幅広い知識がつくような選択を

久しぶりに『RANGE』を読み返している。

深い専門性と幅広い知識はトレードオフの関係にある。一つのことに特化し、専門家となるためにはコストがかかる。かといって幅広い分野に手を出せば、どれもが中途半端になる。ではどちらがいいのか。

本書はタイトルを見れば分かる通り、幅広い知識が重要だと主張している。もちろん専門特化した方が強い分野もあることは認めているが、それはルールが明確で、迅速かつ正確なフィードバックが得られる特定の領域においてのこと。世の中の大半の領域はそうではなく、幅のある知識と経験を持っている方が強いというわけだ。

読み返していて気がついたが、本書は個人に焦点が当たっている。個人で成功するためには、一人に知識の幅があった方がよい。しかし多くの仕事は一人で行わず、複数人のグループでやるものだ。ならば一人に求められる知識の幅は狭くてもいいから深いほうがいいのではないか。

『多様性の科学』では『RANGE』と似た主張が行われる。異なる分野の知識を組み合わせることで、イノベーションが生まれるというような。ただ違うのは『多様性の科学』は個人の中にではなく、組織の中に多様性を求めることだ。そうすることで様々な知識や視点から問題を捉え直すことができ、新たな解決が生まれる。

複数人で取り組む場合、中途半端な知識・技術の人間が集まっているよりも、異なる専門家が集まっている方が力を発揮できそうだ。ならば個人がすべきことは自分の専門分野を深めつつ、異なる分野の人とコミュニケーションをとれるようになることだろう。

こうなるとまるで『RANGE』の主張は間違えているように見える。しかし、本書の主張の中には、個人にしか適用できないものがある。それはマッチングだ。

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