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【読書記録】『高校生のための経済学入門〔新版〕』を読んで考えたこと

50代なのに、小塩隆士さんの『高校生のための経済学入門』を読んだ話をします。

この本を読むきっかけは、森永卓郎氏の『書いてはいけない』を読んで、なんかもやもやしたからでした。

もやもやするけど、そのもやもやをうまく言葉にできない。
なぜ言葉にできないの? 経済ってなんなのか、いまいちよくわかってないからじゃん!
ということで、大学生向けの経済学入門はハードル高そうなので、高校生向けにしてみました。


高校生向けでも読み応えあり

高校生向けなら、なんとかついていけるんじゃないか、と思って読み始めたんですけどね。
いや、舐めてました、高校生を。
結構難しかったです。
難しかったので、必要な部分はノートを取りながら、読みました。
腑に落ちなかった箇所は、何度か繰り返し読んで、日本語と書かれている状況を理解することに努めました。

Amazonの口コミを読んでも「難しい」と言ってる人がいらしたので、ちょっと安心したりして。
ただ、若い方より、社会経験を30年も積んできた中高年の方が、多分、腑に落ちることって多いんじゃないかな……と思ったので、ハンデもらってる感じですかね。
と同時に、中高年こそ、経済学を学習しなおす必要性があるんじゃないかと、そこは本当に思いました。

この本では、ミクロ経済からマクロ経済まで、おおまかにざっくりと取り上げられています。
お小遣いのことから、政府の経済政策や貿易についてまで。少しずつ視野を広げつつ、現代の問題についても触れられています。

実は、私も大昔に大学の一般教養で経済学を取ってるんですが、需要・供給曲線の意味すら勘違いしていたことに気づき、そこから四苦八苦でした。
というか、ひょっとして、バブル期の経済学と現代の経済学って別物?
1980年代末に大学で教える経済学って、ひょっとしなくてもプラザ合意と円高不況ぐらいまでのことしかない? それくらいしか知らないよね、先生も。
アホみたいな気づきですけど、経済学ってナマモノやんか。

失われた30年ってなんなのか

今、経済学を読んで、やっぱりずっと考えていたのが「失われた30年って何だったのか」です。

市場メカニズム(需要と供給のバランス)は、モノの価格が安定する方向に動く。それはわかります。
でもそれが万能のメカニズムではないからこそ、政府の介入が必要となり、富の再分配や経済の安定を図る必要があります。
政府の介入策は、減税と公共事業と金利引き下げ! 
そこまでわかっているのに、なぜ日本は30年も停滞しっぱなしなのか?
日本病、とまで言われているのに、なぜ解決できないのか。

景気には良いときも悪いときもある。
その言葉を信じることができないほど、日本経済は失墜してしまった。
あ、今の「株価が高いから景気がいい」なんてのは、景気のいいうちに入りません。物価高に国民の所得がついていけてない状況や、資材費高騰と人手不足で中小企業が事業縮小してる状態を、自己責任論で片づけてしまうようでは、国内消費が伸びないんですよね。

政府がどんな経済政策をしても、アベノミクスを何年もやっても、国民が論理的思考をして「このツケはいずれ増税で跳ね返ってくる」と思えば、財布のひもは緩まないし、企業も融資を受けて設備投資に走ったりしない。
景気が良くなれば増税の必要はなくなる、と主張する方もいらっしゃいますが、政府はきっと増税するだろうと薄々みんな思ってる。
増税して、裏でピンハネ汚職をやって、政治家と一部大企業の懐に入っていくだけなんだろうと疑っている。

ひょっとして、政治に対する不信感から、みんな自衛手段としてのコストカットをやり続けた結果、経済政策は不振に終わり、気が付けば30年?
このことに、政府自民党さんは気づいてる?

経済成長を前提にしない

この本で、経済成長の要因を、労働力、資源ストック、技術進歩とされているんですが、今日日そんなの全滅やんって非正規労働者でもわかるよ。
日本人の中央値がもはや50代なので、この先労働力は減少する一方だし。
そもそも資源のない国で、かつ円安だから、海外で買い負けるのは目に見えてるし。
大学の基礎研究を軽視し続けてきた結果、新しいモノづくりもできないし。

それならそれで、身の丈に合った経済規模に落ち着くしかないやん、とも思うけど、国の経済制度が、経済成長と人口増加を前提として成り立っているんですね、あほか。
こういう話をすると、高齢者の年金を減らせとか医療費削減しろとかいう意見が必ず出てくるんですけど、そういうことを政治家が言うから余計に経済が悪化するという、アレですね。将来に不安を抱えて、誰が金を使うかっての。20年くらい前に大問題になりましたよね、消えた年金。

少なくとも、一部の大企業に利益が回るための政策や、目先の巨利に目がくらんだような近視眼的な政策をするのではなく、10年先20年先50年先を見据えた政策になけなしの税金を注ぎ込まんことには、あかんのんやない? と思うんですけど。
なんか、政治家の方たちって、お金の感覚バグってるんじゃないかとときどき思うんですが、バグってるから経済も少子化もぐだぐだになるんだよ。

おわりに

バブルの頃、日本は「経済は一流、政治は三流」と世界から言われていて、東京は世界で最も物価の高い街で、欧米の人たちが「東京の物価は高くて、旅行に行ってもあんまり買えない」と言っていたのを、ちょっと誇らしく思ったりしていました。遠い昔。
バブルが崩壊しても、いずれまた持ち直す日が来るだろう、そんなふうに思ってた人は多いと思うんですね。
まさか「政治は三流」が、ここまで尾を引くとは。バブルを崩壊させたのも、政府でしたしね。

日本経済に特効薬はない。GDPを下げていくのもやむなし。
それでも、ひとりひとりの庶民がそれなりに生活できていれば、いいんじゃないか。
著者の小塩隆士先生はそうおっしゃってます。私もそれは思います。

経済とは経世済民。世の中を治め、人々を苦しみから救うことであって、かの儲けのことではありません。

『高校生のための経済学入門』ですが、社会人こそ読むべき本だな、と思いました。

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