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十一月の星々(140字小説コンテスト第3期)結果発表

part1 part2 part3 part4 part5 結果発表

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

十一月の文字は「保」。

「月々の星々賞」として一席、二席、三席の3賞+佳作7編(計10編)を選出しました(応募総数441編)。ご応募いただきありがとうございました。

選評(評・ほしおさなえ)とあわせて受賞作は後日にhoshiboshiサイトへも掲載します。
また、優秀作(入選〜予選通過の全作品)は雑誌「星々」(年2回発行)に掲載されます。

一席、二席、三席の方には特製の賞状(ほしおさなえさんによる手書きのお名前入り)を、さらに一席の方には図書カード(1000円分)を贈呈いたします。

十二月の星々(今月の文字「調」)も12月31日まで募集中ですので、引き続きのご応募をお待ちしています!
(投稿方法は以下のリンクをご覧ください)

受賞作

入選

武川蔓緒 @tsurutsuruo
犬が小さくなってゆく。ハンドバッグにいれ散歩にゆく。船に乗っても、島に着いても、空は夕闇の儘で、道は瓦礫が続くばかりで、犬を放せない。ホテルに泊る。私だけらしく、客室フロアに光はない。犬をバッグから出し。眼と鼻の三角の星座とともに廊下を駈ける。常備灯が保つ迄。犬が消えてしまう迄。

冨原睦菜 @kachirinfactory
冷蔵庫の保存容器は、妻がそれぞれの中身をメモ書きしてある。「茹でほうれん草」「苺ジャム」「豚の角煮」「ひじき」。その中に「秘密」というものがある。試しに開けようとしたが、背後から「それは秘密よ」とゾッとするような声で囁かれて以来、俺は冷蔵庫を開けても、それは見ないようにしている。

へいた @heita4th
インタビュー記事を見るとつい年齢を確認してしまうようになった。何歳にあれをやり、何歳にこれをもらう。その『何歳』を自分がどんどん追い越していく。ぱちんと音が鳴って顔をあげる。お湯が沸いた。お茶を入れる。お茶なら上手にいれられる。そうして、バランスを保つ。何もできないままの自分の。

佳作(7編)

彩湖あにぃ @ayako_annie
喜怒哀楽。倉庫には、ヒト、という生物の感情が保管されていた。怒りはよく檻を突き破って逃げ出すので大変だ。悲しみが地面付近で動かない時は、喜びをふりかけてふわんと浮き上がらせる。
これらを一つの体に同居させていたなんて。彼らが住んでいた地球は、さぞ賑やかで、孤独な星だったのだろう。

石森みさお @330_ishimori
家の軒下で保護した仔猫は、何かにつけてとろくさい子だった。ご飯を食べるのも、遊ぶのも、とろとろと眠そうに目を細めてのんびりのんびり、何をしても日向ぼっこのようにのどかだった。十五年と少し、彼はそんな風にとろとろ生きて、もう、後はうんととろくさくていいよ、と家族の誰もが思っている。

のび。 @meganesense1
韮崎家の井戸には神がいる。神は時々「まだ?」と聞く。家の者は「まだ」と答える。問いの答えを保留にしているのだ。その問いを知る者はもういないが「まだ」と答える限り家は安泰だと伝わってきた。何百年と韮崎家は栄えたが、ある時の当主が酒に酔い「いいよ」と答えた途端、人も家も消え去った。

富士川三希 @f9bV01jKvyQTpOG
夕方になると決まって熱を出す。子どもが乗る自転車のタイヤがカラカラと啼く。腹を見せながら通過する飛行機がごおぉと唸る。近所の完成間近のアパートが身を削られたように叫ぶ。開けた窓から音が雪崩れ込んできて思考する頭を押さえつけるが、また筆を執り綴り始める。こうして日々を保っている。

二度なかず @Futatabi_Nakazu
保存容器の店だった。西陽が棚にぎっしりの硝子、琺瑯、アルミや何かに反射して、つるりと光ったのが私の目を焼いた。ああ、これなんて素敵だけれどいったい何を入れたものかな。店主は白い髭を撫でつけ、では容器のための容器を買ったらよろしいと、算盤を弾いた。翌日から、私は容器屋の主となった。

MEGANE @MEGANE80418606
三か月前、引きこもりの私が怪我をした星を保護するなんて、と不安だった。けれど、今夜、星は夜空に帰っていく。朝の光を浴びるため、毎日近所を歩いたことも、空に浮かぶ体力をつけるため、公園で共に運動をしたことも、夜、ホットココアに金平糖を浮かべて一緒に飲んだことも、全部全部忘れないよ。

あめ @QzJe8ZdUJCy9Miw
冬の水を触る時、骨があった。「あれ?何の生き物だろう。」と私の両手は水の存在のカーテンを開く。すると龍の様な骨がギッシリ詰まっている。保持されていく冷たさは、この骨が正体だったと思え、それから私は水を飲む時、良く噛んで飲むようにしている。水は肌に当たると龍が這った様に赤くなった。

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