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『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』~札幌にてウジウジしてるけど心優しい田中くんに寄り添う

ひと月ほど前娘から、札幌の「YOSAKOIソーラン祭り」で踊ると告げられた。
娘は、学校でよさこいサークルに所属しているのだ。
6/8(木)~12(日)の日程で、2年ぶりにお祭りが開催されるらしい。

ん?
札幌?
映画『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』のロケ地ではないか!
父が亡くなってから時間を持て余している母を誘い、「YOSAKOIソーラン祭り」に行くべく、いそいそと札幌行きの飛行機とホテルを予約した。

札幌初日

よく考えてみると、北海道の地に降り立ったのは実に20年以上ぶりだった。
出産する前は、雪まつりにスキーにと何度か訪れていた。ある初夏には車で道南から道東を一週間かけて巡ったこともある。
とにかく食べ物がおいしいところ。空気が綺麗で、景色も素晴らしいところ。いい印象しか無い。それなのに、20年以上も来ていなかったとは本当にどうしたことか。
子育て真っ最中の時には、子供の行事やらなにやらでなかなか遠出はできなかったし、8年前に犬を飼ってからはなおさら遠出旅行するのは難しくなった。
でも、もう下の子も高校生になったことだし、今回は夫と犬と三人で留守番してもらって3泊4日で出かけることにした。ありがたい。
お昼少し前に新千歳空港に降り立つと、カラッとした空気と爽やかな風を真っ先に感じた。ジメジメした梅雨の地域から来たのでこの爽やかさは特に嬉しい。快晴だし。見渡す限りの新緑が眩しい。

お腹もすいてきた頃だし、お昼ご飯を食べたいところだ。
私の中で行先は既に決まっていた。

回転寿しトリトン

こちらは映画のロケ地ではないのだが、『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』撮影中に、高畑充希ちゃんと訪れたというあの回転寿し店だ。

著書「日本製」の北海道の章では、裏・日本製にも美味しいお寿司屋さんとしてトリトンさんの名前を出していた春馬くん。

回転寿しトリトンさんは札幌市内に何か所かあるのだが、目指すのは春馬くんが行った豊平店だ。
新千歳空港から快速エアポートに乗り札幌駅まで行き、そこから東豊線乗り場まで10分くらい歩き福住行に乗り学園前駅に着いた。
スマホのGoogleマップによると、ここから6分くらい歩くと着くらしい。スマホに案内されながら住宅地の中を歩いて行ったがそれらしいお店がなかなか見当たらない。実際は10分くらい歩いて大きな道路にぶち当たり、ようやく大きな看板を見つけた。

回転寿しトリトン 豊平店

12時少し前に到着した時には、既に店先には何グループか並んでいた。店内の受付機で予約をして店内の待合席で順番が来るのを待った。
この日は金曜日だったので、お客さんにはサラリーマンと思われるスーツ姿の二人組や一人客も多かった。仕事中の昼食に立ち寄っているという感じだ。きっと、美味しくてお値段も手ごろということなのだろう。
30分ほどしてようやく席に案内された。
混んでいるので春馬くんが座った席に、などという贅沢は言っていられない。案内されたカウンター席に母と二人並んで座った。
途中お手洗いに立った時に、春馬くんが座ったであろうテーブル席もチラ見した。
あの席で春馬くん、目をキラキラさせて美味しいお寿司を頬張っていたのだな、なんて思って見ていると、座っているお客さんと目が合ってしまい、そそくさと自席に戻った。
こちらは、回転寿しとは言え、カウンター上のレールの上には、商品紹介のプレートが回っているのみ。初回注文のみ店員さんに伝え、あとは手元のタブレットで注文すると出来上がったお寿司がカウンタ―越しに店員さんから手渡しされるというシステムだ。
だから、常に新鮮なお寿しを提供してもらえる。店員さんも、丁寧な対応でとても感じがよかった。
まずは、お店おすすめのアスパラつつみを注文した。四角いのりの上に少量のごはん、そしてゆでたアスパラがのったものだ。写真を撮り忘れたのだが、アスパラの歯ごたえがよく、でも柔らかく、心なしかアスパラの香りも感じられる。
春馬くんがこちらのお店を訪れたのは6月の初旬(サイン色紙に2018.6.4と書いてあった)だったようなので、おそらく春馬くんもこれ食べただろうな、と思いながら食べると、より一層美味しかった。

