30代女性編集者が、こども本5冊読んで語り合ってみた。こどものマネしたいのはどんなとき?
果たして、子どもの頃にみんながもっていたはずの「こども力」ってなんだろう? 大人はどうやって「こども力」を活かしていこう?
「こども力」は鍛えるもの
◆ニレ:
子どもの気づく力とか発想力って、ものすごいな。大人にも「こども力」はあるはずやけど、フタしちゃうなぁ。
★はる:
なんで使えなくなっちゃうんだろう?
◆ニレ:
メタな視点のせいかなと思った。大人になると、もうひとりの自分が自分をコントロールする。メタ視点があるのが大人だけど、それによって「こども力」は抑圧されるかも。
■ウメ:
大人は気になることがあっても、「それって意味ある?」とか立ち止まっちゃうもんね。
●おじ:
こどもは未来より今が楽しいことが大事。『子どもは40000回質問する』では、アメリカでのこどもによる銃の暴発事故の多さについて書いてあった。引き金を引きたい!という好奇心が勝って、結果のことを想像できてないから。
◆ニレ:
そっかー。こどもは想像力があると思いがちだけど、たしかに、知識や経験がないとイメージできないことも多いよね。
★はる:
知識が想像力を養うのか。ということは大人になるにつれて、想像力は伸びる!?
◆にれ:
そう。だからこどもがいいってわけじゃない。好奇心も想像力も、知識や経験をもとに、鍛えていくべきものなんやね。「大人のこども力」こそ最強かもしれへん。
知識や情報が「ない」ことの強さ
★はる:
今と昔では、寝ているときの夢も違う!小さいころは、鬼や怪獣も出てきてファンタジックだったのに、いまの夢は超現実的(笑)。子どものころの飛躍はどこへ……。
◆ニレ:
小さい頃って本気で空飛ぶ練習してたもんな。
●おじ:
『想像力』には、現実に「ないもの」を想像する力は人間しか持ってないって書いてあった。
■うめ:『ことばのしっぽ』を読んでも、「ない」ことの力を感じた!手持ちの言葉がないからこそ、ありあわせで詩をつくれる。
★はる:適切な言葉の組み合わせを知らないからこそ、ユニークな表現ができることもあるんだね。
◆ニレ:希望のある話やな。大人も知らんこと山ほどあるけど、それを逆手にとれば、これまでにないイノベーティブな発想ができる?!
答えのない問いに向かう努力と勇気
◆ニレ:そういえば、4歳の息子に「地球は丸い」って教えていいのか迷ってる。知っちゃうと、考えなくなるやろ。知識がないからこそ、いろんな仮説を考えられると思って。
★はる:
『センス・オブ・ワンダー』でレイチェル・カーソンは「知ることは感じることの半分も重要じゃない」って言ってた。感じることこそが、まず大事。
◆ニレ:
その言葉、響くわぁ……。でも「感じる」って結構ムズい。その日のこと振り返っても、心の動きなんてマジで思い出せない(涙)。
●おじ:
そういう人は、意識的に自問自答するといいのかも。『想像力』のなかに、こどもが作文を推敲する例があって。頭の中にあるもやもやも、自分で自分に質問していくと、だんだん気づきが言葉になってくるみたい。
■うめ:
自分以外の誰かに質問してもらうのも大事そう。質問されると、自分では気づけなかったところに意識がむくし。
★はる:
逆に、答えてくれる人の存在をもっておくことも重要な気がする。『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え』を読んでいると、こどもの質問に、大人が誠実に答えているのが素晴らしいなと思って。適当に処理しないで、一緒に考えてくれる人の存在ってすごく貴重。
◆ニレ:
質問してくる人と、質問できる相手をどっちももつ。それが「こども力」を育てる環境なんかな。
■うめ:
大人は自分の答えられない質問ってこわいけど、自分を超えるような問いに出会っていく勇気が大事なんだろうね。そもそも、世の中には正解がある問いばかりじゃないしね。
今回とりあげた5冊は、以下の記事で詳しく紹介しています。
旬感本1冊目
●『センス・オブ・ワンダー』
レイチェル・カーソン(著) 上遠恵子(訳) 新潮社 1996を紹介しています↓
旬感本2冊目
●『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え: 100の質問に100人の第一人者が答える』 ジェンマ・エルウィン・ハリス(編) 西田美緒子(訳)河出書房新社 2023
旬感本3冊目
●『子どもは40000回質問する
あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力』 イアン・レズリー(著) 須川綾子(訳 ) 光文社 2022 を紹介しています↓
旬感本4冊目
●『ことばのしっぽ - 「こどもの詩」50周年精選集』 読売新聞生活部(監修) 中央公論新社 2023 を紹介しています↓
旬感本5冊目
●『想像力 生きる力の源をさぐる』 内田伸子(著) 春秋社 2023 を紹介しています↓