(同日撮影)

 やはり見てしまったヤマサチヒコ。開けてはいけない「玉手箱」ではなかったのですが、やってしまいました。でも大丈夫。世界中の神話の登場人物たちが同じ過ちを犯しているのですから。アダムとイブも、ロトの妻も、パンドラも、琴座のオルフェウスも、ギルガメシュの盟友エンキドゥも、浦島太郎も・・・世界中のご先祖様も。人は皆、悲しい生き物ですね。

青島の海岸から眺める初日の出(同日撮影)

 天皇家のご先祖様も失敗したんだし、世界の神様や聖人たちも例にもれず失敗だらけ。先人の失敗談から学び、自分はそうはならないように・・・とは思いますけど、こうした世界各地の神話の失敗談を読んでいると、やはり完璧なものってないのだなぁ~と思いますね。大なり小なり人は必ず失敗するもの。本人にとって悲しいことも、人に非難されることもあるでしょう。悪意ある犯罪のような極端な例は除くとして、再起厚生の機会は必要だと思いますし、寛容な心を持っていたいとも思いますね。

 直接の被害者なら怒り心頭に発するのも分かるのですが、だいたい、自分の生活に関係のない誰かが何を失敗したとしても、他人のことを言えるほどの聖人君主な人もいないでしょう?あなたもそうでしょう?失敗を認めない人、その過去の記憶を改ざんして無かったことにしてしまう恐ろしい人も現実にいますけどね・・・そんな教訓をもって開き直って何でもあり、というのもいけませんが、神・人の世に黒歴史あり・・・ですかね???

青島神社↓

鵜戸神宮↓

表紙の写真=宮崎市の青島海岸で眺める初日の出(2014年1月1日撮影)

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