「ミッドナイト・イン・パリ」

婚約者の両親に連れられ、
パリに行ったアメリカ青年。
脚本家だが小説が書きたい。
婚約者は可愛いが、
自分とはどこか食い違う。
パリに住めば上手く書けそう。
でも彼女はアメリカに住むつもり。

そんなパリのある晩、
青年ギルは古い車に乗せられる。
到着したパーティーには
フィッツジェラルドや
ヘミングウェイがいた。
ピカソが描いている絵は
彼の妖艶な恋人だった。

古い車はタイムマシンだった。
青年はピカソの彼女に惹かれ、
彼女もまた彼に惹かれていく。
パリの深夜ならありそうなこと。
やがて舞台はベルエポック時代に。
「美しい時代」にはロートレックや
ゴーギャン、ドガがいたのだ。

ベルエポックに憧れていた彼女は
青年と別れてその時代に残る。
真実から目を逸らしてはいけない。
自分の小説の欠点を知り、
青年は婚約者と別れる決意を固め、
パリに住むことにするのだ。
そこには新しい恋がすでに芽生えていた。

ウディ・アレンの名作と呼ばれる
「ミッドナイト・イン・パリ」。
素晴らしきパリに舞い戻ってしまうという
ファンタジーがアレンの毒を消す。
鋭くえぐるアイロニーが姿を消し、
ほんのり甘く切ない物語だけが残る。
見ている間も、見終えた後も、
心地よい余韻が辺り一面に漂っているのだ。