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クライマックス

ギャスパー・ノエのクライマックスを観た。
今年一番怖くて、今年一番観なけりゃよかった、と後悔する映画だった。

最初のダンスシーンはすごくカッコ良くて、音楽も最高で、カッコいい!!タイポグラフィもクール!!と思っていたのも束の間、徐々に雲行きが怪しくなり、ホラー映画もクライム映画もヘッチャラの私が震えるほど怖くて、心の底から帰りたくて仕方なくて、それこそトラウマになりそうというか、観ているこっちもオーバードーズになりそうという、かなりヤバい映画だった。


観終わって本当に気持ち悪くて、何度もえずきながら、「この監督はヤバい、全然この映画好きじゃ無いけど、鬼才だ」と思った。

それで後から調べて、ギャスパー・ノエさんという監督はどうもフランス映画界の鬼才と呼ばれているらしいと知った。
いや、まぁ、そうだろうな。本当にヤバかった。


なにが怖いって、理性で抑えられていた部分がドラッグのせいでどんどん解放されてめちゃくちゃになっていく、と、ここだけ聞くと映画によくあるテーマじゃん、という感じだけど、この映画では素晴らしい身体を持ったダンサーの動きが「頭のなか中がグルグルでもうわかんない、けど、何かがおかしい、何かがおかしい」という恐怖やぶっ飛んじゃってる様子をものすごく雄弁に語ってくる。
言葉なんかよりずっとダイレクトに怖い。

なんていうか、地獄。
しかも、全部あり得るし、これのミニバージョンみたいなのって飲み会とか人生のどこかで経験している気もする。

ゾンビ映画とかホラー映画っていうのはフィクションだし、という逃げ道があるし、クライム映画も犯罪だし、という逃げ道があるけど、この映画にはそういう逃げ道は全く用意されていない。

ただ、普通に起きそうな地獄。


いや、本当、気持ち悪い!と観終わった瞬間に叫びそうになったけど、そこまで嫌悪させること自体、この映画が素晴らしいことの裏返しなんですよね……。そんな映画、なかなかない。


アルコールは程々に、とか、ドラッグ禁止の啓発映画としても有能だと思います。

最後まで読んでくれてありがとう。