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弁護士・雲野六郎が鳴らした、職業人への警鐘(ドラマ「虎に翼」より)

NHK連続テレビ小説「虎に翼」を、毎日楽しみに観ている。

多くの視聴者と同様、主人公の寅子(演:伊藤沙莉)の一挙手一投足が興味深い。キャラクターも一人ひとりが「キャラ立ち」しており、共感&好感を抱けるのも人気の理由だろう。

そんな朝ドラの第36話に、映画「茶飲友達」で主人公を好演した岡本玲さんが登場した。おそらく役柄的に、1話のみの出演だったが、存在感は圧倒的。“悪女”である満智を見事に演じていた。

第36話は、こんなストーリーだ。

夫を失った満智が、義両親に子どもの親権を奪われそうで困っている。「困った女性を助けたい!」と思った寅子は、満智の弁護を引き受け、法廷で義両親と対峙する。そして裁判の結果、クライアントである満智の利益(親権)は守ることができた。だが実は、寅子が「真実」だと思っていたことはほとんどが「嘘」であり、もしかしたら本来親権は義両親の手に渡るべきものだったかもしれない……真相を知り、呆然と寅子が立ちすくむという筋だ。

そんな寅子に、弁護士事務所の代表である雲野六郎(演:塚地武雅)が厳しく諭すシーンが印象に残った。

これは明らかな過失。失態だ。
私も若い頃に同じ過ちをおかしてね。調書の読みが足らず、有罪の証拠となった自白が、強要されたものであった疑いに、判決が確定したから気付いた。冤罪であったかもしれん。未だに悔やみ続けている。君の失態が、誰かの人生を狂わせたことを忘れてはいかん

(ドラマ「虎に翼」第36話より引用)

寅子をフォローするわけではないが、寅子も懸命になって弁護にあたったと思う。

寅子が生きた時代は男性優位の社会であり、女性の権利が著しく損なわれていた。「女性のために」と仕事に臨む寅子は、自分自身の志を果たしたいと考えていたのだろう。また駆け出しの「女性弁護士」だった寅子にとって、裁判で勝利して実績を残したかったと思っていたに違いない。

そんな中で、真実とは異なる弁護によって、本意でない「判決」を導いてしまったのだ。

もちろん満智の弁護を務める中で、クライアントの利益を第一に考えなければならないのは当然のこと。実際に、真実と異なる弁護によって利益を得ようとする弁護士もいるのだろう。

また弁護士に限らず、組織で働く人間の多くは、「会社に貢献する」ことを求められる。会社の業績が悪化すれば、「リストラクチャリング(restructuring)」の名目によって、取引先への値下げ交渉や、人員カットを厭わず行なわなければならない。

また、僕のようにライターとして働く人間にとっても、企業の要望をそっくり受け止めなければならない事情も出てくるだろう。取材を重ねて、「ん?これっておかしくない?」と感じていても、企業のPRのために事実を隠し、“かっこいい”企業であると書き切らなければならない。

まだ僕は経験がないが、取材先の企業が「実はひどい働き方を従業員に強いていた」なんてこともあり得るはずで。より良く見せていたのに、事実と異なる会社だった。そんな“悪事”に加担していたと知ったとき、僕は寅子のように真摯に反省することができるだろうか。(そもそも、そういった“加担”を回避することはできないだろうか)

何をもって、「失態」と見做すかは、当人の判断にもよる。

だけど、雲野弁護士が言うように、「自分の行為が『誰かの人生を狂わせている』かもしれない」ことを忘れてはいけない。

この類の話は、すぐに何か変えられるというものではない。ただ、ちょっとの危機意識やリスク管理によって、事前に見極められることも少なくないはずだ。

そして何より、寅子のように常に真摯な態度で仕事に臨むこと

楽な仕事なんて、ひとつもない。「真実はいつもひとつ」とコナンのように言い切ることはできないが、真実を求めて仕事に臨みたいと改めて思った次第だ。

──

米津玄師さんのオープニング曲「さよーならまたいつか!」も良いですね。映像も、アニメーションを効果的に使っていて、とてもかっこいいです。

オープニングは誰がディレクションしているのか。分かったらnote末尾のハッシュタグにも追記します。

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