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文字で読む芝居 「チョコレートコスモス」

今まで色々な本を読んできた中で、1ページ当たり、もっとも最速で読み終えた本だと思います。そのくらい夢中になりました。

恩田陸「チョコレートコスモス」

角川に書いてあるシノプシス、そのまま。それ以外、何の情報もいりません。むしろ何の前情報もなく、読んだ方が良い作品ともいえる。

無名劇団に現れた一人の少女。天性の勘で役を演じる飛鳥の才能は周囲を圧倒する。いっぽう若き女優響子は、とある舞台への出演を切望していた。開催された奇妙なオーディション、二つの才能がぶつかりあう!

私が今まで見た中で、最も素晴らしい芝居の一つは「たけくらべ」。しかも、「ガラスの仮面」に書かれていたもの。はい、漫画です。読んだことのある方は、きっと同意して下さるに違いない。作者の描写が非常に繊細で、簡潔で、数コマなのに、演者の動きや違いが手に取るように伝わってくるのです。この「チョコレートコスモス」も同じ。文中、芝居の描写が続くのですが、絵もない状態で文字で表現されているだけなのに、ビジュアルがガシンガシン飛び込んでくる。特に無名の天才女優である「飛鳥」の演技力は、驚くほどに見えてくる。そのくらい恩田陸先生の文字に「力」が込められております。これが臨場感なのでしょうか。日本語が恩田先生の味方をしたとでも言えるくらい。一気に読んで、心地よい疲労と、天才たちを見届けた達成感を、是非感じて頂きたい。

芝居が好きかどうかは関係なく、本が好きなら読むべし。文字が踊ります。願わくば、こういう本は、絶対に映像化されないで頂きたい。永遠に。

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