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映画の記録

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#映画

Promising Young Woman

医療崩壊が起こるだろうと思って、東京でオリンピックを行なっている間、実家に引きこもっていた。ベランダから外を眺めて、空が広いなぁとぼんやり思っていた。他の国では、反政府勢力が首都を制圧して、私と同じ性別の人々の生命が脅かされているのに。 東京に戻って、自分の年代としては大変幸運なことにFully vaccinated peaple(日本語ではフルチン)の仲間入りをしたので、静かに映画でも観ようということで、ずっと見たかった Promising Young Woman を見に

TENET/もう終わりにしようにみる「孤立」と「反復」というテーマ

TENETのこの考察記事がとても面白かった。 TENETを見終わった後、不思議と「もう終わりにしよう」という映画を思い出した。なぜか深く考えなかったのだが、上の記事で合点がいった。 「孤立」と「反復」というテーマが同じなのである。 そして、この孤立と反復は非常に男性的だ、と感じた。 TENETの主人公は世界を救う人間は一人じゃないという老婆に対して「自分が主人公だ」と言い切る。世界の中心が自分であるかのような言い方は、非常に妄想っぽい。 主人公には名前が無く、それも一

もう終わりにしよう

「もう終わりにしよう」という映画を観た。久しぶりに難解な映画を観て、全く内容が分からず、それでもなんとか最後まで観て、悲しい気持ちになった。 ホラーのような暗いテイストでありつつ、なんとなく知っている作風だなと思っていたら、エターナル・サンシャインで脚本を書いた方が撮っていた。マルコビッチの穴とか。 観終わって、ジェイクという男性と高校の用務員さんがおそらく同一人物で、というところまでは分かったのだが、ジェイクの彼女のアイデンティティはどんどん曖昧になり、どこかへ消えてし

フィラデルフィア

ゲイ映画、と呼んでいいのかわからないけれど、重要な男性の登場人物の性的指向が男性、という映画をしばらく見続けていた。 あらすじも見ないでジャケットの雰囲気に惹かれた映画を適当に観てみたら主人公がゲイだった、ということが続いていただけなのだけど、恋愛映画の繊細さと男同士の力任せのシーンがあわさっていて、好きな映画が多い。 ラブと絶望の果て、という感じがする。 それから、思春期、本当に考えていることを大人に言うと疎外されてしまうような気がしていた私には、周りの目と自分の立ち

クライマックス

ギャスパー・ノエのクライマックスを観た。 今年一番怖くて、今年一番観なけりゃよかった、と後悔する映画だった。 最初のダンスシーンはすごくカッコ良くて、音楽も最高で、カッコいい!!タイポグラフィもクール!!と思っていたのも束の間、徐々に雲行きが怪しくなり、ホラー映画もクライム映画もヘッチャラの私が震えるほど怖くて、心の底から帰りたくて仕方なくて、それこそトラウマになりそうというか、観ているこっちもオーバードーズになりそうという、かなりヤバい映画だった。 観終わって本当に気持

去年マリエンバートで

映画を観た。白黒映画。去年マリエンバートで。 映画のあらすじは……と質問されると戸惑ってしまうけれど、ざっくりというと駆け落ちをしようとする男女の話。一年前に駆け落ちの約束をしたけれど、女性は全く覚えていないようで、男性が色々と言い続ける、という。 けれど、このあらすじは多分見る人によって変わると思う。上はおおよそ多くの人が感じるあらすじ。 私という優柔不断な人間から見たあらすじは以下のようなもの。 この話、ある男性に襲われてはもう夫といることはできないと思っている女

ボーダー 二つの世界

映画を見た。ボーダーふたつの世界。 ネタバレすると思うので、これから見る人はまた今度。 大変なものを観てしまった、と思った。隣に座っていたおばさまも「ねぇ……、すごいもの見ちゃったねぇ」とヒソヒソしていたので、この感想は私だけじゃない。 薄気味悪いものが美しくなり、不完全だったものが完璧に、人だと思っていたものが人でなしになる。 境目なんてあるようでない。 私が一番感動したのは、序盤から鼻をひくひくさせたり、手でものを食べたり、犬にやたらと吠えられたり、動物的で薄気味