英国人気質

知的英国人の面倒臭さは
知れば知るほど面白くなる。
皮肉と風刺と批判に
満ち溢れた話ぶりだけに
額面通りに受け取ったら
大変なことになる。

「夕食においでよ」と言われ、
のこのこ行ってしまったら、
出迎えの慇懃なる笑顔の裏側は
「馬鹿かお前は!」である。
社交辞令だってことが
わからなかったのかなのだ。

「言ってることわかるよ」は
「何言ってるかわからない」だし、
「なかなかいいいね」は
「いいとは言えない、いまいち」、
「まあ、考えておくよ」は
「すぐに忘れるよ」が本音である。

さらに「俺って全然ダメだ」と
言ったときには謙遜していて、
心の中は「俺って凄いだろう」。
自虐することに快感があり、
こちらとしては相手のことを
褒めて上げなければならない。

要は褒められても
決して嬉しがってはいけない。
逆に貶されたら
褒めているかも知れないのだ。
腹の中が違うのだから
まったくややこしい。

しかしどの言葉においても、
しっかりと相手を観察して
心の内を見抜くことが大事だ。
相手は自分を知的な人間かどうか、
会話の中で試しているのである。
知的ゲームと言ってもいい。

心の内は何か、本音は何か。
疑いながら話すのは大変だけど
その大変が面白くなってくる。
「That’s not bad 悪くないね」は
「That’s good いいね」なのだから。
世界に誇る天の邪鬼なのである。