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#18 デザイナー・眞鍋聖昇「UI/UX??」(2020.5.15&22)

今回の「文化系クリエイター会議」のお相手、この人ですけどたぶん誰も知らない人です。眞鍋聖昇(まなべ・せいしょう)さん。知らないでしょ?

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どんなスゴイ人か正体を明かす前に、まず異質なキャリアをご紹介。出発は広島から。高2で学校辞めて海外へ。

当時は真剣にサッカーでプロになりたいと思ってて。高2のときにユベントスのユースに入ったんですけど「おまえはもうダメじゃ」って言われて。で、「どうしようかいの」って考えてたら、もともとファッションやインテリアに興味があったんで「デザインやってみたいな」と思ったんです。それでロンドンのセントマーチン芸術大学のサマーコースを受けたら「これじゃ!」となって。そのときプロダクトデザイナーの先生がいて、「おまえ才能があるけえ、プロダクトをやった方がええ」って言ってくれたんです。それまではグラフィックや映画に興味があったけど、そこでプロダクトデザインの面白さに目覚めたんです

ユベントスって、あのユベントスですよ。デルピエロ、ブッフォン、クリロナでおなじみのユーベ。

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で、サッカー挫折してトリノからロンドンへ。そしてプロダクトデザインに目覚めるっていう。すごいでしょ? 広島弁でこの内容もすごいでしょ?

そんな聖昇さんがまず入った会社が「IDEO(アイデオ)」。すごくあこがれてた会社らしいですけど、どんな会社ですか?

IDEOはアップルが最初にコンピュータを作ったときのマウスをデザインした会社。スティーブ・ジョブズが「なんかええ会社ないかのぉ?」と思って探しよった会社のひとつが「IDEO」で、もうひとつが「frog」。2つはいわはNIKEとadidasみたいなコンペティター(競合)の関係ですね

はい、覚えとこう。「IDEO=アップルの最初のマウスを作った会社」。すげーなー、おい。

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プロダクトデザイナーとして入社したIDEOでしたが、そこで聖昇さん、新たな概念に出会います。え、それもデザインなの!?

IDEOはもともとプロダクトデザインの会社ですけど、今はデザインの意味が拡がっていて。「街のデザイン」とか「仕組みのデザイン」とか、デザインの手法や考え方を他の問題解決にも使用するっていう。いわゆる「デザイン・シンキング」「デザイン思考」を体系化したのがIDEOなんです

はい、これも覚えとこう。「デザイン・シンキング/デザイン思考」。今日は新語、新概念がバンバン出ますよ!

当時はiPhoneがすごく伸びてる時期で、それに対抗して僕らはandroidのOSをデザインする仕事を請けたんです。「OSのエクスペリエンスをデザインする」といった方がわかりやすいかな? 機能だったり、操作性だったり、ユーザーが本当にほしいと思うものがほしいときにすぐ見れるかどうか……そういうものを考えながら作っていきました。

OSをデザインする? エクスペリエンス(体験)をデザインする?……つまりOSも体験も「デザイン」という観点で捉え直すってこと??

僕も最初はデザインって見かけやスタイルだと思ってたけど、IDEOでは「アフリカの水が足りない地域にデザインを使ってどう水を届けるか?」というプロジェクトもやってたんです。あと、大企業の次世代の働き方や、その働き方を許容できるオフィス空間をデザインする仕事もやりました。それも空間デザインというよりは、どういう働き方が理想なのか、ツールや習慣まで含めて「体験をデザインする」という感覚で取り組みましたね

「働き方をデザインする」って! ちなみに、こういうのを「UI/UXデザイン=User Interface/User eXperience」と呼ぶのだとか。はー、知らんかったー!

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後半はそんな最先端企業での仕事術について。会社の中はどんなですか?

デザイン思考の特徴は「人間中心=ヒューマンセントラル」。まず人間からはじめて、それが技術的に実現できるか、ビジネス的に持続可能性か考えていくんです。だからIDEOには心理学を専攻した人が多かったです。「デザインリサーチャー」とか「ヒューマンファクター」って言われる人でそういう人はデザイン自体はできなくても、あるお題が出たとき、実際ユーザーのところに行って観察をしたり話を聞いたりする役割なんです

さらに、IDEOはブレインストーミング、いわゆるブレストをはじめた会社でもあるらしく。本場のブレストは日本のブレストは違うようですぞ!

ブレストに関して大事なのは、否定しない、質より量、とりあえず全部出すこと。クリエイティブのプロセスって、ひとりの場合でも拡散させたアイデアから絞り込む工程を踏みますけど、それをグループでやるんです。で、拡散させながら制限をかけると拡散しきれないので、一回全部出し切って、そこから選ぶことにして。そうすると人が出したアイデアに「こうすればもっと面白いじゃん?」ってノリツッコミならぬ「ノリ・ノリ・ノリ」みたいな感じでどんどんアイデアが膨らんでいくんです。最初は平凡でも、アイデアが足されることでいいアイデアに辿りつくことが起こるんです

ポジティブな連鎖によってイノベーションまっしぐら。「否定しない」「質より量」「とりあえず全部出す」、ここも大事っすねー!

さらに聖昇さん、IDEOの後は、これまた世界的デザイン企業の「frog」に転職。しかしなんでそんな有名企業にポンポン受かるのか。面接のコツとかあるんですか?

僕は自分の得意なことを3つくらいに絞って、こことこことここは強みですってアピールしました。あと、弱いところも伝えました。正直に話した方が「こいつ正直に話してるな」って感覚は伝わると思うんです。ポートフォリオを送る場合は、見る人もたくさん見てるだろうから、パッと見て「お、こいつ気になるな!」って思わせるよう心掛けました

聖昇さんはIDEO(サンフランシスコ)⇒frog(ミュンヘン)と転職し、現在はBOSCHが創設したスタートアップ企業でドイツ在住。その世界を股にかけたフットワークの原点はどこにあるのか……そういえばサッカーやってたときって、どのポジションだったんですか?

サイドミッドフィルダーです。背が低いので上下動しないといけなくて、とにかく走ってましたね。いま仕事やってても「自分、ボール運んでるな」って思うときありますよ(笑)

聖昇さん、デザイン界の長友だったのか!? 最後に今後の野望は?

全然デザインと関係ないけど、広島のお好み焼きをヨーロッパでやりたいんです。僕にとって「食」は大事で。デザイナーとしてインスピレーションをもらうことも多いし、デザイナーとしての最終地点は日本に貢献したいという気持ちがある。あと医療にも興味があるので、どうやったらみんながハッピーに長生きできるか、そこにデザインがどう貢献できるかも考えてます

食や医療にまで広がるデザイン・シンキング。まじで運動量と視野の広さがハンパない。フロム広島で世界に飛び出した聖昇さん、ぜひまた里帰りの際は会議に寄ってくださいまし!

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2020.4.28@HFM

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