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約20年ぶり、完全新作の「機動戦士ガンダムSEED」

機動戦士ガンダムSEED、約20年ぶりの完全新作。

Amazon Prime Videoで配信されているスペシャルエディションHDリマスターをしっかり鑑賞し、ようやく「新作」に辿り着いた。

「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」
(監督:福田己津央、2024年)

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SEEDに限らず、ガンダムは戦争だけを描く物語ではない。

「戦争なんか、したくない」
「なぜ戦いを強いられなければならないのか」

そんな問いから始まり、主人公たち(子ども)は戦争に巻き込まれていく。ガンダムSEEDの場合は、幼少期の友人同士が敵味方に分かれ、対峙しなければならないところから物語が始まる。

SEEDには「種」という意味がある。

主人公のキラ・ヤマトを始めとする「コーディネイター」と呼ばれる遺伝子操作がなされた人たちと、遺伝子操作をしていない「ナチュラル」と呼ばれる人たち。彼らの間で繰り広げられる、不毛な争いの連鎖が、戦争の正体だ。

「戦争を終わらせなければならない」

このような使命感を実はみなが携えていた。なのにSEEDでは一向に戦争が終わる気配がない。「戦う」立場を選んできたキラ・ヤマトがそのことに苦悩しているのが、「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の根底にある。

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新たに出てきた「敵」は、ファンデーションと呼ばれる独立国だ。

台中問題で揺れる台湾や、NATO加盟を臨む北欧諸国のような存在を思わせたが、内実、程遠い邪悪さを孕んだ国だった。「『安定と調和』を望む」といいながら、狙っているのは社会全体を支配すること。社会をとことん分断し、攻撃し、「愚かな」人間を統治しようと目論んでいた。

彼らは、コーディネーターよりも「上位種」とされるアコードという遺伝子操作された人たちだった。その圧倒的な強さの前に、前作まで無敵の存在だったキラ・ヤマトでさえ怯んでしまう。

絶体絶命のピンチに陥るも、「争いのない世界」を目指して全ての仲間が結集するというのが本作の肝だ。前作までは、実は仲間と思しき者同士が対峙することが多かったので、この映画の2時間ばかりを共同体として協力し合う彼らの姿に、SEEDファンなら誰でも涙するんじゃないだろうか。

必要だから愛するのではない。
愛しているから必要なのだ。

ラクス・クラインの言葉も、実にSEEDっぽい。

理想主義に走るきらいはあるけれど、「争いのない世界」を標榜するキャラクターたちの奮闘を、心置きなく楽しめる一作だ。

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ちなみに、アニメ放送当時にも出てきたオーブ連合首長国という「中立国」として位置付けられた国がある。

日本を想定されたものとして描かれたはずだが、悲しいかな、20年の月日を経て、「オーブ=日本」として捉えるのが難しくなっているような気がする。中立国としての矜持を保ち、どの趨勢にも与しなかったオーブ。現在の日本はそのような矜持を、(少なくとも政府は)持ち合わせていないだろう。

もちろん中立という立場が万全というわけではない。実際、オーブもたびたび攻撃の憂き目に遭ってきた。だけど「平和」という理想と使命感を携えたオーブに共感することも多かったし、オーブを擬えた国に住んでいるいち市民として嬉しさがあったわけで。

その理想が、再び日本にも訪れんことを祈るばかりだ。

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