愛すべき人生と山内マリコ
最後の一行まで読み終えた時、久々に頭の中がぶるぶる震えた。
それが早朝だったから出勤時の車中でもひきずっていて、気を抜いたら泣きそうになって、何事もなく到着できてよかった。
あー人生だなーと思った。
以前から気になってたこの小説は山内さんの小説の中でも新しいもので、図書館に普通に並んでたから思わず「あっ」と小さく声が出てしまった。
これは田舎の図書館の良いところ。
この小説の主人公は1990年10歳の少女から5年おきに2020年40歳までの8人の女性。
登場人物がリレー形式で繋がる短編集だ。
これは女の友情をえがいた小説。
女とか男とか言うこと自体が時代の流れに逆らっているのかもしれないけれど、やっぱり女は時々めんどくさい。
女同士の友情は時に重くてズルくて、でも二人でいれば怖いものは何もないと思えるくらいの万能感を持てたり、自分のことを誰よりも理解してくれるのは家族でも異性でもなく親友だと信じられたりする。
たしかにそれぞれの時代、私にも友人がいたし、不器用ながらも支えたり支えられたりしながら過ごしてきたなあと思う。
小学校時代のエピソードを読んだだけでもそんなことあったなと、懐かしい以上の少し胸が締め付けられるような感覚があった。
少しずつ少しずつ、友人との距離感をはかりながら、時に近づきすぎたり、大人になってからは仲良くなりたくても一歩が踏み出せなかったり。
その時その時で、まさに体当たりで学んできたのだと思う。
ひとつひとつの物語は決して綺麗な清々しい話ではない。
ざらざらとした感触がある。
なのに全て読み終えた時に、大げさではなく自分を抱きしめたくなる。
きっと多かれ少なかれ経験しているであろう女性のめんどくさくて愛おしいエピソード。
よくがんばってきたねーと自分の頭を撫でまわしたくなるのだ。
そして友人、また今は離れてしまったかつての友人だった女の子たちとの思い出をひとつひとつ思い出したくなる。
きっとそれぞれの時期、少しずつ成長していった私たちは、それぞれの時期の友人に支えられていて。
そして今現在の私たちがいるのだなあと。
最終章の詳細はネタバレになってしまうので書かないけど、女性は確実にたくましくなっていく。
それを人生だなあと感じました。
ちなみに山内さんの小説では「ここは退屈迎えにきて」もめっちゃ好きです。
地方在住あるある目白押しです。
これも人生感じます。
こちらは映画化もされてて、主人公は成田陵さんでイメージにぴったりなので観てみたいです。
秋の夜長に山内さんの小説、ぜひ読んでみてください!
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