その他、中トロやいかやいくらやアワビ、珍しいところでたこのこ軍艦というものも食べてみた。どれもこれも新鮮で美味しい。母もすごく喜んでいた。

新鮮でおいしいお寿司たち
アワビのなんと柔らかいこと!
名物たこのこ軍艦とのこと

春馬くんと充希ちゃんの写真には30枚くらい皿が積み重なっていたけれど、80代と50代ではこれくらいしか食べられなかった。

母と二人で12皿

お会計のレジの後ろに何枚かのサイン色紙が飾られていて、その中に春馬くんと充希ちゃん二人のサインが1枚のサイン色紙に書かれているものがあった。
お会計を済ませてから、レジの方に「写真を撮ってもいいですか?」と聞いてみたら
「どうぞどうぞ、なんならカウンターの中に入ってお撮りください」と
とても親切に言ってくださったので、遠慮なくカウンターの中にお邪魔し撮影させていただいた。
充希ちゃんのサインより春馬くんのサインの方がやや大きく、でも、なんかそのバランスがすごく良くて、二人の仲良しさが伝わってきた。高畑充希ちゃんのエッセイに、この映画のロケのことが少しだけ書いてあった。

私たちは朝から晩まで一緒に遊んで、もう仕事なんだか旅行なんだか分からなかった。楽しかった。

高畑充希 「穴があったら入ります」

そういう幸せな時間を過ごした場所。もうそれだけで、ここにいるだけで涙が出そうだ。

北海道大学

映画の中で、春馬くんが演じる田中くんは北海道大学の医学部生だった。
色々なシーンで何度も北海道大学のキャンパスがロケ地として出てくるので、どうしても行きたかった。
地図を見ると札幌駅から近い。
トリトンさんから再び学園前駅まで歩き東豊線で札幌駅まで行き、そこからタクシーに乗り北海道大学まで行った。

まずは、校門を入ってすぐ左側にあるインフォメーションセンターにて、キャンパスマップをもらった。広大な敷地に見どころがわかりやすく書かれていた。
一番行きたいところは、あの、木に囲まれた緑地だ。
田中くんが美咲ちゃんに鹿野さんのことをお願いするシーン。じゃあ、代わりに私のお願いも聞いて、とキスをねだられるあの可愛いシーンのロケ場所だ。
こちらは、附属図書館本館前にある中央ローンという緑地で約12,000平米もあるらしい。真ん中に小さなサクシュトコニ川が流れていて、確か二人はその川のそばの木のところを歩いていたな。

北海道大学の中央ローン

たくさんの学生さんが座って休んでいたり、お弁当を食べていたり、本を読んだりしていた。バドミントンをやっている人たちや測量実習をしている学生さんもいたし、モデルさんを木の下に立たせて写真撮影しているカメラ学生さんもいた。
私と母も持って来た敷物を敷いてちょっとだけ座ってみた。
木漏れ日が芝生に模様を描く。サクシュトコニ川にも緑が映る。
学生さんたちの笑い声や遠くから聞こえる車の音さえも気持ちよくて、いつまででも座っていたかった。

ふと、どの木が”あの木”なのか探ってみたくなり、私はスマホを取り出しNetflixでこの映画のあのシーンを再生し何度も見直した。似ている風景を探しに歩き回っていると、母が不思議そうに「なにやってるの~?」と聞いてくるけれど、まさか「キスシーンの木を探しています」なんて言えない。

いろんな角度から見てみて、うーん、これかな?

例のあの木はこれかな?

ちょっと違うような気もするが、あのシーンを感じられて満足して次のスポットへ移動した。
次は、クラーク会館。

北海道大学のクラーク会館

この中にあるクラーク食堂は、鹿野さんが充希ちゃんとボランティア募集していたところ。そこにちょうど田中くんが通りかかって、「充希ちゃんにランチデート誘われちゃった」「田中くんも一緒にどう?」って言われていた場所。

クラーク食堂

この日は、このクラーク会館全体がワクチン接種会場になっており食堂もやっていなかった。ピリ辛ラーメン食べてみたかったな。

ここまで来ておいて、医学部校舎へ行きそびれたのを後で気づき後悔した。ボランティアもやめ医者になるのもあきらめるという田中くんを鹿野さんが車いすで追いかけながら説得するシーンのあの校舎と緑の中の道だ。残念だけれど、次の楽しみに取っておこう。

初日のロケ地巡りはこれまで。この後、ホテルにチェックインし「YOSAKOIソーラン祭り」へ繰り出した。

旭山記念公園

2日目。この日の娘の出番は午後からだったので、9時にホテルを出発して旭山記念公園へ向かった。
ホテル近くの大通駅から東西線に乗り5分ほどの円山公園駅で降りた。この駅には動物園があるそうで、小さな子供連れの親子が何組か一緒に電車を降りた。
駅直結のバス乗り場へ行ってみると旭山記念公園行のバスは10分ほど前に出たばかりで、あと1時間も待たないといけない。なので、駅の外のタクシー乗り場でタクシーに乗り、10分ほどで旭山記念公園のレストハウスに着いた。
そこから階段を上っていくと、ぽつりぽつりと雨が降り出し途端に大雨に見舞われてしまった。屋根のあるところで雨宿りすること30分。雨に煙る札幌の風景もまた乙なものだった。

