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さとごろりん美山リニューアルオープン!(2023年7月)


さとごろりんお披露目会の様子


さとごろりん美山のお披露目会当日の2023年7月22日は、ちょうど梅雨明け宣言もあって、夏休みの初日らしい強い日差しの照り付ける青空の一日となりました。

私たちは10年以上通ってきた里山のふもと近くで築300年の空き家を見つけて、今年3月からボランティアや児童養護施設がほぼ手作業で改修を続けてきました。作業は5か月間で合計43回実施し、児童養護施設の職員児童33人含むのべ144人が参加してくれました。

そしていよいよこの日、児童養護施設の里山付き別荘『さとごろりん美山』リニューアルオープンとなったのです!

お披露目会には、児童養護施設の職員や子どもたち、当団体支援者・関係者、マスコミ、当団体会員、元会員など関係者48名を広くご招待して現地体験いただきました。

進め方は基本的に住宅展示場のように自由に体験、ご覧いただく方式です。さとごろりんのスライド説明、たらいに浮かべた夏野菜・果物食べ放題、庭でのすいか割り、マインドフルネス体験、竹の食器づくり、ハンモック・里山文庫・隠し部屋・囲炉裏・コンポストトイレ・雨水浄化タンク体験、たたみの大広間でおしゃべり、庭先でのバーベキュー、大家さん宅でのブルーベリー狩り、小川で水鉄砲、花火、蚊帳の寝袋で就寝などです。

もっとも、さとごろりん美山は上下水もクーラーも冷蔵庫もテレビもWiFiもないところですので、いまどきの住宅展示場では考えられない建物です。でも、里山と小川に囲まれた恵まれた環境やかかわる人たちの持つ開拓者精神を生かせば、ないならないなりに、いやある時以上に心豊かに過ごせるところになっていると考えています。きっとそのことは、お披露目会に来ていただいた方々には直接実感いただけたのではと思います!

これからいよいよ児童養護施設(空いているときは、当団体活動、関係者個人も)の利用がはじまります。もしこの先もずっと利用を続けていくことができたら、ここがわたしたちにとっての本当のふるさとになっていくはずと夢は拡がるばかりです!もっともっと熱い夏にしていきましょう!!

※さとごろりんづくり作業の様子(1分の動画)
https://drive.google.com/file/d/1nXCDWopctfQXkj-y_ix4_hVTgCP-qUX8/view?usp=drive_link

※現時点のさとごろりんの様子

里山に面した縁側と玄関


薪ストーブと雨水利用の流しのある土間


床下から発掘した囲炉裏


土間から大広間への入口、隠し部屋へのはしご


寄贈300冊の里山文庫と黒板壁


つなげると20畳以上、ハンモックのある大広間


荷物置き場とコンポストトイレのある奥の間


雨どいからの雨水を貯めるタンク2つ


※『さとごろりん美山のしおり』より転載

■ごあいさつ さとごろりん美山リニューアルオープンにあたって
「さとごろりん美山」は、多摩丘陵・八王子市美山町の里山のふもとにある児童養護施設のための里山付き別荘です。NPO法人・東京里山開拓団が児童養護施設の子どもたちや職員とともに、里山の恵みをできるだけ生かしながら築300年の古民家をほぼ手作業で改修し、2023年7月22日についにオープンします。これまで大家の牛尾様、みやま郷の小林様、リフォーム業の佐藤様はじめ地元の方々からも多大なるご理解・ご支援をいただきました。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

ここには上下水道はありません。テレビもWiFiも冷蔵庫もありません。電気は最低限の15アンペア契約、ガスは基本料金なしのプロパンガスボンベです。

でも、ここには私たちが自由につかえる山林や小川があります。春には山菜とり、夏には蛍狩り・魚とり、秋には紅葉狩り、冬には焚火もできます。火を囲んで話のできる囲炉裏や薪ストーブ、バーベキュー場もあります。雨が心待ちになってくる雨水浄化タンクもあります。虫の音を聞きながら蚊帳やハンモックで寝ることもできます。雨が降っても300冊の里山文庫があります。立派な梁や柱を見渡せる屋根裏の隠し部屋も作りました。竹チップのコンポストトイレを使えば大地を豊かにする過程に参加することもできます。

ここには都市社会のなかではあって当たり前のものがなく、その代わりにあふれんばかりの自然の恵みとボランティアや地元の方の協力があって、どうしたら心豊かな暮らし方が実現できるのか自由に試すことができるのです。誰かがいいやり方を教えてくれるわけではありません。里山ライフの実践を通じて自らその答えを探し出していくのです。

私たちのいう「里山ライフ」とは、単なる昔の生活、あるいはエコ生活ではありません。開拓者精神をもって里山を伐り拓いて里山と深くつながるなかで、ここでは何も飾ることのないありのままの自分が今この瞬間周りから元気をいただき心から喜んでいることに気づき、都市生活で見失いかけていた生きる力を自ら取り戻そうとする試みなのです。

さとごろりん美山にはまだ手が回っていないところがたくさんあります。でも、不満を口にする前に、自らの知恵と工夫で自然の恵みを生かし楽しみながら乗り越えてみましょう。それこそが開拓者本来の姿勢です。滞在する方々には、お客様としてではなく「開拓者」として一緒にかかわっていただけるなら嬉しい限りです!

