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著…夏目漱石 絵…しきみ『夢十夜』

 夏目漱石が美しい文体で描く、夢の物語。



 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。


 第一夜から第十夜まで、主人公は様々な「自分」となり、多くの体験をします。

 ある時は、死にゆく女を看取る「自分」に。

 ある時は、「侍なら悟れぬはずはなかろう」と挑発されて悟ろうとする「自分」に。

 ある時は、盲目の我が子を背負う「自分」に…。

 本来、夢の世界というのは取り留めのないもの。

 なのに、この本を読んでいると、まるで全ての夢が現実のような気がしてきます。

 「自分」が誰なのか分からなくなって、夢の世界に溶け込んで、やがて現実の方を夢だと思ってしまいそうな…。

 そんな危うさがありながらも、一つ一つの夢が終わる度、まるで蝋燭の灯りがふっと消えた時のような優しい余韻が残る、魅力的な作品です。

 なお、わたしは特に、第一夜が好きです。

 人の命も、花の命も、とても短いけれど、願わくばわたしもこんな風に人を愛し愛されたいと願わずにはいられないから。

 特に惹かれるのは、死にゆく女と「自分」が交わす、

 「きっと逢いに来ますから」

 自分はただ待っていると答えた。

(著…夏目漱石 絵…しきみ『夢十夜』P6から引用)


 という会話。

 夏目漱石と言えば、「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話が有名ですよね。

 誰かにそうやってI love youを言われた時、もしわたしもですと答えたいなら、「死んでもいいわ」と答えるというのが定番(ちなみに「死んでもいいわ」の方は二葉亭四迷が由来)。

 しかし、この第一夜を読むと、また別のI love youの伝え方もあるのだ…と気づかされます。

 「きっと逢いに来ますから」

 自分はただ待っていると答えた。

(著…夏目漱石 絵…しきみ『夢十夜』P6から引用)




 〈こういう方におすすめ〉
 不思議な読み応えの小説を読みたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 一時間〜一時間半くらい。

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