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おすすめの書籍

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ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
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#日本史がすき

「何かを封印している?」異形の三柱鳥居が意味するもの──京都・木嶋坐天照御魂神社をめぐる2つの「謎」

文=古川順弘(文筆家) 秦氏の里に鎮まる木嶋坐天照御魂神社 京都・太秦にある大酒神社から東に10分ほど歩くと、木嶋坐天照御魂神社の鳥居前に出る。現在の祭神は天之御中主神とほか4神(大国魂神・穂々出見命・鵜茅葺不合命・瓊瓊杵尊)。社名の「木嶋」は社地一帯の古地名で、そのため「木嶋社」を通称とする。現在は宅地に囲まれているが、かつては木嶋という名にふさわしく、周囲には巨樹が繁茂し、境内にある「元糺」と呼ばれる池の水量も非常に豊かだったという。境内社に養蚕神社があるため、「蚕の

なぜ、京都・賀茂神社は2つに分かれているのか?──上賀茂神社・下鴨神社の気になる関係性

文=古川順弘(文筆家) 糺の森に覆われた広大な境内 京都の賀茂神社は上賀茂神社と下鴨神社の2つから成るが、古い時代には上賀茂神社、すなわち賀茂別雷神社しか存在しなかった。言い換えれば、かつては上も下もなく、ひとつの賀茂神社しかなかった。ところが、のちにこの賀茂神社(賀茂別雷神社)から分立されるかたちで下鴨神社、すなわち賀茂御祖神社が誕生した──このような見方が、現在では通説的な地位を占めつつある。  ならば、いつ、なぜ分立されたのか。この問題を探る前に、まずは下鴨神社の

平安京以前の京都には何があったのか?

文=古川順弘(文筆家) 喧騒の京都を離れて辿る静謐の古社たち 日本の観光地として長らくナンバーワンの人気を誇ってきた京都だが、近年は観光客の過剰さが話題にのぼることが多い。とくに目を引くのは外国人観光客の多さだ。そして観光客の大幅な増加は、騒音・ゴミ・渋滞・マナー違反などのトラブルを引き起こし、いわゆるオーバーツーリズム(観光公害)という問題を生じさせている。  インバウンドも含め、京都を訪れる観光客はコロナ禍で一時は激減したものの、コロナへの警戒が薄れるにつれて着実に

いま、この時代に『古事記』を読むことの意味

 本居宣長は明和元年(1764)、35歳のときに『古事記』の注釈に着手し、35年間をついやして、寛政十年(1798)六月十三日に、『古事記伝』全44巻を完成させた。宣長69歳のときである。この前人未踏の精確な注釈書は、近世のみならず、現代においても高い評価を得ている。そこではじめに、宣長が『古事記』に興味を持ち、その注釈を決意したきっかけを簡単に述べておきたいと思う。  宝暦七年(1757)、京都遊学を終えた宣長は、松坂(三重県松阪市)に帰り、魚町で町医者を開業していた。そ

2023年は親鸞聖人御誕生850年!劇的な生涯と思想を知る2選

2023年は親鸞聖人の御誕生850年という節目の年であり、2024年は浄土真宗立教開宗800年の節目の年でもあります。ここでは親鸞聖人の事績や思想を知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 図解 歎異抄 たよる まかせる おもいきる 齋藤 孝 著 「歎異抄」は、鎌倉時代後期に書かれた日本の仏教書として知られ、作者は親鸞に師事した唯円とされています。現代でも司馬遼太郎や吉本隆明、西田幾多郎、五木寛之などの知識人・作家にも多大な影響を与えたことで知られています。 鎌倉仏

なぜ、親鸞は越後へ流罪となったのか?──御誕生850年で振り返る「非僧非俗」の精神

山折哲雄 編 鎌倉時代には異端とされた「専修念仏」「南無阿弥陀仏」の「南無」というのは、サンスクリット語の「ナマス」の音写で、「私は帰依します」という意味です。阿弥陀仏(阿弥陀如来)は、サンスクリットの原名(アミターバ、アミターユス)にもとづけば、「無量の光と寿命をもつ仏」になります。 したがって、「南無阿弥陀仏」と称えることは、「無量の光と寿命をもつ仏」への絶対的な帰依と信仰を表明することであり、この御仏を称嘆することになります。しかも、その阿弥陀仏は、娑婆世界から西方

なぜ今年の大河ドラマは家康なのか?

文=城島明彦(作家) 「不断桜」に重なる徳川家康の生き様「戦国の三英傑」を桜に喩えると、織田信長は「しだれ桜」、豊臣秀吉は「八重桜」、徳川家康は「不断桜」ではないかと考えます。不断桜というのは、三重県鈴鹿市の子安観音寺の境内にある「白子不断桜」のことで、四季を問わず花をつける不思議な桜の呼称です。 観音寺から家康最大の危機を救った白子港までは、そう遠くはありません。家康は信長と軍事同盟を結んでいたために、「本能寺の変」で明智光秀に命を狙われ、滞在先の堺から決死の「伊賀越え

2023年大河ドラマ「どうする家康」天下人に至る激動の生涯を知る2冊

2023年大河ドラマの主人公は徳川家康。主演が松本潤ということもあり、放送前から話題を呼んでいます。三河の弱小大名から天下人まで上り詰めた家康の激動の生涯をどのように描かれるか大変注目されます。ここでは家康の事績や人となりを知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 家康の決断 天下取りに隠された7つの布石城島 明彦 著 三河の弱小大名の家に生まれ、幼少期は人質を体験し、のちに天下人となった徳川家康。多くの日本人には「天下人」「成功者」のイメージが強いことでしょう。だが

【最澄と空海】日本仏教の礎を築いた二人の先駆者、その軌跡をたどる2冊

2021年に最澄(伝教大師)は没後1200年を迎えました。また、2023年には空海(弘法大師)が生誕1250年、真言宗開宗1200年という節目の年を迎えます。 同じ遣唐使船で唐を目指したエリート層「最澄」と無名僧「空海」。その交流は当初、師匠と弟子という形で10年近く続きましたが、ある時を境に疎遠になります。 ひとつは、最澄が空海に『理趣釈経』という経典を貸して欲しいと申し出たのに対し、空海がそれを拒絶したこと。もうひとつは最澄の弟子の泰範が空海の元に修行に行き、そのまま

4月8日は、仏教の日。

4月8日は「仏教の日」です。 お釈迦様が旧暦の4月8日に生誕したという伝承に基づき、2014年に世界41カ国の仏教指導者が集った仏教サミットで定められました。6世紀に日本に伝わった仏教は、日本文化を語るうえでも欠かせない存在として、私たちの生活の至るところに影響を与えています。 ここでは、そんな仏教にまつわるおすすめの書籍7点をご紹介したいとおもいます。 仏像に会う 53の仏像の写真と物語 西山 厚 著 美しい仏像には、たくさんの願いが託されている。仏教美術史学者の