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フィラデルフィア

ゲイ映画、と呼んでいいのかわからないけれど、重要な男性の登場人物の性的指向が男性、という映画をしばらく見続けていた。

あらすじも見ないでジャケットの雰囲気に惹かれた映画を適当に観てみたら主人公がゲイだった、ということが続いていただけなのだけど、恋愛映画の繊細さと男同士の力任せのシーンがあわさっていて、好きな映画が多い。

ラブと絶望の果て、という感じがする。

それから、思春期、本当に考えていることを大人に言うと疎外されてしまうような気がしていた私には、周りの目と自分の立ち位置が妙に刺さるものがあった。


観た映画は……
ブエノスアイレス、Tom at the Farm、戦場のメリークリスマス、マイプライベートアイダホ、ベルベット・ゴールドマイン、ムーンライト、ウィークエンド、など。


そんな中で、フィラデルフィアだけは「観なくては」と思ってみた。
「観なくては」の理由は簡単で「古典だから、教養としてみておいた方がいい」というやつ。

感想としては、ちょっと見る人が見たら説教くさすぎて嫌、とか、教科書みたいで嫌、とか言われそうではあるけど、私は結構いたく感動してしまった。


以下、あらすじでネタバレなので、あとで観たい人は読まないでね。

この映画は、エイズによる差別で解雇されてしまった主人公のベケットが裁判を起こす話なのだけれど、その弁護を引き受けたミラーと主人公の関係が好きだった。

ベケットはゲイなのだが、異性愛者のミラーは「ゲイ」というものがどうにも理解できないというか、腑に落ちない存在というか、ともかく「ゲイは嫌いだ」というスタンスは最初から最後まで変わらない。

ミラーも最初はベケットの弁護を断るのだけれど、自分もエイズという病気を理解しておらず「同性愛者の病気」として偏見を持ち、差別している自分に気がつく。そして、誰も引き受けなかった弁護を引き受ける。
(ミラー自身、黒人なので、恐らく差別される立場に立つことがあったはずだ)

ゲイは嫌い、だけど、偏見による差別はあってはいけない。差別によって不利益を被っているならば本人の権利を回復しなくてはならない。


このプロットは「相手の属性は好きではないとしても、その人の人権は守られるべき」ということが、もうこれでもか!というくらい明らかに描かれているので、あまりにも倫理的すぎるというか、古き良き思想の映画とでもいうか、つまり説教くさいと言われるかもしれないけれど、それでも、私はいい映画だと思っている。

正直物事の好き嫌いというのは本人の努力でどうにかできる話でもないし、自分の中に植え付けられている偏見というのも一朝一夕でなんとかできるものでもない。だからと言って、その好き嫌いや偏見が相手の持つ権利を損ねていいわけじゃない、というのは当たり前の話なのに、すぐ何処かへ消えてしまいそうになる。

例えば、パチンコに入り浸って仕事をしない人がいるとする。その話に、ついイラッとする。なんやねん、仕事せえや、と思う。
もうそう思ってしまうのは、仕方がないかもしれない。ただ、そのイラッは相手の権利を奪ったり、制限したり、差別したり、排除したりすることへの免罪符ではない。

ということを、フィラデルフィアは私に教えてくれたのでした。いい映画だよね。


閑話休題。

さっきあげた映画はどれも好きだけど、ブエノスアイレス、もう一度みたいな。

あと、あまり関係ないけど香港に行きたいな。香港の雰囲気が好きだ。移動のほとんどが飛行機になってしまった今でも(いや、この瞬間、移動のほとんどは停止しているのだけれど)港街は世界中に繋がってる感じがしてワクワクする。

でも、もちろんしばらくは難しいね。このツイートみて、驚きはしなかったけど、それでもSF映画でもみてるような気持ちになってしまった。


最後まで読んでくれてありがとう。