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『目の見えない人は世界をどう見ているのか』を読む

『目の見えない人は
世界をどう見ているのか』
伊藤亜紗 著 アラン•チャン 装幀
光文社新書(2021.10.20.20刷)

はじめに

「見えない」ことは欠落ではなく、脳の内部に新しい扉が開かれること。
福岡伸一 青山学院大学教授 (生物学者)

目の見えない人は、世界をどう見ているのか。

私たちは日々、五感「視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚」からたくさんの情報を得て生きています。
なかでも視覚は特権的な位置を占め、人間が外界から得る情報の八~九割は視覚に由来すると言われている。
では、私たちが最も頼っている視覚という感覚を取り除いてみると、身体は、そして世界の捉え方はどうなるのでしょうか?

美学と現代アートを専門とする著者が、視覚障害者の空間認識、感覚の使い方、体の使い方、コミュニケーションの仕方、生きるための戦略としてのユーモアなどを分析。目の見えない人の「見方」に迫りながら、「見る」ことそのものを問い直す。

序章

『ゾウの時間ネズミの時間』
本川達夫 著 中公新書 (1992.8.25) より
足りない部分を「想像力」で補って、さまざまな生き物の時間軸を頭に描きながら、ほかの生き物と付き合っていくのが、ヒトの責任ではないか。
生物学者の仕事は、想像力を啓発すること。p.21
障害のある人は、身近にいる「自分と異なる体を持った存在」p.23

自分にとっての当たり前を離れる。p.26

意味と情報。
p.31
見えない人の世界を 見る ための方法として 情報 ではなく意味 に注目することが大切だ。p.46

健常者が障害者に教え助けると云う福祉的な関係が、見える人と見えない人を縛る事になる。p.39

第一章 空間

モノを見る時の「視点」に縛られない。

第二章 感覚

見えない人は、特別な聴覚や触覚が備わっている。

第三章 運動

見えない人の「体の使い方」
感覚と運動は、密接に関係しあっている。

第四章 言葉

見えない人の美術鑑賞
「ソーシャルビュー」
皆んなが積極的に声を出し合い、仲間とやりとりをしながら作品鑑賞をする。

見えない人の世界を 見る ための方法として 情報 ではなく意味 に注目することが大切だ。p.46
情報を得ることが目的ではない。p.170
私たちは「推理しながら見る」ことに慣れていない。p.174
見える人は、視覚が全体像を与えてくれる事になれてしまっている。
見えない人は、入ってきた情報に応じて、イメージを変幻自在・柔軟に対処出来るのでは。p.175

POINT】
ソーシャルビューと云う美術鑑賞の例を取り上げ、言葉を道具として「他人の目で見る」こと。
「見えるとは何か?」を問い直す。p.187

第五章 ユーモア

ユーモアとは、笑いを誘う発言や行為のこと。
障害と云うと一般的には「深刻なもの」と云うイメージで捉えがちです。
しかし、実際には周りを笑わせて盛り上げるような明るさを持っている人に出会います。
もちろん それは、計り知れない苦労と背中合わせになった明るさでしょう。
その事は、忘れてはなりません。
pp.190〜191.
障害者から「障がい者」への表記
高齢化に伴い「身体が不自由」になる

【POINT】

健常者が身体の不自由な人の価値観を、一方的に決めつけるのが一番よくないことです。p.213

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ハノイ読書会「見える人は二次元、見えない人は三次元?」

2022.05.07.

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