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背表紙の魅力

電子書籍よりも、紙の本を好む。

確か武田砂鉄さんだったと思うけれど、「本は、紙で読みますか?電子書籍で読みますか?」という質問をされたときに、「その二択って、そもそも間違っている。本とは紙のものを指すんです」といったことを話していた。

僕も色々な理由があるけれど、やっぱり紙の本が好きだ。

電子書籍だと、どうも読んでいる気がしない。重量感のある紙の本を携え、人差し指と中指で読んでいるページを押さえながら、親指で次のページへとめくっていく。「ひゅっ」という音がする。

この「ひゅっ」は、ときどき音が変わる。

難解な本を読んでいるときは、「ひゅっ」に、妙なノイズが入る。毎回違う「ひゅっ」が流れ、テンポ良く読書が進まない。

好きな本を読んでいるときは、「ひゅっ」が小気味良い。どんどん先のページへと進んでいく。時間を忘れ、本の世界に没頭する。

どちらの方が良いというわけではないけれど、「ひゅっ」こそが読書における醍醐味といっても過言ではない。

*

そんなことを書きながら、ふと本棚を眺めた。

本棚には、かつて読んだ本、読みかけの本、新しく購入した本がドカッと並んでいる。古い本もあれば、新著もある。「なんでこの本を買ったのだろう?」というものもある。だが、いずれにせよ、僕が何らかのきっかけで購入したものだ。

その背表紙には、色々なヒントが潜んでいる。

作家、編集者、ブックデザイナーたちが抱いた、「書きたい」「売りたい」「読んでほしい」など、微妙なニュアンスの違いがあって。それらをひとつの本として内包し、背表紙に仕掛けたメッセージが放たれているのだ。

それらと、僕は生活をしている。

原稿を書きながら、企画書を作りながら、育児をしながら、本棚を眺めている。

背表紙に刻まれた言葉に、デザインに、触れている。

背表紙の魅力はひとことでは語れない。だけど確実に、僕の生活に寄与している。これからも本棚には、新しい背表紙が加わるだろう。新しい背表紙が加わるたび、僕という人間も、少しだけ変わっていく。

その過程を楽しめるのが読書であり、紙の本の価値なのだ。

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