雨に煙る札幌

ようやく雨が上がり、目の前に札幌の街並みがくっきりと広がった。
そうここは、田中くんと美咲ちゃんがお弁当を広げるシーン。
ここで、「実は教育大生じゃないんだよね」と美咲ちゃんからカミングアウトされ「うちの両親にはなんて言うの!?」とアタフタする田中くんが愛しかったな、なんて思いながらしばらく札幌の街を眺めた。

旭山記念公園から見る札幌市内

公園内を一回り歩き終わった頃には、さっきの雨が嘘のような綺麗な青空。雲の形もまた可愛らしい。

旭山記念公園から見た空

この後、1~2時間に一本程度のバスがもうすぐ来ると知り、第二駐車場の近くにあるバス停まで10分ほど歩いて行った。バスに乗り再び円山公園駅、そしてその後は大通まで行き、お祭りを見て回ってその日が終わった。

琴似神社

三日目。娘たちが11時半から踊る会場近くに、ロケ地があるのを発見した。
チャンスとばかりに、9時過ぎにホテルを出発し時計台前バス停から20分ほどバスに揺られ西区役所前で降りた。
バス停からGoogleマップに従い歩くと、すぐに琴似神社の看板を見つけた。

琴似神社の立て看板

こんな町中に神社があるなんて、と思い鳥居をくぐると、中は一変してシーンとして清々しい気が充満している境内。

ここは、鹿野さんとボラの皆さんで初詣をした神社だ。
美咲ちゃんが「教育大学に合格しますように」と祈り、鹿野さんは美咲ちゃんとの未来を祈ったあの神社。
防寒用の耳当てをしてチラっと美咲ちゃんの表情を盗み見る田中くん。これまた愛しい。
映画では、ちょうどこの画角でみんなの後ろ姿が映っている。

琴似神社の鳥居をくぐると途端に凛とした空気
琴似神社境内

確か、あのシーンではお社には垂れ幕がかかり、おおきな鈴がぶら下がっていたけれど、今はその装備は無かった。初詣の時期になると、あるのかな?

琴似神社のお社


お社側から見た境内

この琴似神社は、明治8年琴似に屯田兵が入植した際に同時に祀られた神社だそう。神社を囲う塀の外側を辿って歩いていくと、裏手に小さな小屋があった。これは屯田兵屋だそうで、北海道指定有形文化財にも指定されているという。

琴似屯田兵屋

親友が最近、神社巡りにはまっている。毎週、近場の神社に出かけては御朱印を集めて歩いているが、神社の空気がなんとも言えないというのだ。でも私も今回、境内に足を踏み入れた時の清々しさ、神々しさが初めてわかったような気がした。気というものがあるとすれば、まさにこういう感覚なのだろう。
ロケ地だから訪れてみたが、春馬くんになかなかいい場所にいざなってもらったな、と思った。

娘の踊る時間が近づいてきたので、また琴似神社を後にバスに乗った。
この神社の割と近くに札幌ホテルヤマチというホテルがあり、そこでは鹿野さんの退院パーティを撮影したとのことだが、SNSでそのホテルのロビーかどこかに春馬くんのサインが飾ってあるとの情報を見た。
そのホテルに宿泊してみてもよかったな、と思ったが、今回は母も一緒だし、なるべくアクセスのいい大通公園近くにして正解だったのだろう。
いつか、泊まってみたい。

終わりに

今回の札幌旅行は、娘の参加する「YOSAKOIソーラン祭り」が最優先目的だったので、ロケ地巡りはこのくらいしかできなかった。
このほかにも、バーベキューをやっていた八剣山果樹園や鹿野さんが講演をした清田区民センターや鹿野さんの部屋がある西区山の手の団地などまだまだロケ地はあるのだが、母を同行するには距離もあり、というより観光地でもないので行っても母は全く楽しくないだろうと思い断念した。
それでも、連日1万歩超えの歩数を一緒に歩いてくれた母に感謝だ。

今回ロケ地を回るたび、そのシーンのあのウジウジした自己肯定感の低い悩み多き、でも本当に心優しい田中くんの姿を心の目でそこに見ながら、愛しさで胸がいっぱいになった。

「YOSAKOIソーラン祭り」の感想を少しだけ。

2年ぶりに開催された「YOSAKOIソーラン祭り」、各団体の意気込み、熱気、本気は凄まじかった。
空白の2年間の悔しさ、そしてまたここで踊ることができるという喜びに満ちていて、何度も目頭が熱くなった。
我が娘も、生き生きと輝いていて、こんな機会をいただけていることに心から感謝したいと思った。

そして、激しく熱く踊る若者たちを見て

ああ、よさこい踊る春馬くんも見たかったな・・・
きっとめちゃくちゃかっこよくって、男くさくって、美しかっただろうな

と思ってしまったのは言うまでもない。
また来年も来れるかな。


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