<さとごろりん滞在の心得~「開拓者」として~>
☆里山の恵みをとことん活用しましょう。
☆都会のやり方を安易に持ち込まずあるもので工夫しながら過ごしましょう。
☆お互いを尊重して心からくつろいで過ごせるようにしましょう。
☆新たなご縁を楽しみ失敗を恐れず新たなことに挑戦しましょう。
☆帰るときは来た時よりももっと居心地のよくなるようにしましょう。
☆何度も通い続けて思い出あふれるふるさとを一緒に作り上げていきましょう。

■あとがき
私たちがこの空き家と出会ったのは2023年2月のことです。7月末のリニューアルオープンまでたったの半年間。なぜこんなに急いだのかといいますと、児童養護施設の子どもたちが「一生いられる」とまで言ってくれていた「さとごろりん菅生」が、事情あって地元の協力が得られなくなり、3月末で閉鎖せざるを得なくなってしまったからです。

今回なんとかお披露目会を開催できるところまでたどり着くことができ、振り返りますと、あてもなく歩き回った空き家探し、さとごろりん菅生の撤退対応、膨大な粗大ごみ処分、予算の捻出、水の確保、トイレの確保、駐車場トラブル、天井裏のほこり払いなど様々な出来事が思い出されます。

でも、つらいとか大変というよりは、実はどうやったらそれを乗り越えられるのかワクワクしていました。そして夢中になって取り組んでいると協力のお申し出も増えてきて、それが格別にうれしかったのです。

私にとって一番の心の援軍は、児童養護施設の子どもたちでした。小学生から高校生、退所者まで、床拭き、壁やふすまの塗装、庭の側溝掘り、電気配線など、それぞれできるところを探して夢中になって取り組んでくれたのです。

なぜ彼らがちょっと前までゴミ屋敷だったところにそこまで夢中になるのでしょうか。私の想像ではきっと、こんなことまでやれる自分自身のチカラを再発見してワクワクしているのです。しかも、作り上げているのは願うことさえかなわなかった、わが別荘、わがふるさとという夢のような居場所です。

私が里山開拓時も含めて何度となく目撃してきましたのは、子どもたちの心はかつてどんなに抑圧されたことがあったにせよ、開拓者精神の息吹はまだかすかにあって、里山で何の抑圧もないありのままの状態に置かれたとたんに息を吹き返しいかんなく発揮されていく姿でした。それは間違いなく私たちが教えたことではありません。子どもたちの心に内在していた「生きんとする力」が自ずから目覚める瞬間だったのです。

紙芝居ボランティアからはじめて日本を代表する絵本作家となられた故かこさとしさん(当団体立ち上げを応援いただいた恩人)は、自叙伝『みらいのだるまちゃんへ』のなかでこう書かれています。

「生きていくというのは、本当はとても、うんと面白いこと、楽しいことです。もう何も信じられないと打ちひしがれていた時に、僕は、それを子どもたちから教わりました」

実際、本当にその通りでした。荒れた山林を伐り拓き、ふもとの空き家を改修して、自分たちの手で自らの居場所をつくりあげていくこと。なぜそんな大変そうなことにみんなが自発的に参加してくれるのかというと、生きていくことが本当はうんと面白い、楽しいと気づかせてくれるからです。

子どもたちは初めて来た時から直感的にそれに気づき、帰りには全員がまた行きたいと口をそろえるのです。大人の方が逆にその言葉や姿にはっとさせられるのです。そしてこの活動が継続されていけば、どれだけ巨額な税金をつぎ込んでも実現できないプライスレスな社会的存在、「ふるさと」が自然の恵みと自分たちの力で出来上がっていくのです。

昨今あふれるいやなニュースを見聞きするにつけ、いつの間にか生きることは大変で苦労ばかりと、大人にも子どもにも思えてしまうような社会になってしまったようです。でも、私は2006年以来の試行錯誤のなかで、自然の恵みや、子どもたち・ボランティアの力をもっと生かしていけたら、うんと面白くて楽しい社会はきっと自ら作り出していけるはずと確信するようになりました。

私たちはこれからも開拓者精神を発揮して、荒れた山林やふもとの空き家の社会的活用を楽しみながら取り組んでいきますので、引き続きご理解、ご協力、ご支援のほどよろしくお願いいたします。 


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