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【ココロコラム】精神科の最新情勢

今後の精神科事情はどうなっていくかを予測しますと、ますます精神科医にとって厳しくなっていくでしょう。
誠実な精神科医と、そうでない精神科医が厳しく選抜される時代が到来してくるはずです。

2016年に「相模原障害者施設殺傷事件」という悲しい事件があり、それを機に【精神保健指定医】という国家資格が100人近く取り消しになるという、精神科業界にとって前代未聞の大きな不祥事がありました。

【精神保健指定医】は、強制的に人権を奪って入院させることのできる重大な資格です。それがレポートの不正で100人取り消しになるのは、資格の根幹にかかわる重大問題です。
資格取得側の精神科医に、モラルが欠落していたと言わざるをえません。

精神科は採血や画像といった目に見える指標がありませんし、病気が目に見えてはっきり治ることも少ない科です。
「精神科なんて薬を出すだけのいい加減な科だ。でたらめだ」
という風潮が強まるのではないかというのを恐れています。

もともと、精神科に対抗して、昔から【反精神医学】という運動があり、「すべての精神病は存在しない」という考えがあります。ネットを見るとその手のホームページをいくらでも見ることができるはずです。
これは、病気が見えないことに由来しています。【反耳鼻科医学】などは存在しません。鼻炎は見えるからです。

【反精神医学】の風潮が強まると、本当に困るのは、本当の病気の方々です。
「精神科なんてダメだ。気の持ちようだ」と言われて薬をやめてしまい、どんどん病気が悪くなってしまう人が、残念ながらたくさんいます。
精神科は生物学的な病気の部分と、「気の持ちよう」の、精神的な部分の両方を扱う科です。
「気の持ちよう」や「気合」で何とかなる人は、少数はいるでしょうが、大多数の人は、薬と、専門家のアドバイスの力を借りたほうが早く回復するのです。

企業でのストレスチェックが義務化されています。
それで「高ストレス」「必要に応じて医者の面談」を要するなどと出た方は、ためらわずに医者の力を借りましょう。
ここで、自分の力や「気の持ちよう」だけでなんとかしようと無理をしないようにしてください。

では、どういう精神科医に相談すればよいのでしょうか。
【精神保健指定医】は、強制入院の資格があるというだけで、必ずしも面接スキルが高いとは限りません。
精神科医の資格としては、【精神科専門医】もありますが、これも持っていて当然の資格でもあり、あまりあてになるものでもありません。
(逆に、この2つとも持っていないようであれば、まともに精神科を勉強していないので、ちょっと敬遠してもいいかもしれません)

資格よりは話しやすさです。
結局、精神科医は話を聞くことで患者さんを治療していくわけです。
聞く姿勢がなく、ただ電子カルテを打ち込んでいる医師や、あるいは自分だけがしゃべっている医師がけっこういます。
そういう精神科医は、外科で言えばメスがきちんと持てていません。

まずは患者さんの話を聞き、相手にきちんと向き合えているか。
当たり前のことですが、それがきちんとできている医者に相談してみるのがよいでしょう。
肩書きや経験年数や経歴に関係なく、自分との相性で自分で見つけていくのが一番早いと思います。
精神科医は当たりはずれがかなりあります。患者さん側で選別する目をもってみてください。

(精神科医・西村鋭介)

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