君に、戦う理由はあるか(瀧本哲史『2020年6月30日にまたここで会おう』)
戦う理由が「お金を儲けたい」「異性にモテたい」「権力を握りたい」でも良いけれど、その欲求(欲望)に対して自分がどれだけ忠実になれるかは見極めた方が良いかもしれない。
あくまで欲求(欲望)だから、それらは現時点で「ない」状態なのだろう。ただ少なくとも、1億円手元にあって使い道を考えられない(大した使い道を思いつけない)ようだったら、その人にとってお金は大したモチベーションファクターにならない可能性が高い。
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何をするか、ではなく、何故するのか。
2019年8月に47歳で亡くなられた瀧本哲史さんの著書『2020年6月30日にまたここで会おう』には以下のようなエピソードが紹介されている。
僕の投資先に「オトバンク」っていう、オーディオブックの会社がありますけど、本を音声化するアイデアはどこにでもあって、だいたい10社ぐらい、オーディオブックを手がける会社がありました。(中略)
だけど彼(注:オトバンク創業者の上田渉さんのこと)は、失敗したときの経験に学んでいたというのもあったし、オーディオブックをやる、強い動機があったんです。
彼のおじいさんが緑内障で本が読めなくなって、とてもかわいそうだと思っていたのに加えて、自分も勉強するときに本を読み上げて、録音して聴き返すことでようやく成績が上がったという成功体験がありまして。そんなんだから、「この僕がオーディオブックをやらなくて、誰がやるんだ!」みたいな、とてつもない信念を持っていたんですね。(中略)
アイデア自体はコモディティで競合が超たくさんいても、創業者にどうしてもやるべき理由があったから、同じアイデアを話しても、競合ではなく彼のところに優秀な人々も集ってきたんです。
(瀧本哲史『2020年6月30日にまたここで会おう』P171〜173より引用、太字は私)
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瀧本哲史さんが放つ言葉には、目眩がするほど強い求心力がある。
noteタイトルにも引いた「戦う」という言葉もそうだ。
生きるでも、起業するでも、意思決定するでも、文脈には正しく符号する。しかし瀧本さんにとって人生とは、fightでありcombatでありstruggleだったし、その姿勢を(とりわけ)若い世代に求めたかったのだと思う。
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政治に関する言及は本筋ではないので最小に留めるが、この数年間、僕らは不感症になるほど、言葉が空回りする政権の影響を受けてきた。
以下の記事で三浦瑠麗さんは「派閥を背負っているわけでもない彼ら若手の集合的な動きはしょせんコップの中の嵐」「戦うときは自らの闘いをせねばなりません」と自民党若手に対する苦言を呈している。
三浦さんの言葉を借りるまでもなく、今に始まったことではない茶番の数々に僕は呆れている。それを「戦いっぽい」ように見せて動いている(動いていた or 動いている風だった)人たちのことも決して忘れないだろう。
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「戦う」という言葉を、瀧本さんはマイルドに言い替えてもいる。
一般的にいえば、30ぐらいになったら自分の人生のチップをどのへんに置けばいいかって、見えているはずですよね?もし見えてないとしたらヤバいですよ、ってことですかね。それを先に決めることをおすすめします。40ぐらいになっても人生の無限の可能性を追求してたりしたら、かなり痛いやつじゃないですか(笑)。
(瀧本哲史『2020年6月30日にまたここで会おう』P166より引用。太字は私)
瀧本さんは笑っているけれど、僕には笑えそうにない。
ただ僕が当時の様子を想像すると、瀧本さんの目は笑っていなかったのではないだろうか。
自分の人生に、チップというものがあったとして。
手持ちのチップの量は限られているし、容易に増やしたり減らしたりすることはできないわけで。
そのチップをどこに置くか。いつ置くか。どれくらい賭けるか。
それは紛れもなく「戦い」だと言えるだろう。
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人生は、今も、現在進行で動いている。
「あまり焦らせないで」と文句を垂れる若造な僕に対しても、瀧本さんは笑ってくれるだろうか。
瀧本さんに会えるその日まで、胸を張れるような生き方をしたい。
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