英語という言語特性(Netflix配信「ONE PIECE」を観て)
Netflix配信ドラマ「ONE PIECE」を観た。
アメリカ製作とはいえ、日本が誇るIPが世界中で話題になっているのは嬉しいこと。
誰かが話題に挙げていたが、漫画『ONE PIECE』が週間少年ジャンプで連載開始したのは1997年7月のこと。実に26年の歳月が流れ、既刊106巻が発売中。配信ドラマは、決して原作を忠実に再現してはいない。とはいえ、四半世紀を経て、漫画家・尾田栄一郎の世界観が今なお通用することの凄さを感じる。
僕は編集者という立場でもあるので、『ONE PIECE』がここまでディストリビュートされて広がっていることに、もはや敬意しか感じない。(多少成長は鈍化しているとはいえ)世界最大のプラットフォーマーであるNetflixをパートナーに据えて、ますます『ONE PIECE』が無敵の盛り上がりを見せていきそうだ。
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僕が鑑賞して、正直な感想は「新鮮だった」である。
漫画のアニメ化や実写版には賛否両論を避けることはできない。まして海外作品の実写化として翻案されてしまうことで、コアファンのネガティブな評価はある程度織り込まなければならなかっただろう。(それを打ち消すために、尾田栄一郎は製作総指揮として作品づくりに関わっている。『THE FIRST SLAM DUNK』で成功した井上雄彦の関わりと同様である)
僕はそれほどのファンではない分、言語が英語になるだけでだいぶ印象が変わると感じた。日本で馴染みのある漫画のはずだが、感覚としては、普通に「海外作品」を鑑賞しているような程よい距離感があった。
日本語と違って、英語は「主語と述語がセット」で発せられる。
おれはくやしい。
あいつを倒す。
海賊王になる。(そのために〜〜をする)
日本語だと主語と述語の距離が空いている分、ちょっとしたワンシーンをかますことがある。だが主語と述語が近くにあることで、物語はテンポ良く展開されていく。
実写化「ONE PIECE」が端折りすぎ、という意見もあるようだ。もっともだと思うし、それは予算だったり映画というフォーマットだったりの要因で致し方ない面もあると思う。しかし実際には、言語の違いというのも大いに関係したのではないだろうか。
「主語と述語がセット」だからこそ、すぐに悪者をやっつけなくてはならなかったのだ。(とはいえ、水中での活劇なしにアーロンを倒してしまったのは、ちょっと消化不良だったなという気がする)
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なんといっても、Netflixオリジナルの配信作品だ。
『ONE PIECE』の世界観は隅々まで保ちつつ、それでいて「ゴムゴムの銃」とかの演出も安っぽい感じは全くない。
取り立てて「怖すぎる」という場面もない。昨今の漫画は、少年向けとはいえバイオレンスに振り切ったシーンも多いものだけど、小学生くらいであれば十分楽しめる出来になっている。
大人も子どもも程よく楽しめる、良きバランスになっている点は評価したい。(とはいえ戦闘シーンも多めなので、未就学児には若干ハードルがありそうだが)
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シンプルに描かれているからこそ、改めてルフィの価値観を再認識することができた。つまり彼は、
「いいやつと仲間になる」
「夢を追いかけたい」
のふたつのみを寄る辺にして、航海を続けている。
「日本代表の最強メンバーで野球をする」
「WBSで世界一になる」
大谷翔平にも通ずる、普遍的でスタンダードな価値観だ。
実に普遍的な価値観であり、スタンダードだからこそ、しっかりと胸を打つ。僕はひとりで観たけれど、5歳の長男と一緒に鑑賞しても良かったかもしれない。
ジェンダーの問題だったり、容姿いじりのようなシーンだったりは、ほんとど見受けられない。この辺はさすがNetflix、キャスティングも含めて、全方位に配慮されていると感じた。(例えば実写版のウソップは鼻が長くない。実写に寄せるのでなく、キャストの自然体な姿を優先したのだろう)
シーズン2の公開は、全米の脚本家ストライキの影響次第だったりもするだろう。出だしは好調とはいえ、どれくらいヒットするかによって続編製作の有無も変わってくるはずだ。(願わくば、シーズン1と2はセットで撮影していてほしいなとも)
ただ少なくとも、シーズン1を鑑賞した多くの方にとって、シーズン2は待望の存在になったことは間違いない。麦わらの一味、キャストが全員素晴らしいので、彼らのチームワークをもっと観たいところ。物語よりも、彼らの化学反応が観たいなっていうのが、正直なところかもしれない。
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