未来は、過去を変えられない(映画「ザ・コール」を観て)
無性にチョン・ジョンソさんの演技が観たくて、Netflix配信作品「ザ・コール」を鑑賞しました。
「バーニング 劇場版」でも強い印象を残したチョン・ジョンソさんが本作で見せるサイコな振る舞いは凄まじいの一言。「ああ、たぶんこの人を殺しちゃうんだろうな」と思ったら、その通り、殺してしまう。
演出陣の思う壺ともいえますが、こういう俳優が優れた作品には欠かせないんだなと改めて感じました。
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時間を超えて、電話でつながることになった二人。父を亡くした主人公・ソヨン(演・パク・シネさん)と、養母に虐待を受けているヨンスク(演・チョン・ジョンソさん)の温かい交流は、徐々にすれ違い、最終的には憎み合う仲になっていきます。
「未来は過去を変えられる」と言われますが、本作は「逆」です。
幸せを取り戻して生活するソヨンに対する嫉妬からヨンスクは、過去から凄惨な嫌がらせを行ないます。(この作品では「過去を変えると未来も変わる」という前提で話が展開していきます)
義母から「あなたはたくさんの人を殺す」と予言されていた通り、ヨンスクはサイコパスなシリアルキラーへと転身してしまいます。息をはくように嘘をつき、躊躇なくソヨンを追い詰めていく様子に、ソヨン同様恐怖してしまうわけですが、それは物語の筋が良いからでしょう。
「自分だったら、ヨンスクの殺意から逃れることができるか」「どうやってヨンスクを逮捕に追いやることができるか」
ソヨンの思考を追い、ソヨンもそれなりに考えて行動するのですが、ことごとくヨンスクが上をいくわけで。未来は過去を見通せるけれど、変えることはできない。そのもどかしさが痛いほど伝わってきます。
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作品で中心に置かれているのは「電話」です。
電話の機能を深掘りしていくと、
・物理的な「もの」である
・鳴らす人と、鳴らされる人がいて成立する
・電話は、両者どちらでも切ることが可能
・切られてもかけ直すことができる
・かけ直された側は、出ることもできるし出ないこともできる
・出ないと決めても、電話が鳴るのを止めることはできない(電話線を抜かない限り)
・固定電話の場合は、その家の中でしか使うことができない
みたいな感じでしょうか。完全に自由でなく、電話という機能的な制約がある分、その制約の中で何ができるかということを考える助けになるともいえます。
自分だったら電話というモチーフをどのように使うか。そういった思考訓練にもなる作品だと感じます。
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そういえば、「夏といえばホラー」ですよね。背筋が寒くなるという意味で、確かにこの作品は真夏に肝を冷やすのにピッタリです。
僕は正直いってスリラー、ホラーの類いは苦手なのですが、スリリングな展開に心を奪われ、何度も目を細めながら鑑賞していました。(まあ、スリラーってそういうふうに観るものですよね)
(Netflixで観ることができます)
素晴らしい演技だったチョン・ジョンソさん、主演映画の「恋愛の抜けたロマンス」は2022年7月8日から劇場公開しています。チョン・ジョンソさんの魅力が詰まった、気持ちがスッと軽くなるようなラブコメディで、こちらもお薦めです。
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