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映画の記録

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#日記

Aftersun

2週間ほど前にAftersunをみた。 父と子の一夏の思い出映画なのだが、この最後のシーンに何度も思いを巡らせてしまう。 映画の中で父カラムの不安定な姿や自殺を想像させるカットが何度も描かれる。カラムの経済状況は離れて暮らす11歳の娘ソフィに揶揄われるくらい芳しくないらしい。カラムは自分が生まれ育った環境から、自分が育った町を「ふるさと」と感じることもできない。途中のレイヴシーンでは誰かを探しているような大人になったソフィが、フラッシュでよく見えないが切れ切れに映される。

Promising Young Woman

医療崩壊が起こるだろうと思って、東京でオリンピックを行なっている間、実家に引きこもっていた。ベランダから外を眺めて、空が広いなぁとぼんやり思っていた。他の国では、反政府勢力が首都を制圧して、私と同じ性別の人々の生命が脅かされているのに。 東京に戻って、自分の年代としては大変幸運なことにFully vaccinated peaple(日本語ではフルチン)の仲間入りをしたので、静かに映画でも観ようということで、ずっと見たかった Promising Young Woman を見に

もう終わりにしよう

「もう終わりにしよう」という映画を観た。久しぶりに難解な映画を観て、全く内容が分からず、それでもなんとか最後まで観て、悲しい気持ちになった。 ホラーのような暗いテイストでありつつ、なんとなく知っている作風だなと思っていたら、エターナル・サンシャインで脚本を書いた方が撮っていた。マルコビッチの穴とか。 観終わって、ジェイクという男性と高校の用務員さんがおそらく同一人物で、というところまでは分かったのだが、ジェイクの彼女のアイデンティティはどんどん曖昧になり、どこかへ消えてし

フィラデルフィア

ゲイ映画、と呼んでいいのかわからないけれど、重要な男性の登場人物の性的指向が男性、という映画をしばらく見続けていた。 あらすじも見ないでジャケットの雰囲気に惹かれた映画を適当に観てみたら主人公がゲイだった、ということが続いていただけなのだけど、恋愛映画の繊細さと男同士の力任せのシーンがあわさっていて、好きな映画が多い。 ラブと絶望の果て、という感じがする。 それから、思春期、本当に考えていることを大人に言うと疎外されてしまうような気がしていた私には、周りの目と自分の立ち

北限の猿 -- What kind of ape am I?

数日前、noteでこっそり人の日記を読んで、どうも面白そうな劇が行われているらしいことを知った。青年団の「北限の猿」という舞台である。 最近、観劇していなかったところに、思わぬ出会いというか、せっかくその日記を読んだのも何かのご縁と思って、さっそく仕事帰りに見に行くことにした。 あらすじは以下の通り。青年団のHPより拝借。 (1992年初演)*科学シリーズ第2作 日本の某国立大学の生物学実験室。 遺伝子操作の技術が急速に進む中、猿を人間へと進化させる「ネアンデルタール作

クライマックス

ギャスパー・ノエのクライマックスを観た。 今年一番怖くて、今年一番観なけりゃよかった、と後悔する映画だった。 最初のダンスシーンはすごくカッコ良くて、音楽も最高で、カッコいい!!タイポグラフィもクール!!と思っていたのも束の間、徐々に雲行きが怪しくなり、ホラー映画もクライム映画もヘッチャラの私が震えるほど怖くて、心の底から帰りたくて仕方なくて、それこそトラウマになりそうというか、観ているこっちもオーバードーズになりそうという、かなりヤバい映画だった。 観終わって本当に気持

去年マリエンバートで

映画を観た。白黒映画。去年マリエンバートで。 映画のあらすじは……と質問されると戸惑ってしまうけれど、ざっくりというと駆け落ちをしようとする男女の話。一年前に駆け落ちの約束をしたけれど、女性は全く覚えていないようで、男性が色々と言い続ける、という。 けれど、このあらすじは多分見る人によって変わると思う。上はおおよそ多くの人が感じるあらすじ。 私という優柔不断な人間から見たあらすじは以下のようなもの。 この話、ある男性に襲われてはもう夫といることはできないと思っている女