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「ブッタ」で鎮まるひきこもり

図書館に行って「なやんでもいいよとブッタは、いった。」という本を読んできました。

※社会との繋がりを持たないひきこもりにとって、「図書館」はディズニーランドやユニバーサルスタジオと同じくらい夢と刺激に溢れた行楽地です。

ブッダのパロディで「ブッタ」が登場します。

「そういえば、最近は自己啓発本を読んでいないな……」と気付いたのがきっかけで、その手のコーナーを探し回っていた際にたまたま目に留まった一冊です。

よく見てみると、この絵柄。私にとっては懐かしいものでした。

本書は「ブッタとシッタカブッタ」というベストセラーにもなった人気シリーズの総集編に当たるらしいのですが、「ブッタとシッタカブッタ」と言えば私が中学生の頃、図書館に居た周りの生徒たちが読んでいるのをよく見掛けていた本です。

「そんなにみんなが読むなら……」ということで私も一冊だけ手に取ってみました。可愛いブタのイラストを用いて、仏教の説話が親しみやすく描かれているであろうことは感覚でわかりました。4コマ漫画の形式でありながら、恐らくどれも内容が深いということも。しかし、当時の私には今一つ面白さがわかりませんでした。

「退屈だ。こんな刺激が無いのを読むくらいなら、恐怖あり、涙ありのミステリー小説を読んだ方が何倍も良いじゃないか」と思って半分もページを捲らない内に棚に戻して、身を翻して当時流行だった山田悠介先生の本を探しに行ったものです。

ところが今改めて手に取ってみると、一つ一つの話が本当に心に染みてきます。長年のひきこもり生活の中で無知無学なりにもようやく体感で見出せてきたこの世界の法則性、趣味の健康情報の分野で登場する「東洋医学」の話とも綺麗に重なる説法が本当に多いこと……。初めから終わりまでウンウン頷きながら読んでいました。

本シリーズをまだ知らないという方へ向けて少し例を上げてみますと……

・「会社の中では幾ら偉い人でも、外ではただのブタ(生物)に過ぎないという話。(外でもいつもの調子で偉そうに命令しようとして、獣に踏みつぶされる)」

・過去に逃したウサギ(獲物)のことで後悔したり自責を続けているうちにクヨクヨして、今すぐ近くに居るウサギの姿が目に入らず、チャンスを逃し続けているライオンの話。

・大学受験、結婚、仕事の昇進で悩むそれぞれ3匹のブタが「でも自分の人生にはこの道しかないんだ!」と汗を掻きながら一本のレールにしがみ付いて進んでいく姿を、レールに関わらず自由に草原を走り回っている周りのブタや生物たちが不思議そうに眺めている話。

こういった仏教のエッセンスを巧みに活かした風刺が、コミカルに展開されていくシリーズです。

中学生の頃はこれを必死に読んでいる同級生らの気持ちがわかりませんでしたが、今になってようやく私も彼らに追いつけた気がしています。一体何周遅れなのやら……(笑)

「ひきこもり」という境遇に陥れば社会との隔絶が起きる分、社会という小さな枠組みだけには留まらない、宇宙や自然法則までを含めた「現実世界」の観察、そして自己に対しても深い内観の時間が齎されてくるものです。

思えば、私がこれまでに関わってきた長期ひきこもりの方々は、言葉の端々や空気感から感覚で「仏教」を想起させてくるような、諦観、静けさを帯びていたものです。こんな話を書いている私自身もまた、周りから見れば幾らかそうかも知れません。

オノ・ヨーコ氏の「ひきこもりは現代の禅僧侶かも知れない」という言葉が度々思い返されます。

「どうすれば安心できるのでしょうか」と相談を持ち掛けてきたブタに対してブッタはこう言います「あなたはどういう時に安心するかね?」「うーん…うちに帰ると安心します」「だったら心をうちに帰してあげなさい」「心のうちって?」「そりゃあなたに決まってるでしょう」。作中ではこのように説かれています。

私はこういった説話の数々と改めて向き合っている内に、不意に風の止んだ湖面の如く、心がすっと鎮まる感覚が起きました。

ですから、人生に行き詰まりを感じたり、道に迷っている同志たちにも、一旦「うちに帰ってみる」ことをオススメしておきたいです。

私も含め、ひきこもりでありながらも心だけはあっちこっちに外出し、収拾がつかなくなってしまっている人は意外と多い気がしています。







このサポートという機能を使い、所謂"投げ銭"が行えるようです。「あり得ないお金の使い方をしてみたい!」という物好きな方にオススメです(笑)