この謎の現象をどう読み解けば良いのでしょうか？

　わたしは今朝いつも通りこたつに入り、トーストと目玉焼きをもぐもぐして、コーヒーをゴクリと飲みました。

　そして、「ふう。あともうしばらくしたら出勤時間か。きっとまた今日もYさんにアプローチ出来ずじまいで終わるんだろうな。あーあ。でも、こたつのぬくぬく幸せ感がせめてもの救いだなあ」なんてことを考えていました。

　すると。

　突然、

　パアアァァァン！！

　という物凄い音が聴こえました！

　音がしたのは玄関から。

　「なんだなんだ？」と慌てて見に行くと、なんとわたしの置き時計（ガラスの中に時計が入っているタイプの物）がこなごなに割れて玄関の床に散乱しているではありませんか！

　ガラスも時計部分もバラバラ。

　実はこの置き時計は、わたしがかつて短期間だけ結婚をしていた際に知人からプレゼントとして頂いた物。

　わたしはこの置き時計を見る度に、結婚当時の辛く悲しい気持ちを思い出すため、何度も「断捨離しようかな？」と思ったのですが、「でも故障したわけではないし、物には罪は無いから…」と使い続けてきたのです。

　かなり大きめで重い置き時計なので、玄関の靴箱の上に飾っていました。

　別に、靴箱の端っこに置いていたとか、傘が置き時計に触れたとか、そういうわけではありません。

　靴箱の上は平らで、傾斜は全くありません。

　また、靴箱の上には置き時計以外のものは置いていませんでした。

　ちなみに、置き時計の近くの壁にはポストカード数枚をマスキングテープで貼って飾っているのですが、ポストカードの位置は変わっていませんし、もしポストカードが何かの拍子に置き時計を押したとしても、置き時計が倒れて落ちるようなピタゴラスイッチ現象を起こすはずがありません。

　なのに、こうして突然置き時計が何の前触れもなく割れたからビックリ！

　地震があったとか、近くをダンプカーが通ったとか、わたし以外の人間やペットが触ったとか（一人暮らしですしペットは飼っていません）、そういうわけでもありません。

　まるで誰かがわざわざこの置き時計を割るためにヒョイッと持ち上げて「叩き割ってやる！」という強烈且つ明確な意思をもって力いっぱい床にぶつけたかのような、不自然に激しい割れ方です。

　…何これ！？

　スピリチュアルなものって苦手なのですが、これってもしかして、ぽ、ぽぽぽポルターガイストってやつですか？

　それとも守護霊とか浮遊霊とか背後霊とか地縛霊とかそういう系の何かが「わしが直々におぬしの悪縁を断ち切ってくれよう。これで良縁を呼び込んでやるのぢゃ」的なノリで置き時計を叩き割ってくれたのでしょうか！？

　もしくは映画『ゴーストバスターズ』に出てくるムチムチわがままボディのおばけがたまたま通りかかって「あいてっ」と置き時計にぶつかったのでしょうか？

　或いは、以前アニメ『名探偵コナン』に時々出てきたような、紐とか糸とかを使った巧みなトリックで何者かが置き時計を割ったのでしょうか…？

　ハッ！

　もしや、『名探偵コナン』に出てくるような黒ずくめの犯人が、割れた置き時計のかけらによって壁や床を故意に傷つけて、敷金礼金にダメージを与えようという動機で犯行に及んだのでしょうか？

　なんという凶悪犯罪！

　許すまじ、賃貸物件の敵！

　でも、ガラスが派手に飛び散っていたのに、幸い壁も床も無傷でした。

　まさか置き時計が自ら砕け散ったわけでもあるまいに…。

　もしそうだとしたら、靴箱の上に残骸のかけらが一つも残っていないことも不自然極まりないです。

　ますますミステリーな出来事。

　何が何だか分かりませんが、おかげさまでついに置き時計を捨てられたのは本当に喜ばしいことでした。

　根拠はありませんが、この事件を機に全てが少しずつ好転していくような予感がします。

　ありがとう、浮遊霊さん（仮）。

　ありがとう、黒ずくめの犯人さん（仮）。

　…本当に何なのでしょう？

　この謎の現象は…？

　ん？　この不思議な感じに、なんだかちょっと既視感があるような…。

　あっ、そういえば映画『ドラえもん のび太の魔界大冒険』に、世にも奇妙なシーンがありましたよね。

　のび太にもドラえもんにも全く身に覚えのない石像が、実は…という展開がありました。

　えっ、もしや今日わたしの身に起きたこの謎の置き時計破損事件って、映画『ドラえもん のび太の魔界大冒険』のような伏線なのでしょうか！？

　全くわたしの身に覚えのない置き時計破損事件は、実は…世界の存亡に関わる超重要なメッセージ！？

　ガーーーン！

　そ、そんな。

　魔界が地球に接近してしまう前に、せめてYさんにわたしの口から一言「好きです」という4文字だけでも伝えたいです。

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　〈11月17日夜に追記〉

　…今日もYさんとお話する機会があったのに、案の定というか、やっぱりというか、またしても全くアプローチ出来ませんでした…。

　Yさんとお話出来ただけでもすっごくウキウキしてしまって、「いつもありがとうございます😊」と満面の笑顔で言うのが精一杯でした。

　わたしったら、いくじなし！

　へそ曲がり！

　なんでこう照れてしまうの！

　置き時計が割れたことも謎ですが、わたし自身の心理状態も謎。

　自分で自分の心が思う通りにコントロール出来なくて、もどかしいです。

　とりあえず今から、やけ酒代わりにジンジャーエールをいっぱい飲んでやります。