男は失恋を美化したがる
涙は出なかった。
読み終えてホッと息をついてから、わたしはわたしの大切な人のことを想った。
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SNS上で話題になっていたし、その好みの装丁から本屋へ立ち寄った際に思わず購入した燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』。
自己啓発本ばかり読んでいたので小説、しかもハードカバーのものを買うなんてかなり久しぶりだ。
ストーリーとしては、平成生まれで田舎育ちのわたしには正直すんなり入ってこない部分が多かったのだけど、どこかぼんやりとした世界は今にも消えてしまいそうで、これが燃え殻さんの世界観でウリなのか、と思いながら読み進めた。
(…)これは確実に新時代のハードボイルド小説だ!!
と帯に書いてあったのだが、まさに。
戦うことはしていないのに、(しいていうなら東京という大都会と戦っていたのかもしれない)カッコつけて生きている男が最高にダサい。
わたしは女だからか、“ボク”よりも彼女やスーという女性のセリフの行間を意識してしまう。
男は本当に、女が出す色々なサインに気付かない。そのくせロマンチスト。
男の恋愛は「名前を付けて保存」というけれど、この“ボク”はそんな男の象徴的存在だ。
過去の恋愛を思い出して、ひとり感傷に浸って、彼女と歩いた街をふらりと歩く。
燃え殻さんの文章には、匂いがある。
だから“ボク”と歩く東京は、田舎育ちのわたしにも懐かしさを覚えさせたのだろう。
歩みを進めた彼女と、もがき続ける“ボク”。
一度ズレてしまった歩幅は、そのまま2人の距離を埋められなかった。
わたしは幸い、好きな人と一緒に生きている。
それがどんなに奇跡的なことかーー
今となりにいる人を大切にしよう。
そしてあの人の最愛のブスになってやろう。
だから今日は、いつもより気合いを入れてキッチンに立つわたしです。
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