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【読書記録】九段理江さんの『Schoolgirl』を誤読した話。

九段理江さんの『Scoolgirl』を誤読した話をします。

芥川賞作家、九段理江さんの初単行本ですね。
九段理江さんは『しをかくうま』がとても興味深かったので、初期作品(2021年の作品)を読んでみました。

「Scoolgirl」

母と娘の関係性・現代版、というところでしょうか。
社会の変動の波に乗る女子高校生が、古いタイプの母親を詰る話、というのだけでもメンタル抉られそうなんですが(今の母は昔の娘だからだよ~ん)、そんな娘がやってるYouTubeチャンネルを、母親が漏れなくチェックしているという悪夢。いやもう、どっちから見ても地獄じゃん。

そりゃ、今の若者は生きづらいわ。
親を貶したりいきがったりするのって若者の特権なのに、それを全世界に晒しちゃったら、後々にも黒歴史として残るだけじゃなく、親に自分に対する反論材料を与えてることになる。
子どもは「うちの親は莫迦」と思ってたって、生きてる年数の違いと経験の差は伊達じゃない。
挙句、自分で白旗を引きずり寄せるようになる。そりゃしんどいって。

SNSの時代って、確かに若者にも発言の自由を与えたけど、大人と同じ土俵に最初から立つということは、おのれの無力さも突きつけられることで。
子ども社会の中でいきがる分には、仲間と共感しあうこともできたけど、SNSで発信したら、知識も教養も深い大人の海の中に浮き輪で浮かんでいるようで、孤独。一番のファンは、自分を監視している親。掌の上で踊っている猿感。

もう、合掌しかありません。
母娘に安寧の日々がありますように。

「悪い音楽」

これがデビュー作なようなんですが、無茶苦茶面白かったです。
というか、辛辣すぎて怖かった。
と同時に、文章のテンポがすごくよくて、感想メモを書いている間中、つられて韻を踏むようなラップ調の文章(というか単語の羅列)が止まらなくて、小説の魔力を感じました。

主人公は著名な音楽家を父に持つ中学教師(音楽)。
この主人公のひねくれ方がえげつなくて、そりゃ名前に「ソナタ」なんてつけられたらひねくれるって。親はあほ過ぎんか?

他人とは分かり合えない、というのが主人公の根底にあり、確かに主人公は割り切って他人と距離を置きつつ生活していて、他人の気持ちをわかろうとしない。だからトラブルになるし、なっても仕方ないと思っている。
そのくせ、自分の気持ちを相手が理解していないと、腹を立てる。自分でも気づかぬうちに。相手の能力不足のせいにして。

読んでて、ああここにもライ麦畑に生息してる若者がおるな、と思った。
批判はラクやからね。
反面、理解し合えない人はいる、というのもまた事実。
話せばわかる、と断定することは暴力、というのも、また事実。

そういう矛盾の中で、生きづらさを抱えて生きる若者、というのが描かれているのかなと思いました。中学校の先生だって、20代なら若者やん。中学生と変わらぬ猿やん。
でも、昔との違いに気づいていくことで、人間って少しずつ変わっていくんよね。ということ?

おわりに

この本の二作品は、結構ぐさぐさ刺さってくる文章で書かれているので、はらはらどきどきしながら読みました。
てか、文学ってそういうスリルどさどさなんだっけ?

恋愛を描かない小説で描かれるのは、登場人物たちの生きざま。
愛や結婚がある種の安定に結び付かない社会で、社会そのものの不安定さに翻弄されつつ、自由と服従の間で揺れざるを得ない現代人。
現代の小説で描かれる物語は、だから、はらはらどきどきするんでしょうか。

小説は、面白くてやっぱり怖いですね。

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