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愛してるぞ、突っ走れ。(Disney+配信ドラマ「The Bear(邦題:一流シェフのファミリーレストラン)」を観て)

少し前にnoteに記した映画「ボイリング・ポイント 沸騰」。人員が慢性的に不足しているスタッフ、なのにめちゃくちゃ忙しい厨房、資金繰りの大変さ、問題を抱えた主人公、冒頭で衛生管理検査で評価が下げられる点……。

「The Bear(邦題は「一流シェフのファミリーレストラン」ですが、本noteでは原題を採用します)」も同様のシーンが描かれている。しかも、第7話ではワンショット撮影が採用されている。1分1秒を争う厨房の喧騒がバシバシと伝わってくる。

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どちらがお薦めかと言われたら、優劣はつけ難い。作品として、体験できることの種類が異なるからだ。

「ボイリング・ポイント 沸騰」は、90分というスリリングな体験を味わえる作品だ。一方で「The Bear」は、主人公以外のキャラクターにもスポットが当てられ、どちらかというと物語性が高い。尺が長いドラマならではの特徴を存分に活かしている。

僕は3ヶ月だけ、大学生のときに横浜のレストラン&バーでホールスタッフのアルバイトをしたことがある。広いとはいえない厨房で、3名の男性スタッフが料理に腕を振るっていた。ドラマの中のように、シェフが怒号を発することは全くなく、ただただクールに料理を作り続けていて「ああ、格好良いな」と思ったものだった。

しかし実際はどうだったのだろう。

僕が働いていたときも、ピーク時は満席になった。ホールスタッフも混乱する注文量を、ひたすらに調理していくのは大変だっただろう。

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「The Bear」でも、店を開けてからの注文にただひらすら料理を提供し続けるスタッフの奮闘が描かれている。新しく取り入れた予約システムの導入初日、たまたまタウン誌のレビューに絶賛コメントが掲載され、とんでもない量の発注が舞い込むことになる。(初日だったので受注のリミットを設けていなかった様子)

主人公のカーミー(演・ジェレミー・アレン・ホワイト)はとにかく注文に対応しようとスタッフに檄を飛ばす。もともとマネジメントに長けた人物ではなかったが、「とにかく早くやれ」「ペンをよこせ」など指示をしまくる。その直前に、新作ドーナツの試作を行なっていたシェフに対しても「こんなことやってる場合じゃないだろ」と断罪。溜まっていた鬱憤に耐え切れず、2人のシェフはその場で辞めてしまう。

そういったスリリングな厨房の描き方も興味深いが、カーミーが目の前で火災が発生したときに、何も対処せず呆然とする様子もリアルだった。彼の内心の闇を窺わせる描写で、「ああ、似たようなこと僕も経験したことあるな」と既視感を味わった。

必要な牛肉を発注できないほどの資金難(そもそもどれだけ借金があるか分からない)にも見舞われているレストラン。よくある「困難を乗り越えた」ようなストーリーでないことも良かった。

困難は、そう簡単に乗り越えられるものではない。ゲームのようにクリア(きれいになる)ことなんて、そう簡単にはあり得ない。

困難と、共に歩いていく。それはカーミーがアルコール依存症のセラピーを受けている真っ只中であることも象徴しているかもしれない。人生は、一筋縄にはいかない。一筋縄にいかないからこそ、人生とも言えるのだ。

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1話30分、全8話と比較的短いのも鑑賞ハードルを下げますね。最初の1〜2話だけでも、作品のトーンがしっかりと伝わってきます。

タイトルの「愛してるぞ、突っ走れ」は最終話に登場してきた言葉。Fワードが飛び交うドラマですが、根幹に込められた「LOVE」に最後は納得してしまいます。

僕の中で、厨房フィクションが俄かにマイブームとなりつつあります。時間がある方は、先に挙げた「ボイリング・ポイント 沸騰」と併せて、ぜひ見比べてもらえたらと思います。

(Disney+で観ました)

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