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教科書を読む「蜘蛛の糸」⑤

昨日は朝からTBSラジオで森本毅郎スタンバイのピンチヒッター、生活は踊るという情報番組、タレントさんとの京都特番と大きな番組が続きました。よくよく言われることですが、昨日もリスナーさんから締めたり、気をぬいたり、はしゃいだり、番組ごとに違う堀井さんだったとコメントをいただきました。番組によってすごくしゃべる時もあれば無言で終わる時もあります。(無言だから手を抜いてるとか機嫌が悪いということでもありませんのでご心配なく…笑)
昔から瞬時に場を読む癖があります。人の出入りが多い家で育ったことも理由の一つです。アナウンサーになりアシスタントという役割を請け負うようになってからは拍車がかかりました。自分の存在よりも全体のバランス。進行役がいる時は割り込まない、相手役がいるときは自分を何割出せばいいかその関係性を測ります。そして最初にスタッフに提示される役割に従順です。
色々な生き方があると思うのです。が、来年もまた自分の収まりのいい場所を探して、ストレスなくやっていこうと思います。

では蜘蛛の糸音読読解です。

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ところがある時の事でございます。何気なくカンダタが頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛くもの糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。カンダタはこれを見ると、思わず手を拍って喜びました。この糸に縋すがりついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。いや、うまく行くと、極楽へはいる事さえも出来ましょう。そうすれば、もう針の山へ追い上げられる事もなくなれば、血の池に沈められる事もある筈はございません。
 こう思いましたからカンダタは、早速その蜘蛛の糸を両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。元より大泥坊の事でございますから、こう云う事には昔から、慣れ切っているのでございます。

さあ、カンダタが初めて蜘蛛の糸を見つける瞬間です。自分だけが見つけたこの地獄の世界に降りてきた銀色の糸。ここはスルスルとのところまで一気にスピード感を持って読みたいです。「垂れて参るのではございませんか!」と喜びの表現、含み笑いがクレッシェンドしていきます。なんて楽天的なカンダタなのでしょう。一筋のきらめきのような細い細い糸なのに。ただのお釈迦様の気まぐれなのに。「思わず手を打って喜ぶ」とか「この糸にすがりついて〜ございません。」の部分はカンダタの胸の内に寄り添って。寄り添うということは言葉にカンダタが乗り移り声に表情が出てくるのです。言葉が波打ち呼吸が荒くなります。ああ!助かるかもしれないという希望に興奮しスピードも速くなるでしょう。自分だけが発見しているのだ。誰にも知られずにことを上手く運ばせたいという気持ちもありますから、広く大きな声というよりも、囁きながらもかつ意志を持った芯のある声です。
「両手でしっかりと」のしっかりとも握力の強さを言葉で包んでください。
「上へ上へ」二番目の上への方が少し高い発音になります。「こう思いましたから〜登り始めました」までは言葉自体にも力が入ります。「元より〜」からは脱力しながら、かつ得意げに。

 しかし地獄と極楽との間は、何万里となくございますから、いくら焦って見た所で、容易に上へは出られません。ややしばらくのぼる中うちに、とうとうカンダタもくたびれて、もう一たぐりも上の方へはのぼれなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下りながら、遥かに目の下を見下しました。

勢いをもって蜘蛛の糸に飛びついたカンダタですが、途方もないゴールに徒労を感じていきます。マイナスの表現であるしかしいくらとうとうもう一たぐり、を強調していきます。ただそれぞれに強調の仕方を違えてください。しかしは冷たく無機質にしたいので籠らせながらストンと、いくらをじっとりと溜めてだし、もうは諦めのため息を吐きながらです。そこで仕方がございませんかは少し破れかぶれに。そ・こ・で・し・か・た・が・ご・ざ・い・ま・せ・ん・か・らッと発音もしっかりと定まらず抑揚乏しくただの文字としてだすのです。さあ、この後カンダタは衝撃の場面を目にしていきます。はるかに目の下を見下ろしました。は視線がゆっくりと下に向かって下りていく感じで文尾に向けてスローダウンして納めていきましょう。

次回はあの場面です。

2020、12、31 TBSアナウンサー堀井美香

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