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上出来な日々 11/23

久しぶりに心穏やかに映画をみている(そんな場合じゃ無いのだが)。最近観た映画や最近読んだ本のまとめ。

穏やかで内省的なBGMとともに……。


映画

続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画

サシャ・バロン・コーエンが演じるボラットというレポーターが(架空の)カザフスタンからアメリカへいき、政権安定のために貢物をする……、というコメディ。ブラックジョークのオンパレードであり、人とみる場合は注意が必要である。

基本的に出演者はアポなしドッキリというスタイルで、街中の普通の人が出てくる(正直、私は死んでもこのドッキリにあいたくない)。

作中で、何度も思わず笑ってしまうのだが、あまりにも悪質でダークなジョークなので、なぜ自分は笑ったのか……?と自問自答が始まり、笑ってしまった自分が信用できなくなる、という怖い映画だ。

ベビーシッターの女性とシナゴーグで出会う女性に尊敬の念がわく。


新聞記者

「守るべき国家とは何か」「自分の信条は何か」という重いテーマ。真実を世に出す重みと官僚の葛藤が描かれていて、さらに現実のトピックスともリンクしており、複雑な気持ちになるが、見てよかった。

最後、彼は何を伝えようとしたんだろうか。実名での報道を許可したのだろうか、彼の上司と同じ道を歩まないで欲しい、と願っても、自分自身の生活を守るという枷を外すことは難しい。

少し話が逸れるが、生活を仕事の人質にとる表現が私は大嫌いだ。
仕事上の陰湿な事柄の半分は、生活が人質にとられているから起こっている気がする。
ベーシックインカムがあれば内部告発もしやすくなるのではないか、と思ったりするが、映画内で描かれるような情報操作で痛めつけられる苦しみは減るわけではない……。
そして、信じていたものが揺らぐことに耐え続けることはとても辛いことだ。

彼は最後何を言おうとしたんだろうか。何を謝ったんだろうか。


この映画の前にBlood Diamondをみようと思ったのだが、心優しい黒人男性の知り合いの顔がチラついて辛すぎて冒頭のシーンを見れなかった。という話だけ、今度、彼にあったらしよう……、と思っている。


ブルシット・ジョブ / デヴィッド・グレーバー

とても面白かった。「労働」という聖域に切り込んでいく本書は、とても清々しい気持ちになる。なぜ、多少無意味であってもとても苦しくても「労働は尊い」とされるに至ったのかという歴史的な流れも考察されていて、面白かった。

私が嫌いな言葉の一つに「働かざる者食うべからず」という言葉がある。どんな人も幸せに生きれる世界を目指すとするならば、「働かざる者もモリモリ食べられる」社会が理想なのではないか?早く「働かざる者食うべからず」という言葉が、野蛮な過去のものになって欲しいものだ。

アナキストを自称する筆者の言葉にどきりとしたのでここに記載しておく。

差し迫った問題に対して、政府や企業により多くの権力を与えてしまう解決策よりは、自分たちの問題を自分たちの手で対処できるような手段を人々に与えるような解決策の方を好みのが、また、アナキストであることの意味である。

私もこの姿勢は忘れないようにしたい。


砂漠が街に入り込んだ日 / グカ・ハン

韓国から渡仏したグカ・ハン氏による短編集。原文はフランス語で書かれている。

「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んだ時、「これは、本当に韓国の話なのか?日本の、いや、私の話なのではないか?」と思って驚いた。儒教の考えが根強いキリスト教の国、私の中での韓国のイメージはこういう感じだったのであるが、キム・ジヨンを読んで、まるで双子だ、と思った。韓国と日本は、まるで双子みたいだ(けれど、この先の未来は全然違うだろうと思う)。

砂漠が街に入り込んだ日も同じような気持ちになる。これは果たして外国の小説なんだろうか?

短編集の主人公は、全員、社会や周りの世界から疎外されており、その状況が淡々と書かれているのは、どことなくアンナ・カヴァンを思い出す。ただ、主人公たちは移動し、なんとか自分の居場所を見出そうとしていて、力強さや希望がある。

韓国出身の面白い作家がたくさんいるようだと、ようやっと気がついたので、チェン・イヒョンの「優しい暴力の時代」という小説も買った。読むのが楽しみだ。


音楽

future - 玉名ラーメン
お腹が空くアーティスト名なのだけど、最高にかっこいい。


通信販売

学生の頃から、時折、Big Issueを買っていたのだが、最近はめっきり外に出なくなってしまったので、ありがたく通信販売に参加させてもらっている。定期的に冊子が届いて嬉しい。


最後まで読んでくれてありがとう。