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七夕の短冊に「おかあさんになりたい」と書いた息子へ。

長男が3歳だった頃の話。

まだ幼稚園には通っておらず、未就園児向けのプレ幼稚園に月二回行っていた。今日はその頃のエピソードを書きたい。


長男はおとなしい子だった。体は大きかったが成長はゆっくりで言葉も遅かった。気が優しく控えめ。じーっと様子を伺ってから行動するような子だった。

一方で私はと言うと、育児にあまり自信が持てずにいた。

いや、違う。「育児」と言うよりも「母親である自分」に自信がなかった。

初対面の人に対して、自分一人ならうまくやれても「母親として」だとうまくいかなかった。

母親ならどうするべきか。母親らしい行動をしなければ。そんな事で頭がいっぱいでガチガチになってしまっていた。うまく話せなかった、動けなかった。

だからプレ幼稚園に通うのも本当は憂鬱だった。

でもいきなり毎日通い始めるよりも、母子共に幼稚園という場所に少しずつ慣れていきたかった。

長男は人見知りで社交的ではない。そしてその姿に自分を重ね合わせてしまっていた。私と長男は別の人間だという意識がなかった。


ところが私の予想に反して長男はプレ幼稚園ですぐに友達を作った。

前に出る事はしないものの、お友達のそばに自然に近づいて行き、そして同じタイミングで笑う。会話はなくてもコミュニケーションがとれている。すごいぞ長男!

そこには今まで見たことのない長男の姿があった。子供は親が教えなくても自然に学んでいくんだなと実感した。長男の性格を勝手に決めつけていた事を反省した。

心配しなくても大丈夫だ。ふっと肩の力が抜けた。長男に励まされた気がした。



6月後半の今の時期。プレ幼稚園で七夕飾りと短冊を書いた。織姫と彦星の顔をクレヨンで書いたり服にシールを貼ったりした。

「大人になったら何になりたい?」

短冊に書く願い事を聞いてみる。すると長男は

「おかあさん!」と言った。

私は想像の斜め上をいくその言葉がうまく飲み込めなかった。てっきり電車の運転手さんとか消防車に乗りたいとか言うものだと思っていた。

「お父さんじゃなくて?」

そうたずねると

「おかあさん!!」

長男は私を指さして言った。

まだ字が書けなかったので短冊は私が代理で書いた。「おかあさんになりたい」と。


家に帰ってから義母にその話をしたらこう言ってくれた。

「そっか、それだけお母さんに対して憧れを持ってくれてたんやな。良かったな。それは宝物やで。」

長男がおかあさんになりたいと言ってくれたこと。それは私をふんわりと丸ごと包みこんでくれた。良い所も悪い所もまとめて「お母さんはそれでいいよ」と肯定してくれた気がした。

結局私は長男に励まされてばかりいる。

とにかく楽しく過ごそう。子供達が大人になるのは楽しそうだと思えるように。その日そう強く思った。

そしてガチガチに凝り固まっていた頭がほぐれていった。

母親らしくなんて思わなくてもいい。肩の力が抜けて、やっと私にもママさんの友達ができるようになった。



現在7歳の長男に今日その話をしてみた。

「何書いたか覚えとる?」と聞いたら「覚えてない!」そうだ。

「おかあさんになりたいって書いたんやで」と教えたら爆笑していた。

「なれるわけないやん!!」やって。

いいよいいよ、私はしっかり覚えている。宝物のような記憶だから。

あと6年もしたらかわいい長男もくそばばあと言ったりするのだろうか。

そんな日が訪れたら「成長の証やなあ」と笑いとばせるくらい心身共に健康でいたいものだ。


さぁ今年の七夕の短冊には何を書こうか。

3歳の頃のあの短冊は今も大切に引き出しの奥にしまってある。

反抗期にくそばばあと言われたら、どや顔で見せてやろうじゃないか。


かわいいかわいい長男へ。

あの時はありがとう、嬉しかったよ。












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