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ウディ・アレン監督「サン・セバスチャンへ、ようこそ」〜巨匠に彩られた“映画祭“

ウディ・アレン監督の「レイニー・デイ・イン・ニューヨーク」(2019年)が日本で公開されたのが、2020年の7月。翌年次作の「サン・セバスチャンへ、ようこそ(原題:Rifkin's Festival)」が海外では公開されているが、日本では2024年の1月にようやく公開された。ちょっと時間がかかり過ぎている。

ともあれ、無事公開されただけ良かったとしようか。

主役のモート・リフキン(ウォーレス・ショーン〜映画デビューはアレンの「マンハッタン」)、見た目は典型的な”おじさん”。大学で映画、欧州の名作について講義していたが、小説家として傑作を生み出そうとしている。

妻のスー(ジーナ・ガーション)は映画の広報の仕事をしており、若きフランス人監督フィリップ(ルイ・ガレル)を担当。彼をサポートするために、スーはスペインのサン・セバスチャン映画祭にやってくるのだが、モートもそれに同行する。フィリップとスーの関係が気がかりでもある。

モートンというキャラクターを表す会話が、映画の冒頭に登場する。フィリップが愛するアメリカ映画の名作について、モートンが馬鹿げた口論を彼にしかけたと、スーがなじるのである。その作品とは、ハワード・ホークス監督「赤ちゃん教育(Bringing Up Baby)」、ビリー・ワイルダー監督「お熱いのがお好き(Some Like It Hot)」、フランク・キャプラ監督「素晴らしき哉、人生!(It's a Wonderful Life)」。残念ながら、読める字数の関係で、日本語字幕では表現されない。(なお、三作とも文句なしの名作だと思う)

これらの作品と対比されるのが、ウディ・アレンもモートンも敬愛する、ヨーロッパの巨匠たち。トリュフォー、フェリーニ、ゴダール。。。アレンの「インテリア」(1978年)はスウェーデンのイングマール・ベルイマンを意識した作品である。

本作では、彼らの名作のシーンが、モートンの”夢”として登場す、オマージュ、あるいはパロディとして。そして、その背景にあるが、”夢”の街、サン・セバスチャン。モートンにとってのフェスティバルは、どのように展開していくのだろうか。

ウディ・アレン節全開、私の好きなアレン作品ベスト5入りしそうな傑作である。次作「Coup de Chance」は昨年のヴェネチア映画祭で発表され、フランスではすでに一般公開されている。日本でも早く公開してください。

私にとって、この映画の魅力の一つは、サン・セバスチャンの街が背景になっていること。かつて宿泊した、ホテルも登場する。そのことについては、また明日





ここからは、ウディ・アレンの仕掛け〜引用されている映画などを記すので、ご注意を。


映画の中にそのシーンが登場する作品

オーソン・ウェルズ監督「市民ケーン」
フェデリコ・フェリー二監督「8 1/2」
フランソワ・トリュフォー監督「突然炎のごとく」〜私の大好きな自転車のシーン
ジャン・リュック・ゴダール監督「勝手にしやがれ」
クロード・ルルーシュ監督「男と女」
イングマール・ベルイマン監督「仮面/ペルソナ」〜大学時代に観てさっぱり分からなかった
イングマール・ベルイマン監督「野いちご」
ルイス・ブニュエル監督「皆殺しの天使」
イングマール・ベルイマン監督「第七の封印」

モートがかつて恋したドリスを連れて行った映画(彼女は退屈した)
ミケランジェロ・アントニオーニ監督「赤い砂漠」
アラン・レネ監督「去年マリエンバードで」
エリック・ロメール監督「クレールの膝」

モートが勧める日本映画(一座は白ける)
稲垣浩監督「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」(モートは、加山雄三と三橋達也が出演し、八住利雄が脚本と説明する)
黒澤明監督「影武者」(仲代達矢主演、音楽は池辺晋一郎と説明)

そんなモートは、”pedant”と評される。

“pedant“、リーダース英和辞典によると(抜粋)、<学者ぶる人、知識をひけらかす人、教条主義者>。オックスフォード新英英辞典によると、“a person who is excessively concerned with minor details and rules or with displaying academic learning“。

はたして、モートは本当に“pedant“なのだろうか。彼の“映画祭“はいかなるものだったのだろうか


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